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中身はナニワの男子ですけど、婚約破棄されたので北国の氷を全部「金」に変えてやりますわ! 〜絶世の美女、商売魂で極寒の地を制す〜  作者: 星島新吾
アイス・イン・ワンダーランド後編

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夜の交渉人───麦酒を冷やしてみてはいかがでしょうか

 別荘に戻ってきた私は食事と入浴を済ませて部屋に戻った。

 私はベッドに横になって、明日どうするかを考える。


 今日中に氷をある程度運び込めたとしても、流石にまた昨日みたいに雪室を満たした状態で始めることは難しいことは明白。


 アイスクリームに原点回帰とか、一瞬考えたけど。

 それ作るにも氷が必要やから、それはやはり難しい。


 となると考えられるのは、やはり飲み物とか野菜を凍らせて販売するとかになってくる。


「ちょっと勿体ないけど、かき氷を売れる日をパターンAとして、飲み物と凍った野菜だけを売るパターンBの日を作るって言うのは、どうやろう」


 そうしたら消費する氷の量を押さえつつ、全く収益が出せへんなんてこともない。目新しさもさほどないから、かき氷ほど客が殺到するなんてことにもならんやろう。

 そうしたら少ないスタッフで正常に回せるかもしれん。


「ミヤハ、今から飲み物買いにマリーン・ヴェイル中走ってくれる?」


「悪魔ですか?」


 ミヤハの声は若干震えている。夜の風を感じながらのお散歩とか、案外楽しそうやと思うけど。さすがに酷いか。


「朝市で走ったら午前の開始に間に合うかな?」


「私が買いに行くのは決定事項なんですね」


 若干諦めの表情を浮かべるミヤハ。

 それが嫌なら別荘の中にある飲み物全部掻き集めてみるか。


「……というか、フロスト達に冷えた飲み物持って行こう」


「今から……ですか?」


 時刻は現在夜の八時半。私のような良い子は基本的に寝る時間や。


「フロストが指揮とってんのに、何にも差し入れせんのはちょっと、婚約者として薄情すぎんか? あと、人気やった飲み物明日の朝買い漁って、冷やして売ろう」


「主に後半部分が目的なんですね?」


「いやいや。両方大事なことですやん。さぁ、寝間着に着替えるのはちょっと早かったな。もう一回ドレスに着替えて、夜の散歩にレッツ、ゴー」


「着替えさせるの私ですけどね」


 ミヤハの溜息は続く。


 ◇◇◇

 別荘にあった酒やジュースをまとめて持っていくために、私は別荘で少し発明をすると、それに酒とジュースをいれて持ちだした。


 夜の外出ということで、私の周囲にはフロスト私兵団のみなさんがガッチリ護衛につくという、万全の警備体制で、ゆっくりと私を乗せた馬車は浜辺についた。


 時間にして十分ちょい。


 二十一時に差し掛かろうかという夜の時間だからか、大通りに人の姿はほとんどなく、酒場に人が集まるような大人の時間帯やった。


「ちょっとワクワクすんな。私、この時間まで起きてたことあんまないわ」


「サーシャ様は普段ならこの時間とっくに眠っていますからね。つい最近だと、酒場を梯子された時以来じゃないですか?」


「寿司屋に行ったあとな。……あれ全然記憶に残ってへんわ。あれ以来外で一滴も酒飲んでへん気がする」


「ビビりですね」


「ぬかせ、弁えてるってことや。これでも酒瓶の一本ぐらいは余裕で飲めるわ。ただ近くにおるやつらがウォッカとかテキーラとかをストレートで飲む奴らばかりやから、私が下戸に見えるだけで。絶対私より飲めへんやつの方が多いから」


「そう言えば、そのお酒やジュースが入ってる箱、見たことがありませんね?」


「おぉ、流石ミヤハお目が高い。これはクーラーボックスやで。木箱の中に毛皮巻いて、四角いカンカン入れただけやけどな」


 私たちは年から年中お茶ばっかり飲んでるから、自然と別荘にも葉っぱの缶が溜まってる。それをちょっと大きな木箱に敷き詰めて、その缶の中に氷と一緒に飲み物をいれておけば完成や。


 あとは私のタンスの中で眠ってる最高級のテンの毛皮で冷気が逃げんように、包んでおけば、十分ぐらいなら冷えたまま飲み物を運べるやろう。知らんけど。


「サーシャ様、これ濡れたまま放置していたら、テンの毛皮がダメになってしまいますよ?」


「駄目になったらまた買えばええ。それより、冷たいまんま運べるかどうかの方が重要や」


 テンの毛皮は温かいから、保冷機能もありそうやと信じてるんやけど、これで実際どのぐらい持つかはまだわからん。


「せやからちょっと急いで向かうで」


 浜辺に着くと、すぐさま砂浜をダッシュする私たち。傍から見れば、大男たちに女性二人が追いかけられている図に見えなくもない。


 そんなちょっと危険な絵面になりながら、中央の階段から駅に向かって砂浜を走っていく。途中に私を狙っていると噂のビック・ブラックの店を通り過ぎる。ここも初日から繁盛していたみたいで、店には人だかりができとった。


 私たちと違うのは、徹底的なブランド化に成功させてる点やろうか。

 店内には上流階級専用の席が用意されとって、そこに座る彼らには、下々が炎天下で列に並ぶさまを見ながら優雅に食事を取ることができるという、特権が与えられてるらしい。


 全くもって品性を疑うシステムやけど、そういう欲を満たしたい人間は多い。それにビック・ブラックは今回のやり方が初めてやないんやろう。店の回し方に素人臭さがまるでない。うちとは違って、すごい安定してずっと回っているようにみえる。


 おそらく他の店舗でやってきたことを、このスプリングフェスに転用したんやろう。


 徹底的な景観美とブランド化によって、客の数は少なくともそこから多く金をとるというやり方。自分の商売に自信がないとできん方法や。


「せやのに、私を暗殺する気もあるって……抜け目ないヤツやでほんま。一回どんな顔か見てみたいもんやわ」


 私はそう呟きを残しつつ、横を歩いて通り過ぎる。その次に見えてくるのは、ビック・ブラックの城ともいえる出店の陰にコッソリ隠れた私たちの店や。


 夜はただの廃屋みたいやけど、朝になったらのぼりが立って、パラソルとか立ち始めると、たちまちお店のようになる。ビック・ブラックもまさか、炭になった店で商売されるとは思わんかったやろうな。


「ええ気味や。ケケケッ」


 今はようがないからココも通り過ぎる。そして海岸に向けて歩みを進めていくと、私の店の隣、ルカのお店はまだ灯りがともっているのが見えた。スタッフもまだ大勢残っているところをみるに、作戦会議中みたいやな。邪魔せんとこう。


「ルカさんやっぱり手を組むぐらいしか手はない」


 そんな声が彼らのテントから聞こえてくる。|『スプリング・ブルワリー』《ルカのチーム》はどこかと同盟を結ぶつもりらしいな。確かにビールやから肉とか、そういう食べ物系を出してる店と連携組むのは強いやろう。


 各々自分達なりのやり方を見つけながら、どうやったら沢山儲けられるか本気で練ってるみたいや。


 コレは長期戦を見据えた計画を練らんとな……。

 そんなことを考えていた矢先。


「あっ、あれは⁉」


 大きな声が砂浜に響く。声の主を見ると、|『スプリング・ブルワリー』《ルカのチーム》からこっちを見ているルカと目があった。


 彼は私を見るや、ダッシュで近づいてきた。何か猛烈に嫌な気配がしてくる。


「サーシャさん!折り入ってお願いがあります!」


「ワー……なんや、……なんや言ってみ?」


「ウチと同盟を組んでください!」


「おぉっふ……なるほどそう来たか」


「お願いします!」


 ルカはめちゃ簡単に土下座してきた。

 使い慣れてそうな完璧な姿勢の土下座に、思わず私も引いてしまう。


 彼に手を貸すメリットは本当に皆無や。むしろ商売敵としては、隣から消えてくれる方が嬉しい。


 ……せやけど。彼にはロックを助けてもらった恩があった。


 初対面の時に『爆乳のお姉さんが来ましたー!』とか言って店の奥に隠れたこと、未だに私は忘れてないけど、ロックを助けてくれたその功績は私も認めてる。彼が助けてくれんかったら、ロックもどうなってたかわからんからな。


「……あんた、うちの従業員助けてくれたから。その分だけなら助けるわ。具体的にどうしたいとかあるん?」


 すごい考えてたみたいやし、私に声をかけて来たってことは名案でもあるんやろう。


「うちでもかき氷を売らせてください!」


「戯けが。出直してこい馬鹿タレ」


 そんなことできるわけがないやろう。何考えてんねんこいつは。

 自分の店の誇りはどうしたんや、誇りは。

 ───せっかく本格的な麦酒が楽しめるお店やのに、かき氷なんて売ったらアイデンティティ崩壊まっしぐらやろ。


「じゃあどうすればいいんですか!!」


 そんなの知ったことか、でぶっ飛ばしてやってもよかったんやけど。

 それはいくら何でもちょっと可哀想すぎる。

 ……相談に乗ってしまった以上、私が持ってる知識を有効活用させようか。


麦酒(ビール)を冷やして飲んでみたらどうや?」


「ビールは熱いものでしょ?」


「まあまあ……ものは試しに。合うか分からんけど」


 ジョッキとビール、両方クーラーボックスの中で冷やしたってから、それを注いでルカに渡した。


「グ……グアァアアアアアア!」


 飲んだ瞬間、敵の断末魔みたいな声をあげて、顔をしかめるルカ。毒でも盛られたのかと、警戒するルカの部下たち。しかし彼は大きく息を吸った後、顔を顰めたまま「なるほど。売れるわけだ」といって私に握手を求めてきた。


 相手にするのが面倒くさいから、その手を握ることはせんかったけど、気に入ってくれたのは間違いないみたいで、すぐにコレでいこうという流れになった。


 チームのメンバーもルカのジョッキを回し飲みして、全員顔をギュッと眉間に寄せて、

「カァー!」って言ってる。これでまた一店舗、ウチの氷に魅了された奴らが増えたな。


「うちの氷は高いでぇ~」


「僕は氷も欲しいですけど、そっちの箱の方が欲しいです。作り方を教えて下さいませんか⁉」


 ルカは目を輝かせて、クーラーボックスに眼をつけよった。

 確かにこれがあれば少ない氷で、沢山のビールを冷やせるやろう。

 なるほど目先の氷やなくて、こっちを欲しがるとは。

 抜け目のないやつや。


「アホ抜かせ。こっちはギルドの最重要機密事項や。知りたかったら、ウチの傘下にでも入るんやな」


「えぇ!いいんですか。僕ら入りますよ、全然!靴とか全然舐めるんで!」


「やめろやめろ、アンタ一応は前年度覇者の弟子やろ。そんな秒速で白旗上げんなや」


「白旗なんてあげませんよ。でも入ったら教えてくれるんでしょ⁉」


 ……コイツちょっと、いやだいぶ変なやつやな。……どうしよう。







高評価・ブックマークが執筆の燃料になります。

ブックマークして、次のお話も読んで下さい(強欲)!

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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