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中身はナニワの男子ですけど、婚約破棄されたので北国の氷を全部「金」に変えてやりますわ! 〜絶世の美女、商売魂で極寒の地を制す〜  作者: 星島新吾
3章アールヴヘイム編

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ナニワの令嬢は馬車でお話するようです。

「公爵辞めたって……そんな趣味やないんやから」


その血の運命的なもので、家柄は個人ではどうすることもできへん。私が一般人と結婚出来へんのと同じように、彼も家というものから逃げられへんはず。一体どんな裏技使ったんや……? ていうか、臣従って。王族が臣従する相手なんてそりゃあもう……。


公爵(デューク)から即位(アセンション)して、皇帝(エンペラー)を名乗ることになったんだ。あまり嬉しくない報告だと思うけど、受け入れて欲しい」


ってことか。ふーむ……。皇帝ね。……皇帝、皇帝か……。なんややろう、私の頭が全く追いついてないのは分かる。


「へぇー……てことは、もう一緒にどっか遠方で商売するとかも、難しくなりそうやなぁ……」


「他人事みたいに言ってるけど。サーシャも皇后になるんだぞ。残念だけど、しばらくは今やってる事業は他の人に頼むしかない」


情報が濁流のように押し寄せ、パンク寸前の脳内からそれらが、耳や目を通じて外へ溢れ出していくような気分。皇帝? 皇后? 商売できへんってどういうこと? ていうか、私もまだまだ訊きたいことが沢山あるのに、世界が先に進み過ぎてる……!


「かっ……勝手過ぎるやろ。い、今からでも返上という形は……」


頭を抱える私に、フロストは諦念の貌を浮かべて、首を振った。彼の表情をみただけで、この状況に至るまでに数多くの問題を処理してきたんやと、何となく分かった。


「エルフが独立運動を始めなかったら、こんな話もなかったんだろうけどね……。彼らが起こした奮起は、知らずに世界情勢を揺るがす大事件になってしまった」


フロストはそう話ながら、馬車に備え付けられた小型の保冷櫃を開いて、中から白ワインを取り出す。飲まずにはいられないってこと?


……とりあえず、冷えたワイングラスを渡されて、指先がチリチリする中、お酒を注いでもらった。


「じゃあ、再会を祝して。乾杯」


「か……かんぱーい?」


フロストに合わせて、グラスを合わせる。チンッって可愛い音が鳴った。ワインを口にすると、透き通ったフルーティーな甘みと酸味が喉を通過する。ボトルに視線をやると、確かヴァナヘイムの高級銘柄やった。


「ゲッ、これメッチャ高いヤツやん。───じゃなくて……大事件ってどういうことやねん」


クッソー……値段が気になるぅ……! でも、それより現状把握を急がへんと……!


「もらい物だからタダだぞ? 」


私の思考を盗聴したのか、フロストの言葉は、脳内算盤を弾いていた私の頭にスゥーと溶けた。もらい物……なんと甘美な響きか。今は只美酒に酔いしれろと言うんか? 私にそんな堕落を享受せよと? 

ウッ……フロストめ、罪な男や。


「タダか……ほな、……もう一杯」


苦笑するフロストにワインを傾けて、また注いでもらう。タダと訊いたら、美味さが倍以上になった気がする。


「フフッ……」


口を抑えて微笑っているフロストを見て、私はワインから口を離してムッと、口を尖らせた。


「なんや、貧乏性やと思ってるんか?」


「それは元々だろ。……変わってないと思っただけだよ」


そんな数ヵ月程度で、人格まで変わってたまるか。あと変わってたとしたら、絶対に影武者を疑って欲しい。絶対おかしいから。


「ていうかワインでなんか和んでしまったけどさ、世界情勢とか今は後でええねん。私が知りたいのはエルフの連中が今後もお咎めなしで、いられるかってこと!」


手に持ったワインが波立つのを抑えながら、私はフロストに質した。彼らが死んだら寝覚め悪いってのもあるけど、一番は彼らが作ろうとしてる船や。ようやく木材を確保して、これから造船開始!……ってところで、お迎えが来てしまったから、心血注いだ船──出来上がる『我が子』をこの目で見届けられへんのが、ほんまに心残りやった。


戦後処理とかでうやむやにされたら、私は大損や。なんとしてでも、船は作ってもらわんとアカン。


「だいじょうぶ。彼らもお咎めなしだよ。首謀者のヴィーダル君もね。むしろ、彼の刑を軽くするために、俺が皇帝になったんだ。彼はここで死ぬには惜しいエルフだからね」


「ど、どういうこと……?」


食い入るように説明を求めたら、フロストは面倒臭そうに、え~、と白ワインを口にする。今さら喋るのが嫌になったんか、黙ってしまった。


「いじわるせんと、教えてーな」


「ん~……じゃあ、掻い摘んで。すこしでいいなら話すよ」


「うんうん。少しだけな」


私はそう言って、彼のグラスに新しい白ワインを注いだ。

一部始終訊きたいところやけど、その説明をフロストに求めたら本気で何も喋らなさそうやったから、今は彼が話したい分だけ話してもらうことにした。


「どこから話したものかな───。キャスパリーグ王がエルフを滅ぼすつもりだったのは知ってる?」


「いや初耳やな。そんな激怒してたん?」


「ああ。俺の前では終始笑顔だったけど。あれは村の一つも残さないって顔だったな……。──エルフの文化を破壊することが、彼の目的だったんだろう」


「文化の破壊って……森との暮らしは、絶対ダメ、みたいな?」


「ああ。エルフを労働力としてまた使うために、彼らの思考の根本から、変えようって魂胆だったらしい。それを防いだのが、アリステア──サーシャのお兄さんだった。彼がミズガルズまで来て、俺に提案を持ち掛けてきたんだよ」


「……兄さんがミズガルズに? それに提案っていったい……」 


「ああ。『国を三つほど買いませんか』って言ってきたんだ。……国を売りに来た商人は初めてでね。売り文句が面白かったから、つい話を聴いてやることにしたんだ」


そうしてフロストは、ミズガルズで起きた取引の全貌を語ってくれた。






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ブックマークして、次のお話も読んで下さい(強欲)!

それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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