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中身はナニワの男子ですけど、婚約破棄されたので北国の氷を全部「金」に変えてやりますわ! 〜絶世の美女、商売魂で極寒の地を制す〜  作者: 星島新吾
3章アールヴヘイム編

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ヴィーダルの気遣い───彼は身内認定に渋い顔をするようです。

「(改めまして、ようこそ、姉様。私たちの『聖戦』へ)」


そう言って、彼は僅かに頭を垂れた。忠犬だった頃と何ら変わらぬその仕草だけが、彼の中に残る「私への礼」のように見えた。聞き慣れたはずの、でも以前の「忠犬」のような甘さの一切消えた声。見上げれば、そこには軍服を完璧に着こなし、背筋を真っ直ぐに伸ばしたヴィーダルが立っとった。


「(ヴィーダル……あんた、本気でヴァナヘイム相手に独立戦争なんてやるつもりか?)」


私が喉を鳴らして問うと、ヴィーダルは誇らしげに周囲の森を指し示した。


「(本来であれば、戦争は攻めたり攻められたりが基本だと思いますが、我々の戦いは違います。立ち上がったその時から既に戦いは始まっているのです)」


「(……ん、どういうこと?)」


戦ってるぞー!って気分やったら、それはもう戦争ってこと? おぉ、凄い甘っちょろい戯言に聞こえるでござる。ホンマに大丈夫か?


「(こちらをご覧ください)」


彼は懐から一枚の紙を取り出すと、指先で丁寧に皺を伸ばした。どうやら、この一帯を正確に示した地図らしい。標高までしっかり書き記されていることもみるに、これが前々から準備されていたものやと分かった。


「(地の利を生かしてゲリラ戦を仕掛けるって寸法か。それなら確かに少ない数でどうにかなるか)」


「(はい、それに森は暗く迷路のようになっているものばかり。霧も利用すれば、ヴァナヘイムの兵とて恐るるに非ずというわけです。それに今回の戦い、我々はただ自分たちの領地を守るだけでいい。森の中に入ってきた敵を倒すだけで、それは国家の防衛になるのです)」


そういって地図に点を打っていくヴィーダル。整備されていない森を登るのは、たとえ獣人の脚力であっても体力が消耗する。そこに狙いを定め、矢の雨を降らせるつもりらしい。そこで相手が諦めるまで、森の中でひたすら自給自足をしながら防衛し続ける。

それがヴィーダルの主張する戦いの正体やった。


「(……いや、私に作戦説明してどないすんねん)」


ヴィーダルは僅かに眉尻を下げ、いつもの困ったような笑みを覗かせる。


「(姉様には不安になって欲しくありません。これを聞いて少しは安心できたかと)」


装いや立場が変わっても、こういう気配りは相変わらず変わってへんらしい。ぬるいというか、甘いというか。こんな優しいヤツがテロリストなんて、誰が予想できるっちゅーねん。


「(別になんも不安やないで。ヴィーダルが頑張ってるの見て、頑張れ~って。……それぐらい)」


「(……姉様、もしやあまり緊張なされてない?)」


不思議そうに訊いてくるヴィーダル。私は彼が何を言っているのか、よう分からん。


「(……なんでアンタが指揮する部隊におって緊張せなアカンねん。私のこと大事にするんやろ?)」


「(……ええ、それはもちろん)」


それなら私は、どっちが戦いに勝っても身の安全は確保されてる。流れ弾で死なんようにするだけでええってことや。だったら緊張したり不安になったりする方が間違ってるやろう。


理由もなく怖がるのは、オバケが怖いっていうとる人と一緒や。私はそんな恐怖よりも、三食しっかり食べれずに、体型維持できへん可能性の方が怖かった。


「(私のこと、ちゃんと大事にしいや。食料もちゃんとあるんやろうな? 着替えは? 部屋は涼しい? アンタ、私を傍に置くならそれぐらい金かかるって分かってる?)」


私は冷風大鞴なんかよりも遥かに高い価値があるし、維持コストやって馬鹿にならん。彼らにそれが工面できるかかなり心配やった。


ヴィーダルは装着した指ぬきグローブを、無意識のように軽く握り直した。


「(エルフは自給自足できるので、食料は気にせずとも問題ないかと。肉なども、内陸のエルフは食べませんが、我々海辺のエルフは肉も魚も交易で入手する方法があるので。言ってもらえれば、用意します。部屋も問題なく涼しいかと。服は……こちらの服を着ていただくことになるかと思います。それだけはお許し下さい)」


おぉ……なんというホスピタリティ。人質という形ではあるけど、私はここにいる以上働かなくとも、生活できるらしい。それはなんというか……アリや。


「(仕事が遅れてまうなー……困ったナ~……)」


「(姉様……もしやこの状況、少し楽しんでいらっしゃいませんか?)」


「(いいや? ちょっと、最初は怒ってたけど。よくよく考えたら、囚われの姫みたいでテンション上がるなーって。私を捕まえたの、私の身内やし)」


「(身内……ですか)」


「(ヴィーダルなんか、もはや身内みたいなもんやろ。なんや、今さら他人面する気か?)」


ヴィーダルは一瞬だけ言葉に詰まり、それを誤魔化すように背筋を正した。頭目の貌へと、素早く仮面を被り直したように見える。ホンマ、馬鹿真面目やわ。


「(いえ……なんでもありません。部屋を案内してもらって下さい。ミヤハさんも、仕込んだ武器を押収次第、同じ部屋にお通しするので)」


「(あそう? ほなら仲間と一緒に独立運動頑張ってなー。あんま怪我したらアカンで)」


そういって、私は用意された部屋に連行された。








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それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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