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中身はナニワの男子ですけど、婚約破棄されたので北国の氷を全部「金」に変えてやりますわ! 〜絶世の美女、商売魂で極寒の地を制す〜  作者: 星島新吾
Around the World in Ice 編

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エルフの村は課役に苦しむ───ナニワの令嬢はエルフの熱中症対策に関心を示したようです。

シーリングファンがゆったりと回り、冷気をかき混ぜる音が室内に満ちている。私の前ではエメラルドグリーンの髪のエルフが、フラッペを口に運ぶたびに憑き物が落ちたような安堵の表情を見せていた。


窓の外では、マリーン・ヴェイルの街並みが陽炎に歪んでいる。一歩外に出れば、肺を焼くような熱風が吹き荒れているというのに、この一室だけはヨトゥンヘイムの冬を切り取ってきたような静寂があった。


「(……生き返るようだ。森の精霊に感謝だな)」


感動のあまり震える声で呟くエルフ。そんな彼を見据えたまま、私はソファに腰を掛け、話の続きを催促した。


「(んで? その困りごとっちゅーのは、どういうもんなんや?)」


「(……我々エルフに王が要求されたのは、造船用の木材だ。王は最大限の配慮をすると仰った。だが、森から国道へ木を運ぶのは、我々エルフにしかできぬ役目なのだ)」


門番エルフの言葉に疑問を持った私はヴィーダルをチラリと見た。


「我々エルフにしかできへんってどういうこと?」


門番エルフに分からんように人間の言葉でヴィーダルに訊いた。


「いえ姉様、その者の言っていることは、私の知る事実とは少々異なるようです。彼らはプライドが邪魔をして、自分達の支配地域に身内以外の立ち入りを極力避けるようにする癖があるんです。内陸のエルフにしかできないというのは、彼の誇張表現かと」


意地っ張りなんです、とヴィーダルは答えた。


「木を運ぶ労働であっても、誰かの力を借りたくないってことかいな? ……面倒な種族やなぁ、エルフ」


「ご心配なく。ここまで高慢なのは内陸のエルフだけですので」


一緒にするな、と海辺のエルフ代表のヴィーダルは言う。

どっちも似たようなもんやろ、なんて思いながら、私は冷えたフラッペのグラスをテーブルに置いた。


「(それで? もしかしてキャスパリーグ王がもっと木を切れとか言ってきた?)」


「(いや。そうではない)」


そうじゃないらしい。


「(キャスパリーグ王は無理な伐採はしないよう、最大限の配慮をなさってくれている。しかし、木を切り倒し運ぶのもまたエルフの務めになっているのが、大きな問題なのだ)」


木を切ることやのうて、運ぶことが問題ってことか。要は、運搬に困っとるんやな。


「あぁ……確かに、森で重い木を運ぶのは大変やろうな。機械とかもないやろうし」


丸々一本、木をロープに括りつけて運ぶんやろう。勝手に木を分割して持ってきました、じゃ許されへんやろうし。それなら熱中症になるエルフがでるのも頷ける。


「村の中で運ぶだけならまだしも、我々エルフが森から国道の荷馬車まで運ぶとなると重労働だ。その上、森は外側に行けば行くほど太陽の光も強くなる。ゆえに……我々は太陽を克服することに決めたのだ」


門番エルフが話してくれたのは、色んな熱中症対策。タオルを頭に巻いたり、背中につける用の日傘を開発したり、とにかく太陽が体に当たらんように創意工夫を凝らしたらしい。実際にそれが効いたのか、熱中症になるエルフは減ったとのこと。


「凄いやん。内陸のエルフもついに太陽を克服したんか」


「……太陽の呪いはそんなに簡単なものではなかった。我々がいくら太陽から身を隠したとしても、太陽の呪いは遂に夜にまで私たちを蝕むようになったのだ」


「どういうことや?」


「森の中にはいくつか中継地点となるプレハブ小屋がある。我々はそこで宿泊をしながら、数日に分けて森から国道沿いへ木を運ぶ。そのプレハブ小屋の中で、太陽の呪いが我々に降りかかったのだ。プレハブ小屋で寝泊まりしていた多くの同胞が……今も太陽の呪いに苦しめられている」


夜間の熱中症か……ここら辺は湿度も高いし、暑いし、脱水に気づかずに寝てて、そのままバッタリいった感じやろうな。なんか容易に想像できるわ。



「それにそれだけ大変な思いをして木を運んだとしても、その負担を負うのは我々だ。金が入ってくるわけでもない」


「公的な労働───『課役(かえき)』っちゅーわけか。義務ならやるしかないな」


「だがこのままでは、倒れた者の中から死人がでるのは必定。どうにかせねばならんと考えていた時に、国道で木を引き渡す際、獣人から冷風大鞴の話を耳にした者がいたのだ」


男は語気を強めて——


「村の冷たい空気をプレハブ小屋まで運ぶことが出来れば、太陽の呪いも遠ざけることが出来る。あの機械さえあれば、エルフの村は救われるのだ!」


そう断言した。 ……随分とまあ、簡単に言うてくれるやないか。





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それではまた、次のお話でお会いしましょう。(´・ω・)ノシ

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