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転生当主は世界最強の一柱  作者: 北猫新夜
ロタナス王国編

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7話 時計塔の少年

 学園が今日から数少ない外出OKを出したから、久しぶりに家に帰った。


 うちの家は主に中央に立つ時計塔の管理。下町に住んでいる人たちはこの時計を見て過ごしているから責任重大。特に、朝と昼と夜を示す鐘の音は貴族様も聞いているから、壊れていて鐘の音が鳴らなかったら即処刑の可能性もある。

 そして、そんな重要な家だからか、うちは裕福で、貴族様のような人たちしか行けない学園に行くことが出来た。

 

 もちろん、この学園は裕福だけじゃ入学できない。神格国であるロタナスの学園、それに見合った学力と才能を持ち合わせていないといけない。

 僕は貴族様のように専属の学業の先生が居るわけではないけど、両親は僕のために家庭教師を雇ってくれた。

 そして、頑張って勉強して学園に入学できた。


 僕たちのような平民はもちろん歩きで帰って来たけど、他の貴族様たちは馬車で帰っていた。

 

 家にはお母さんだけが居て、お父さんは朝早くから時計塔のための予備の材料調達に行ったらしい。

 僕はマグカップに注がれた白湯をゆっくりと飲んだ。学園ではずっと紅茶生活だったから、久しぶりに飲む白湯は心身に染み渡る。

 

 学園に通うようになってから、流石は貴族様が通う学園だなと思うことがたくさんある。

 当たり前のように高価な紅茶の茶葉が置いてあり、誰でも飲んでいいことになっていたり、滅多に手に入らないコーヒーも置いている。ただ、僕たちには苦すぎて飲んでいる人はいない。


 何よりすごいのが、あのディヴァインウォリアーであるカラン・トレイア様が剣術の指南をしてくれるところだろう。

 僕たちは十歳で、入学したばかりだからまずは基礎からだけど、上級生になり基礎と応用、そして教師たちの試験をクリアするとカラン様直々に指南してくれる。

 

 貴族様たちは大喜びだったけど、平民の僕からすれば、カラン・トレイア様は魔王軍との戦いで何千もの魔物を葬った英雄で、ディヴァインウォリアー「神に選ばれし者」という伝説級の人過ぎて、頭がポカーンとなるだけ。

 それに、トレイア家はロタナス建国当初から仕える侯爵の地位を貰っている大貴族でもある。

 

 「学園は楽しい?」


 「うん。僕と同じ平民の子とは仲良くなったし、少し壁はあるけど貴族様たちとも仲良くしてるよ」


 入学当初は、同い年の平民が僕だけだったり、平民差別があるかもしれないと不安だらけだったけど、意外にも平民も十人くらい居て、平民差別もあまりなかった。

 ただ、高位貴族の侯爵家や公爵家の人とは、まだ距離があると思う。


 「そう。よかった。・・・・・・あ、そういえば、時計塔の鐘の状態を見てきてくれない?最近音が鈍いって苦情が入ってるのよ」


 「分かった」


 時計塔は家を出て、すぐ前にある。

 

 僕はマグカップに入った白湯を一気に飲み干し、気合をチャージする。

 そして、棚に入っている時計塔の鍵を取る。


 久しぶりに時計塔の中に入る。前に入ったのは、ちょうど一年位前。


 鍵穴に鍵を入れ、扉を開ける。


 「やっぱり落ち着くなぁ、ここは」


 真っ暗で完全無音の空間。そして、梯子の上から差し込む外の光。

 

 僕は『ライト』を使い、時計塔の中の様子を見る。

 小さな様蜘蛛の糸やほこりがある。まぁ、あそこは鐘の帰りでいいや。


 ということで、僕は梯子を上る。鐘はこの梯子を上ってすぐにある。

 

 ギシッ、ギシッ。

 梯子を上っていくと、そう音が鳴る。これも修理が必要だな。


 『…俺たちおじさんはあの若き戦場で生き残れると思うか?』


 梯子を上っていると、そんな会話が聞こえてきた。


 僕は上るのを止めて、その声を聴く。

 問いかけているということは、最低でも二人。というか、どうやって入って来た?


 ゆっくりと梯子を上り、謎の二人の姿を確認する。


 「ッ!」


 貴族様だ。

 なんでこんなところに!?


 一人は黒の服を身に纏っていて、学園でよく見た執事さんによく似ている。そして、ボサボサ髪は置いといて、豪華な服や、見るからに高そうな靴に目が行くけど、何より目が行ってしまうのは、服の背に縫われている四本の剣。


 ロタナスを象徴するのはやっぱり『剣』


 その武器一つで、このロタナス王国を造り、大国と言われる程までこの世界で成り上がって来た。


 それ故か、貴族の階級が剣の数で決まる。

 剣の数が一本なのは男爵家。

 二本は子爵家。

 三本は伯爵家。

 四本は侯爵家。

 五本は公爵家。


 目の前に居る人は四本の剣を持っている。なら、あの人は侯爵家の人!?


 あ、昨日、侯爵家の人が最近人気のスイーツ店に来たって騒ぎになっていたけど、この人なのかな?なら、悪い人ではないよね・・・・・・多分。


 ここでこの人たちを退くまで待つのは時間の無駄だから、思い切って二人に声を掛けた。


 「あの~、こんなところで何してるんですか?」


 「ッ!君こそ、どうやってここに登ったんだい?」


 振り向いた時の顔を僕は忘れないだろう。

 これまで僕と同い年の貴族様しか見たことなかった。だけど今日、大人の貴族様の顔を見た。


 僕たち平民とは入っている血が根本から違うと言われているかのような整われた顔。

 ボサボサだが、丁寧に手入れされていることが分かる純白の髪。

 何より、その身から溢れ出ている強者特有の覇気。

 学園で、上級生の先生としてたまに来る剣士の憧れの職、王国の精鋭中の精鋭『王国騎士団』の団員の覇気も凄いけど、この人の覇気はその何倍も凄い。


 そんな人が、最初は驚いたような反応をした。この人くらいの強者なら、僕の気配を察知していないわけがない。


 「この時計塔の鐘の状態を確認しに来たんです。久しぶりに家に帰って来たので」


「ほうほう、なるほどなるほど」


 あれ?僕、怪しまれてる?


 「‥‥‥‥あの、どうしてそう怪しげの目で見るんですか?」


 「ほう、分かるのか」


 「いや、そんな目で見られたら全員分かります」なんて言ったら、不敬罪で捕まるかもしれないから、心の中に留めておく。


 すると、僕の体が急に震え出した。


 それは、目の前には居るのが侯爵家の貴族様というのもあるけど、怪しまれているからかその覇気が更に強くなり、僕は怯えていなくても、体が怯えてしまっている。いや、僕自身もめちゃくちゃ怯えている。今にも泣きそうなど。今、僕と話しても声が震えて会話にならない。

 

 そして、二人は僕には聞こえない声で何かを話しだした。

 貴族様の横に居る人は、王国騎士団の団員には及ばないけど実力者なのは確か。

 

 僕は少し後ろに下がろうとした。けど、足がその場から動かない。

 今あるめいいっぱいの力を使っても全然。

 貴族様の覇気はちょっとだけ弱くなっている。それでも、今までの恐怖を体が忘れられずにいる。


 そう思っていると、貴族様が僕に向かって何かしようとするのが分かった。そして、その恐怖で今までの恐怖を打ち破ってよくやく動くことが出来た。


 よしッ、これで……と思っていると、なぜか体が宙に浮いている感覚がした。

 あっ、なるほど。あの恐怖から脱出したから、体が軽くなっているのか・・・・・・ん?急に重くなった。


 足元を見てみると、下は穴だった。そして重力に伴い、僕は下に落ちて行った。


 「たすけてぇ!お父さぁん!お母さぁん!!」


 そう叫んでも来るはずないのに。時計塔の中は防音で、家の中に居るお母さんには届かない。

 僕の声が届くとすれば、それはあの二人。でも、貴族様が僕たちのような平民を助けるわけない。それに僕を助けようとしたら、向こうも怪我をする。・・・・・・だけど、あの人たちは強い。


 強者は常人の何倍も速く、何倍も力があり、何倍も頑丈である。だから、強者と言われる。それは生まれ持った才能もあるし、絶え間ない努力の証でもある。


 あぁ、何度も上ったから分かる。もう地面に近い。

 もし高いところから落ちるなら「足から」と教えられているけど、焦り過ぎて頭から落ちてしまっている。頭から着地したなら、絶対に死ぬ。


 そう思った瞬間「シュッ」という音がすると同時に、誰かに包まれているかのような感覚がした。そして、もう地面にぶつかっているはずなのに、僕は無傷で生きている。


 「大丈夫か、少年」


 その声を聞くと、体に絡まっていた恐怖が一気に解けて、そのまま無意識に抱き着いて、泣き出してしまった。


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