31話 魔物の肉と骨のネックレス
王宮の前では、俺たちが戦った兵士たちが傷の手当てをしていた。
その横を通ると、案の定睨んでいた。
俺はとりあえず一礼だけした。
セレティアは睨まれるのが気に食わなかったからか、もう一度殴りかかろうとしたが何とか抑えた。
階段をおりて、街に出る。
「じゃあ、俺はお土産とか買わないといけないから、夜の宿でまた」
いつでも帰っていいから、帰るまでは家族のためにお土産を買いたい。
この国の観光はもう道中で十分堪能した。
それに、俺とセレティアとじゃ絶対に観光の趣味が合わず、ずっと喧嘩する未来しか見えない。
だから、ここで個人に分かれる方がいい。
「え〜、一緒に観光しようよ」
「…じゃあ、例えばどこに行くんだ?どうせ、冒険者ギルドとか騎士団とかだろ?」
「いや?この国の人たちは何か思ったより強くないから、もうそういうのはいいかなって」
それは確かに…
先程の兵士たちもセレティアと目が合っていたが、セレティアの『遊べる』センサーには反応してなかった。
…王宮の兵士たちがそんなんで大丈夫か?
「…知ってるか?テイマ帝国のどこかに、『魔調帝』が調教に失敗した魔物が潜んでるらしいぞ」
そう言うと、セレティアの目は輝き出した。
「『魔調帝』以外の人が調教失敗した魔物もいると聞いてる。そいつらは強いから普通の調教が効かなかったらしい」
強いという言葉が決め手となったのか、セレティアは走ってどこかに行った。
ふふっ、やっぱり、セレティアはこういう話をすれば簡単に分かれることが出来る。
こうなれば、後は俺だけの自由時間。
まずは、王宮に行く時に気になった店に行く。
「お!イケてる兄ちゃん!いらっしゃい!一人か?」
「…あぁ、一人だ」
店は大きく、中には満席に近い人が居る。
その大人数の人たちが、このおじさんの大きな声で振り返って俺の方を見る。
俺はおじさんにカウンター席に案内してもらった。
それからもずっと、チラチラと俺の方を見てくる人たちがいる。
メニュー表を手に取って見る。
この店は、他の国では絶対にないような「魔物の肉」を使った店。
看板も『魔肉の里』と書いてあり、とても興味深かった。
定番はうさぎの魔物のシチューらしい。確かに、うさぎ肉はまだ抵抗はない。
…ただ、オーク肉のステーキ。これが目に入って、気にならない男は男ではない。
「すみません。オーク肉のステーキ一つ」
「お!流石イケてる兄ちゃん!男だね〜!」
料理しているおばさんにそう返される。
俺は苦笑いで返す。
十分後。
「はい!出来たよ!オーク肉のステーキ!」
ついにオーク肉のステーキが来た。
見た目は本物の肉のような色をしていて、匂いもいい匂い。これが、本当にあの凶暴なオークの肉なのか?
魔物は肉食だから、臭みはあるはずなのに、その臭みが完全に消されている。
仕入先がいいのか、ここの料理人の臭み消しの技術なのかは知らないが、すごい技術だ。
弾力もありながら、ナイフがスッと入る。
俺は口に入れる。
…ッ!。やっぱり、オーク肉だからか食べると匂いはあるかなと思ったが、全然匂いを感じない。。
それに、ペリストア農国のギルドで食べた骨付き肉より美味い。
俺は食べる手を止めずに食べ続けた。
「おばちゃん、美味かった。何で、あのオークの肉があんなに無臭なんだ?」
「あんた、外の人かい?なら、分からないのも無理ないね」
おばちゃんは料理をしながら、俺に説明してくれる。
「ここに出ている魔物の肉は、全部調教に失敗した魔物。昔は自然の魔物を調教してたけど、今は調教した魔物が子供を生んで、その魔物を調教する。だから、肉をあまり食べずに、野菜や他の食べ物で育ってきた。それが、この匂いがしない正体だよ」
俺は無意識に拍手していた。
調教に失敗した魔物をこのように活用するのは、テイマ帝国だからこそ出来ること。
可哀想ではあるが、ただ廃棄するより、こうやって食べてあげる。
これは、テイマ帝国の魔物を害だと思わない性格が作用してるのだろう。
普通の人は、魔物を食べようと思わない。
この拍手は、その食べようとした勇気と、ここまで美味しく料理してくれたおばちゃんへの感謝。
「また来るよ」
「待ってるよ!」
俺は机に代金の金貨一枚を置いて、店を出た。
腹ごしらえも済んだことだし、次は本題もお土産を買いに行く。
店の前にそれっぽい店があるから入る。
向こうの店とは違い、こちらの店は入っても何の声もない。
こういうのもいいが、少し寂しい気持ちになる。
食べ物は魔物の干し肉。魔物の冷凍肉。
アクセサリーは魔物の骨のネックレスや魔物の耳のカチューシャ。
何もかもが、テイマ帝国限定なものばかり。それはいいと思うが、魔物、魔物、魔物、全てが魔物の商品。
どれを買って帰っても、皆が喜ぶ顔が想像できない。
とりあえず、この中からまだマシだと思う魔物の骨のネックレスを買う。
「銀貨二十枚だよ」
銀貨二十枚を払って、すぐに店を出る。
そして、他のもっといい店を探す。
五時間後、夕食を告げるチャイムが鳴った。




