32話 セレティアと夕食
夕食のチャイムが鳴るまで、ずっとお土産探しをしていた。
チャイムを聞いて宿に戻ると、受け付けのおじさんに食事場へ案内された。
部屋へ上がるための階段の奥の扉を開ける。
そこには数人の人と料理があった。
夕食は全員同じもので、ソテーされた肉みたいなものが、全員の机にある。
うっ、この歳になると、昼と夜に続けて肉はしんどくなっている。
ただ、匂いはそそられる。
周りを見渡すと、肉を上品に食べているセレティアがカウンター席に居た。
俺はその横に座った。
「ちょっと、カラン?全然、魔物いないじゃない!私、テイマ帝国中探し回ったけど、魔物どころか、気配すらしなかったんですけど!」
食べていた肉を飲み込んでから、俺の肩を持って揺さぶるように言う。
俺は何言ってんだと思ったが、そういえばそんなこと言ったのなぁと思い出した。
「す、すまん。そう聞いてたんだけど、実際は調教に失敗した魔物は食べ物になっていたらしい」
「えっ……じゃあ、この肉は…」
「ち、違いますよ!そんな店はあそこだけです!うちはちゃんとした肉を使ってます!」
カウンターだから、料理人が近くにいる。
その料理人が必死にそう言って、調理前の新鮮な肉を見してくれる。
まぁ、それを見せられても、調理前の魔物の肉を見たことないから分からないけど。
セレティアは料理人の言葉を聞いて、さらに目を丸くした。
「…魔物の肉を使う店なんてものがあるの?」
「え、えぇ、ありますよ。この宿からそう遠くもないですし、今からでも行ってみたらどうですか?かなり遅くまでやってますし」
「でも、この料理は…」
「賄いで食べますよ」
セレティアは出された肉を少ししか食べていない。これなら、賄いとしても十分食べ応えがあるだろうな。
「じゃあ、そういうことなら」
そう言ってセレティアは席から立った。
俺はセレティアに「行ってらっしゃい」と言った。
「ん?もちろん、カランも来るでしょ?」
「いや、あの後に一人でそこに行ったから、もういいかな」
「えっ…私を騙してそんな所に行ったんだ?」
セレティアに詰められる。
俺はだんだんと扉の方へ後退る。そして、背中が扉に当たった。
「来るわよね?」
「…はい」
「ふふっ、じゃあ、案内よろしくね」
セレティアはランランで出て行った。
俺がため息を吐くと、料理人の人が言った。
「…大変だな。あんな嫁を持つと」
「えぇ……は?」
俺は一瞬で料理人に近寄る。
「俺たちは姉弟だ。二度とそんなこと言うなよ?」
「ッ!あ、あぁ。悪かった」
元からチラチラと見られていたが、このやり取りで周りで食べていた人たちの注目を更に浴びる。
ペリストア農国でもしたようなやり取りをして、俺はセレティアを追うように出て行った。
セレティアは宿の外で俺を待っていた。
もう、外は太陽が沈み、空は暗くなっている。
でも、人通りが多い。流石はディヴァインウォリアーが居る国だ。ヒュパ救王国やペリストア農国とは、国の大きさも人口の多さも全然多い。
俺はセレティアを『魔肉の里』へ連れて行く。
「ねぇ、魔物の肉って美味しかった?」
「美味かったよ。普通の肉よりも」
そして、セレティアに味のことを色々と聴かれる度に、「行ってからのお楽しみ」と答えていると、ようやく着いた。
あの時とは違い、店前で行列が出来ていた。
俺たちは最後尾に並ぶ。それでも、店の中から肉の香ばしい匂いがする。
その香ばしい匂いに浸っていると、列はすぐに進んで一番前になった。
店から家族が出てきて、俺たちが呼ばれた。
「何名ですか?」
あの時、俺を席に案内してくれたおじさんが聴いてくる。
「二人」
「じゃあ…って、昼に来た兄ちゃんじゃねーか!夜は嫁とか?ハハッ、いいな〜そんな綺麗な嫁、俺も欲しかったよ!」
そう言って背中を強く叩かれて、押されるように中に入った。
…ここで騒ぎはダメだが、その不実は改めさせないといけない。
席はカウンター席に案内された。
「何言ってんだい。嫁じゃなくて、姉か妹だろ?」
座ると、料理人のおばちゃんがおじさんにそう言う。
「えっ!?どこか?」
「ほら、目元とかそっくり。それに、二人から似たような雰囲気も感じる」
おじさんとおばちゃんは俺たちを見る。
「…流石、年の功というやつですか?」
俺は笑っておばちゃんに言った。
目元とかは言われたことあるが、雰囲気は初めて言われた。
「まぁね。それより、何頼むんだい?」
俺は机に置いているメニュー表をセレティアと見る。
先程はオーク肉を食べたから、今はあっさりしたものを食べたい。
メニュー表から探して、目に入った料理を注文する。
「ピラクルの刺身を一つ」
ピラクルとは、主に池に住む、歯が鋭くてすばしっこい凶暴な魚の名前。その魚の刺身はとても美味そうだ。
隣のセレティアはまだ悩んでいる様子。
見ているページは人気メニューのページ。
「私は…このオーク肉のステーキで!」
セレティアは俺があの時に頼んだオーク肉のステーキを頼んだらしい。
俺たちの注文を聴くと、おばちゃんは料理にとりかかる。
「やっぱり、オーク肉のステーキ、気になるよな?」
「うん。あの二足豚の肉がどんな味がするのかね」
…俺とは違う理由で、この料理を注文したらしい。
それに、二足豚って…可哀想だ。
先に来たのは、俺のピラクルの刺身。
その五分後に、オーク肉のステーキが来た。
「じゃあ、いただきましょうか!」
セレティアは目を輝かせて、ナイフとフォークを持つ。
「そうだな」
俺は箸持つ。
そして、俺たちは夕食を食べた。




