29話 じゃあ、話そうか
ジム帰り
ラルクラッド・テイマは、セレティアの拳に怯えることなく微笑んでいる。
周りの人たちが必死に止めようとしてる後ろで、王座で脚を組み、右手を前に出す。
「助けろ、デュランダル」
王座の上から異空間のような空間が現れて、そこから先端が剣のような輝きが見えた。
俺の予想は当たっていた。
異空間から出てきたのは、剣の形をした魔物。…いや、魔物がは分からないが、この気配は魔物の気配。
剣の先端をセレティアの方に向けて、空を飛んでいる。
無から有へ。これも、ラルクラッド・テイマの能力だろう。
セレティアの拳は、その剣の魔物とぶつかる。
そこで時間が止まったかのように、両者一歩も動かず、譲らず、ただ、相手を倒すために自分の精一杯の力を込める。
その波動で、ラルクラッド・テイマが飲んでいたグラスが割れ、謁見の間の窓ガラスが割れた。
皆はすぐに謁見の間から避難する。
その中で俺は絶望を見ている顔をしているだろう。
剣の魔物がようやくセレティアの力に耐えきれなくなり、少し圧される。
それを見て、女性は魔法を放つが、セレティアはニヤッと笑い、特性『魔法反射』で跳ね返す。
それに女性は目を丸くする。
ついに、セレティアは剣の魔物を弾き返す。
剣の魔物は地面に転がる。
セレティアはラルクラッド・テイマの前まで歩き出す。
もう、女性は自分の魔法じゃどうにもならないと考えたのか、無謀にもセレティアの腰に手を回して止めにかかる。
…もちろん、そんなんで止まるほどセレティアは甘くない。邪魔なものを払うかのように、女性はふっ飛ばされた。
「そうか…デュランダルでも無理か」
死に近いものが迫っているというのに、ラルクラッド・テイマは笑っている。…本当に何か変わったのか?
「行け、ナイトメア」
次は異空間からではなく、影から出てきた。
先程の剣みたいな無機物ではなく、今回はスライムのような有機物。
「ねぇ、ラル君。そんなので止められるの?」
「多分。でも、これはまだ、実験段階だからね」
セレティアの拳がスライムに当たる。
すると、セレティアの拳がスライムの中におさまる。
「着火」
ラルクラッド・テイマがそう言うと、スライムは青かった色から赤に変色する。
湯気も出ていて、見るからに熱そうだ。
セレティアも顔をしかめている。傷には慣れているけど、熱さには慣れていない。
これは、セレティアの数少ない弱点かもしれない。
「氷結」
蒸発の次は氷結。
急な温度変化は体に負担をかける。これも、セレティアに対する一つの攻撃手段だな。
スライムの色が水色へ変わり、氷霧がスライムから出ている。
だが、セレティアはにやりと笑う。
セレティアはスライムにおさまっている右拳を地面に叩きつけた。
すると、そのスライムはバラバラになる。
これにラルクラッド・テイマは「おぉ〜」という。
スライムが氷結で硬い個体になっていることを利用して、バラバラにするのは俺もよく思いついたなと思う。
だが、バラバラになったスライムは、初めの青色に戻る。
戻ると、バラバラだったスライムがまた一つの塊になって、元の姿になった。
「…ラル君って、やっぱりすごいね!」
…スライムは核を壊さないと、どれだけ細かくみじん切りにしても復活する。
でも、セレティアの叩きつける攻撃に耐えたこのスライムの核も相当なものだと思う。
セレティアは褒める。
「いや、これは試作。でも、いい結果が取れたよ」
そう言うと、ラルクラッド・テイマは立ち上がって、俺の方へ歩いてくる。
「やぁ、カラン。神格会議ぶりだね」
「…ペリストア農国付近ぶりじゃないのか?」
そう言って、まだ包帯を巻いていて、治っていない左腕を見せる。
「あれはちょっとね…それより、その格好はどうしたんだい?」
「…騒がれたりするのは嫌いなんだ」
「そう言う割には、君たちのその格好は騒がれそうだが?」
「こういう服しかうちにはないんだ」
俺は今、変装していて、宿についてからすぐにもう一度着替えたため、綺麗な服を着ている。
王宮に行くまで、視線を感じていた。でも、これはしょうがない。
「俺は視線を集めるのは慣れているし、いいけど、騒がれるのが嫌だけだ」
そう言うと、ラルクラッド・テイマは俺の背中に手を当てる。
「まぁ、立ち話はこのくらいにして、僕の自室で本題の話でもしよう」
ふらふらになりながら、ふっ飛ばされた所から帰ってきてすぐの側近に目を向けると、側近は肩で息をしながら「は、い」と言った。
…側近という仕事も、かなりの重労働だなと思う。
「今から側近が案内してくれる。じゃあ、頼んだよ、スレンダ」
「スレンダ、です。で...は、着いてきて...ください」
ふらふらになりながら歩いて行くスレンダ。
…なんか、俺がやったわけじゃないのに心が痛む。
そして、スレンダの後をついていき、ラルクラッド・テイマの自室に着く。
スレンダが扉を開ける。
「どうぞ」
スレンダに言われて、俺たちは部屋に入る。
全員入ると、お茶を淹れてくれて、すぐに出て行った。
ラルクラッド・テイマは一口飲むと、脚を組んで言った。
「じゃあ、話をしようか」
俺は睨むように言った。
「…なぜ、ペリストア農国に魔物を送った?」




