28話 ラルクラッド・テイマ
もう祭り行きません
「陛下、大変です!王宮の前で怪しい女が兵士たちをなぎ倒して暴れています!」
謁見の間、その扉をノックもせず開ける兵士。
だが、そんなことで怒るような者はこの空間にはいない。
兵士の言葉に、王座に座る側近の女性は微笑む。
「…そこにはその女性、一人だけか?」
脚を組み、手を顎に当ててそう聴くのは、テイマ帝国の皇帝『魔調帝』ラルクラッド・テイマ。
ラルクラッド・テイマの質問に、兵士は答えることが出来なかった。
「…ん?居ないのか?」
「私が見たのは、その女だけでしたが…」
「そうか…」
ラルクラッド・テイマはそう言って急に立ち上がる。そして、口笛を吹いた。
それに兵士はビクッとする。
すると、その口笛を聞いたカラスのような魔物が飛んできて、ラルクラッド・テイマの腕に乗る。
頭を撫でながらラルクラッド・テイマは言う。
「外の情報を教えてくれ」
普通、魔物に人間の言葉が分かるはずがない。それなのに、カラスの魔物に向かってそう言う。
魔物はその言葉が分かったかのように、王宮をものすごい速度で飛んでいき、外へ出る。
外へ出ると、空中へ高く飛び、地上で行われている戦いを見る。
十秒後、再び地上付近に降下すると、王宮に入って謁見の間に居るラルクラッド・テイマの腕に乗る。
「カ〜!カ〜!カ〜!」
この謁見の間に居る誰もが分からない。ただ、カ〜カ〜と鳴くだけの魔物の喋っている言葉が。
…だが、その言葉を唯一理解できるのがラルクラッド・テイマただ一人。
魔物の言葉を聞いたラルクラッド・テイマは、笑った。
「ふふっ、やはり来たか」
「あの方が来たのですか?」
「あぁ、彼だけで来ると思ったけど、まさかお姉さんまで来るとはね」
「どうしますか?あの方なら追い返しても許してくれそうですけど」
「…確かに、彼は諦めが早いからね。でも、お姉さんはそうもいかない。それに、あの件のことを言わないといけない」
「では…」
「あぁ、連れてきてくれ」
側近にそう言うと、側近はこのことを伝えに来た兵士に伝える。
そして、兵士は一礼して、走って伝えに行った。
謁見の間は静かになったが、ラルクラッド・テイマは笑っていた。
「これから騒がしくなるぞ」
「嬉しそうですね」
「試してみたいことを、彼たちなら試せるからね。それに、こっちが優勢なんだ」
ラルクラッド・テイマのその言葉を分かるのは、誰もいなかった。
・・・・・・
・・・・・・
一斉に襲いかかってくる兵士たち。
今回は槍とは違って『物理防御』を使える時間がある。
これ以上セレティアの被害に遭う者を減らすために、俺たちを覆うように『物理防御』を張る。
「ッ!?解け!」
「これは君たちを思っての『物理防御』だ」
「わ、私たちを侮辱しているのか!」
そう言って、『物理防御』を破ろうと槍を何度も突いてくる。
俺は魔法がすごく使えるわけじゃないから、そんな長時間は保たない。
『物理防御』に若干ヒビが入る。
それに、兵士たちの士気は高まる。
「…仕方ない。セレティア、『物理防御』が破れたら頼んだぞ」
「えぇ!任せなさい!」
ヒビが広がって破れようとした時…
「止め!」
王宮の中の方から、凛々しい女性の声が聞こえてくる。
その声に兵士たちが攻撃を止める。『物理防御』もギリギリ破れずに残っている。
兵士たちが女性に向かって武器をおろして、姿勢を正す。
「そちらのお二人、無礼をお許しください。陛下がお呼びです」
女性の言葉に兵士たちは目を丸くした。でも、何も言わない。
俺たちは何も分からないが、兵士たちの態度を見て上司と理解する。
俺はとりあえず、女性の言う通りに王宮に向かう。
兵士たちは悔しそうに、俺たちを睨んでくる。それに、わずかな高揚感を覚えながら、王宮に入る。
王宮に入ると、扉が閉められて、兵士たちが見えなくなる。
「先程はうちの兵士たちがすみませんでした」
「本当ですよ!テイマ帝国だから期待したのに、全然強くないじゃないですか!」
うんうん。セレティア、お前は黙ってくれ。絶対にこの女性はそれについて謝っているわけじゃないし、その原因はお前だろ。
見てみろ。女性もどう返したらいいか困っている。
「いえ、こちらこそこのすみません。こいつがすぐに手が出る性格のせいで、兵士たちかあんな目に…」
「ま、まぁ、兵士たちに力がないのは確かですので…」
…気まずい。
本当に雰囲気クラッシャー過ぎる。
というか、陛下…『魔調帝』には変装していても気づかれてるな。
そして、王宮を進み、階段をあがり、謁見の間の前にたどり着く。
女性は扉をノックする。
中から「いいぞ」と声がする。
「では、どうぞ。お入りください」
扉が開く。
その瞬間、セレティアが走り出す。
「ラールくーん!!」
そんなことを言う時は、抱き着くのがセオリーなのだが、こいつは違う。
思いっ切り拳を作っていて、殴りにいっていている。
これには、冷静沈着そうな女性も慌てた表情を見せる。
女性は『物理防御』をすぐに使ったが、セレティアに認知もされず破られる。
そして、その拳は『魔調帝』へ……
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