27話 出会う前の戦闘
魔物の国と聞くと暗いイメージを持つが、実際はその真逆。
外から来るのは商人くらいなものの、国内は魔物と人間がお互いを助け合いながら共存している…匂いを除けばいい国だ。
天気も今日は晴れで、住民たちの話し声や笑い声がよく聞こえてくる。本当に匂いを除けばね……
「あの〜すみません。宿屋ってどこにあるか分かりますか?」
歩いていた知的そうな青年に聴く。
この青年なら何でも知っていそう。そんな雰囲気をこの青年は持っている。
「外から来た人ですか!?」
「そ、そうだけど」
「着いてきてください!」
おとなしそうだった青年が、やっぱり外から来る人は珍しいからかすごく興奮している。
「どこから来たんですか?」
「ペリストア農国だよ」
俺は入国許可証を見せる。そこには、発行した国と発行者の名前が書いてある。
しかし、青年はなぜか首を傾げた
「えっ、あの国から?…こんな強い人がいる国だったっけ?」
俺はビクッとなった。
この青年が言っていることは合っている。ペリストア農国の人たちじゃ、テイマ帝国に入国出来るかギリギリの力を持つ人たちしかいない。
「…実は旅をしていて、その時に寄ったペリストア農国で発行してもらったんだ」
「へぇ〜、そうなんですか。じゃあ、出身国は?」
ロタナス王国って言ったら、入国許可証に書かれているカランの名前で正体がバレる。
ヒュパ救王国と言っても、ペリストア農国よりも弱い国だから納得してもらえないだろう。
それに、そんなに関わりのない国の名前を出して、何か大変なことが起きたら嫌だし…
神様!早く、宿屋に連れて行ってくれ!!
もう、答えることをやめて考えるフリをしながら着くのを待つ。
青年はず〜と俺を見ながら歩いている。
「あ、着きました。ここが、国唯一の宿屋です」
青年は建物の前で止まる。
建物にはボロボロになっているが、ギリギリ『宿屋』と読める。ここは、確かに宿屋らしい。
「…案内ありがとう。じゃあ、今日はもう休むよ」
俺は青年の質問に答えずに、セレティアの腕を掴んで宿屋に入ろうとする。
「えっ、あの、出身国はどこ…」
「まぁ、いつか分かるかもな」
青年の言葉を遮ってそう言う。
そして、宿屋の扉を開けて入った。
宿屋には案の定、受け付け台があり、おじさんが眠たそうに座っていた。
「ッ!い、いらっしゃい。何の用で?」
「泊まりたいんだが、部屋は空いているか?」
「あ、あぁ!空いている」
「じゃあ、二部屋借りたい」
「二部屋ですね…銀貨十枚です」
値段を聞いて少し高いと思った。この国の物価の基準も知らないけど、カモられるのも嫌だ。
俺が悩んでいると、いつの間にかセレティアが銀貨十枚を出していた。
「何を渋っているの?銀貨十枚なんて安いもんじゃない」
…セレティアの言葉を聞いてハッとした。
確かに、どんなに高難易度の魔物退治依頼でも受けれる俺たちは、金銭の心配をする必要はまぁない。
でも、騙されるのはなぁ…
「じゃあ、飯は朝のチャイムと夜のチャイムが鳴ってから一時間だからな」
ご飯が付いてるのか。
…これなら、この値段でも納得どころか、逆に安いくらいかもしれない。
「分かった。ありがとう」
俺たちは部屋の鍵をもらって、部屋に入る。
今はとりあえず、荷物を部屋に置きたい。『魔調帝』に会うのはその後。
部屋に荷物を置いてすぐに宿を出る。
待つこと二分でセレティアも来る。
俺たちは当初の目的の『魔調帝』に、これから会いに行く。
ペリストア農国で『魔調帝』の魔物と戦った時に、俺が居ることはバレているし、いつか来ると考えているだろう。
「あそこに居るのかな?ラル君」
セレティアが指を差したのは、テイマ帝国の王宮。
「テイマ帝国の皇帝だからな。そりゃあ、あそこに居るだろ」
「なら、急いで行きましょ!」
そう言ってセレティアは走り出す。
俺は走らずに、テイマ帝国の街や雰囲気を観察しながら行く。
魔物が人の手伝いをしているのを見ると違和感しかない。でも、不思議と一ミリも狩るという考えが脳裏をよぎらない。
戦闘だけじゃなくて、生活の一部のためにも魔物はこの国を支えている。
人件費とかもいらないだろうから、店を運営する立場からすれば魔物は必要不可欠な存在。
出店で肉を買って、食べながら向かっていると人が空を飛んでいた。
俺はため息を吐いて、王宮へ繋がる階段を上がる。
人の叫び声、魔物の鳴き声が同時に聞こえてくる。
王宮の入口に着くと、セレティアが門番や番犬たちと殴り合っていた。
俺は近づいて左腕でセレティアの腕を掴む。
「落ち着いてくれ」
「だって!ラル君に会わせてって言っても聞いてくれないんだもん!」
「き、貴様!ラルクラッド陛下をそんな呼び方するとは!!」
倒された兵士が地面から立ち上がり、セレティアに槍を突きにかかる。
…てか、いい歳して「だもん」はキツイて。
兵士の槍はセレティアにかわされて、俺の顔面に向かってきた。
俺は右手で、その槍の突きを止める。
「まぁ、まぁ、落ち着いてください」
「お、落ち着くだと!?お前らみたいな怪しいやつを見て、落ち着いていられるか!」
兵士はそう言うと、周りの倒れていた兵士や魔物たちが立ち上がった。
そして、捨て身で一斉に俺たちに襲いかかってきた。




