26話 テイマ帝国へ入国
宿に戻ってセレティアの部屋の扉を叩く。
起きているのか、まず部屋にいるのかも分からないけど、とりあえず叩く。
すると、部屋の中から歩いてくる音がした。
「何?まだ、朝食の時間じゃないんだけど」
扉が開かれすると、髪をブラシで解きながらそう言うセレティアが眠たそうに出てきた。
「あんな状態のギルドで朝食は無理だ。それより、貰ってきたぞ。テイマ帝国入国許可証」
「ッ!も、もうちょっと待っててね!」
俺の言葉で目が覚めたセレティアは、俺にそう言うと、部屋の扉を思いっ切り閉めた。
部屋の中から騒音ににも似たような音が聞こえてくる。…どんな用意をしているんだ?
待つこと十分……もうちょっと?
五分を過ぎた辺りから部屋扉に背中をつけて座っていると、「おまたせ!」という元気な声が聞こえると同時に背中に衝撃が走る。
その衝撃で前にふっ飛ばされると、「バキッ」という音が聞こえてきた。
部屋の扉は木の扉。
ちょっと気分が乗っているセレティアの力で開けられた扉と、それが俺の体がぶつかると、どんな扉でも多分壊れるだろう。
後ろを振り返ると、部屋の扉がなくなっていた。
セレティアの手に握られているのはドアノブ。その前には散らばっている木の破片。
そして、この騒音を聞きつけたあの受け付けのおじさんが駆けつけた。
「おい!大丈夫……ッ!?何で扉が壊れてるだ!」
おじさんは俺たちに駆け寄ると、俺とセレティアを交互に見た。
「男の方は被害者っぽいな…じゃあ女、お前が犯人だな?」
昨日は受け付け台の席に座っていたから分からなかったけど、今見ると身長は百八十センチくらいあり、かなりの筋肉質な体型。
そんな巨漢な受け付けおじさんが、セレティアを見下ろしている。
睨んでいるおじさんに対して、緊張感がないセレティアは笑顔でおじさんをみる。
…まずいッ!
かなり強そうなこのおじさんにだったら、セレティアの『遊べる』センサーが反応してしまうかもしれない。
俺はこっそり目を隠そうと
「ごめんなさい」
セレティアは短くそう言う。そして、おじさんの握りこぶしを無理やり開かせて、金貨二枚をおじさんの手のひらに乗せた。
おじさんは目を丸くしながら、その金貨二枚を貰うと笑顔になった。
なぜなら、こんな女の子がものすごい力で自分の拳を開かせる。
その後に、金貨二枚という、こんな木の扉何個でも修理できるくらいの金を渡されたから。
普通なら銀貨一枚くらいだと俺は思っている。…本当に世間知らず過ぎるな、セレティアって。
おじさんはお金を貰うとその場で固まってしまったので、俺たちは立ち去る。
「それじゃあ、行きましょうか!」
そう言うとセレティアは、旅行にでも行くかのような大きなバックを肩にかけ、つば広帽子をかぶった。
「セレティア、今から向かう所分かってるよな?」
「えぇ!もちろん!ラル君の国よ!」
「…じゃあ、行くか」
もうこいつに説明するのがしんどくなった。
俺たちは宿から出た。
国を出る際にギルドも通るから、もう一度ギルド内を見る。…先程から何も変わっていなかった。
そして、俺たちはギルドが使えないので、街のパン屋によって、朝食を買う。
朝食を食べながら、俺たちは国を出た。
・・・・・・
・・・・・・
ペリストア農国からテイマ帝国までは、馬車で二日。
「セレティア、走るぞ。……?」
俺は歩きながら朝食を食べ終わってそう言うと、セレティアからの返事は返ってこない。
ちらりと横を見ると、セレティアはいなかった。
周りを見渡すと、かなり前の方で砂嵐があがっていた。
…あそこか。
俺はテイマ帝国に着いてからを考えながら食べていた。そのせいで食べる速度が遅くなってしまった。
セレティアはそんなことよりラル君に早く会いたいから、すぐに食べ終わったんだろう。
セレティアに追いつくために走り出す。
セレティアが起こした砂嵐に目を痛め、顔を痛め、口の中で「ジャリジャリ」という音が鳴る。
馬車で二日かかる道だが、俺たちが本気で走ったら二〜三時間で着く。
……俺はテイマ帝国に着くまで、ず〜っとセレティアの起こした砂嵐を食らい、道中のセレティアが倒した魔物に足を取られるなど、散々な目にあった。
「あら、そんな汚れた格好で行く気?」
涼しい顔でそう言うセレティアに殺意が湧いたが、ここで言いあっても時間の無駄。
「そうだよ。とりあえず、早く入国したい。服は入国してから着替える」
テイマ帝国に近づくと、あの時と同じように魔物を調教する香水の匂いがする。
あの時は魔物が纏っていたいただけであれほどの匂いだったが、今は国から匂いがする。
近づくにつれて、その匂いはあの時の何倍も濃い。
嫌な匂いではないが、いい気持にはなれないけど、セレティアは楽しそうにしている。
「行くぞ」
俺はテイマ帝国の入口行く。
鎖国国家ではないが、こんな異臭と魔物の国に自ら行こうとは誰も思わない。
だから、普通なら並んで入国する所を、ここは並ばず入国出来る。
門番は二人。そして、その横には番犬のような狼の魔物が俺たちを威嚇している。
「許可証は?」
俺は胸ポケットからテイマ帝国入国許可証を二枚取り出して門番に見せる。
テイマ帝国は入国する際も厳しく、魔物を調教している国だから襲われた時に対処出来る力がないといけない。
この入国許可証は国から発行されるから、国が実力を認めた者しか入国許可証を貰えない。
入国許可証を確認すると、俺たちに返した。
「何の用でこの国に?」
「…ちょっとした私用です」
そう答えると、門番は納得のいかない表情を見せたが、とりあえず通してくれた。
「その入国許可証は必ず常時しといてください」
最後にそう言って、俺たちに向かって腰を曲げる。
ようやく全ての元凶のテイマ帝国に入国出来た。俺の休みを潰したこいつらをどう調理師てやろうか。
そんなことを考えながら、まずは宿探しをすることにした。
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