25話 テイマ帝国入国許可証
食事が終わり、皆はそのままギルドに残る者、宿屋に戻って寝る者に分かれた。
ほとんどの奴らがギルドに残っているが、俺たちは宿屋に行くことにした。
「え〜、セレティアさんまた帰っちゃうんですか?後カランも」
「ごめんなさいね。ちゃんとしたベッドで寝たいの」
……俺がついでみたいな言い草は気になるが、オルンの言葉にセレティアはそう返す。
オルンってギルド長なのにかなり酔っている。ここのギルド長とは全然違う。
ギルドから出ると、外は真っ暗で星が見えた。
街も来たときほどの人通りはないけど、それなりに人は居る。
宿屋には二分くらいですぐに着いた。
中に入ると、受け付けのおじさんが受け付け台で眠っていた。
鼻ちょうちんが出来ているくらい気持ちよさように寝ている所を、セレティアは構わず机に銀貨を叩きつけて言う。
「おじさん、はい!これ、宿代ね!!」
わざわざそんな完全に目を覚めるような声で言わなくてもいいと思ったが、俺は何も言わずにセレティアに従う。
おじさんは寝ぼけながらも、空いている部屋の鍵を二つ渡してくれた。
鍵が示す空き部屋を見つけると、二つ貰っていた鍵の一つを俺に渡した。
「ご飯とかついてない宿だから、朝食はギルドでね」
セレティアはそう言うと、手を上げて「ばいばーい」と手を振った。
そのまま、セレティアは部屋に入っていった。
俺も部屋に入る。
部屋の中の大きさ、ベットの質はヒュパ救王国と変わらない。
俺は風呂は明日の朝にでも入ろうと思い、そのままベットに入って寝た。
・・・・・・
・・・・・・
カーテンなどがないから、太陽の光が直接顔に当たる。
自然の光を浴びて起きるのもいいものだなと思った。
風呂はないから外に出て、冒険者たちが使う風呂に一番乗りで入る。
…ぬるいが、入らないよりマシだ。
風呂から出ると、五十から六十歳くらいのおじいちゃんたちが服を脱いで今にも入ろうとしていた。
俺は逃げるようにその場から立ち去ってギルドに行く。
街は朝だからか賑やかだ。
ギルドに入ると、ギルド内は酒の匂い、肉の匂い、魚の匂いが合わさった匂いが一気に鼻に入ってくる。
その匂いに倒れそうになりながらも、なんとか耐える。
俺はギルド長室を探して、ノックする。
「…どうぞ」
流石はペリストア農国のギルド長キャルメルさんだ。どこかの国のギルド長と違って、朝早くからちゃんと起きている。
「カランです」
「…最低限の扉の開閉で入ってくれ」
キャルメルさんも、このギルド内の匂いに気づいているようだ。
俺は持ち前の身体能力で、コンマ何秒とかの超次元速度で部屋に入った。
部屋の中に入ると、キャルメルさんはマスクをして、書類整理をしていた。
顔色はとても悪そうで、今にも吐きそうな顔をしている。
「…用件はなんですか?セレティアさんの弟だから聞いてあげますが、実力が分からないあなたを私はまだ信用してませんよ」
「それはどうも。まぁ、実力はセレティア以上とは言っておきませしょう」
俺は自信満々にそう言うと、キャルメルさんは「ふっ」と何バカなことを言っているだと言うような嘲笑をした。
あれ、この反応。…キャルメルさん、俺たちがトレイア家の人間って分かってないのか?
優秀そうな目ために反して、調査とかはしない、仕事ができないタイプなのかもしれない。
俺も「ふっ」と嘲笑に似た感じで返した。
すると、キャルメルは俺を睨みつけると後ろを向いた。
「失礼。用件ですが、テイマ帝国への入国許可証をください」
「…なぜ、そんなものがほしいんだ?あぁ、セレティアさんにでも頼まれたか?」
「俺の意思です。まぁ、セレティアの分も貰いますけど」
キャルメルさんは手を後ろに回して、ゆっくりと俺に近づいてくる。そして、俺とは人一人分が間に入るくらいの間をあけている。
この距離なら、手や足を出すことが出来る。
俺はキャルメルさんの雰囲気から、いつ戦闘が起きてもいいように備えた。
「ふっ、お前たち姉弟は肝が据わっているな。…そういう奴らは大歓迎だよ」
「…!?え、戦わないんですか?」
俺は目を丸くしてそう言う。それは、キャルメルさんから戦闘の雰囲気がなくなったから。
そこで、こんな自らの雰囲気をここまで何もしてないのに感じさせ、変えれるのはただ者じゃないと分かった。
同時に、俺は先程バカと思ったのを心の底から謝った。
「いやいや、私のこの圧をそんな平然と受けれるなんて、流石はセレティアさんの弟さん……そして、ロタナス王国トレイア侯爵家現当主、カラン・トレイア殿だ」
「…ふっ、そこまで調べられていたか」
この笑いは、先程の嘲笑などではなく、心からの感心だった。
圧は全くと言っていいくらい感じなかったかが、雰囲気を自在に変えれることを出来る奴が俺との実力差を分からないはずがないし、俺のことも元から知っていたようだし。
俺との圧倒的な実力差を分かっていながら、あの敵対心を持った話し方や態度が出来たことは、本当にすごいことだと思う。
すると、キャルメルさんは自分の事務机に戻り、その引き出しを開けて、二枚の紙を出した。
「あの魔物を狩ってきた後にセレティアさんと初めて会って、その時にも同じようなことを言われたよ。「弟の分も入れて二枚ね」って」
…なるほど。もう、セレティアに言われていたのか。
でも、あのテイマ帝国への入国許可証がこんなすぐ出せるのは、キャルメルさんのこの優秀さがペリストア農国の国王にも知られているのだろう。
キャルメルさんはそう言うと、俺の胸にテイマ帝国入国許可証を当てた。
「気をつけろよ。あの国には」
「任せろ。俺たちを誰だと思っている」
「はい。あの貴族の直系ですからね。心配はしてませんが、念のためです」
俺はキャルメルさんと握手を交わした。
胸に当てられたテイマ帝国入国許可証を胸ポケットにしまう。
そのまま、息を止めながらギルド長室の扉をすぐに閉めて、ギルドから走って出た。




