22話 俺たちは姉弟だ!!
「そんなに高い爵位だったとは…」
シュバルナはそう言う。
俺が貴族ということやロタナス王国の最強の騎士ということを察していたシュバルナだったが、侯爵家の人間だと分かっても口調は変わらない。
ヒュパ救王国のいい所はこういう身分差を感じないところだろう。
「というか、前から気になっていたんだが、か…お前とセレティアさんはどうゆう関係なんだ?」
シュバルナは俺に小さな声でそう聴いてきた。
「いや、名前で呼んでいいよ。もうここまで情報を出したら絶対にバレる。で、俺とセレティアの関係だったな?」
俺もシュバルナに合わせて小さな声でそう返す。
「あぁ、セレティアさんも貴族なんだろ?で、カランより歳は上に見える。俺は貴族間の呼び方とか知らないけど、あれだけ親しくしてるってことは……」
…本当にこいつは頭が回るな。
「それだけ分かってるなら、当ててみてよ。俺とセレティアの関係」
俺がそう言うと、なぜかシュバルナは顔を紅潮させた。
…何で、姉と弟の関係を言うのにそんな顔になるんだ?あ、セレティアが好きだから、俺の姉というのが嫌なだけかもしれない。
俺は別に回答を急かさずに、シュバルナが言うのを待った。
「……ふ、夫婦…とか?」
その言葉を聞いた瞬間、俺はまずシュバルナの胸ぐらをつかむ。そして、屋根に向かって投げ飛ばした。
俺はその投げ飛ばしたシュバルナにも聞こえるように大声で言った。大事なことだからな!!
「いや、姉だ!姉だ!姉だ!何度でも言う、セレティアは姉だ!…二度とそんな妄言を吐き散らすなよ?」
これはギルド内にいた皆にも聞こえていて、皆は目を丸くしている。
それは、俺とセレティアが弟と姉の関係であることが分かったから。それか、基本優しく、声を荒らげない俺がこんな暴走しているからか。
「お前たちもな?」
最後にこいつたちにも釘を差しておく。
「俺はエキナセアというセレティアよりも美しく、おしとやかで、素晴らしい女性と結婚してるし子供もいる。そんな、そんな俺に…」
そして、サイヤ人みたいなオーラが俺の体から溢れ出る。
生まれた時から一緒に育ってきた奴で、いつもあんなことやこんなことをされ痛い目に遭わされる。そんな奴と夫婦だなんてどうしたら思われるんだ?
「…侯爵家でしかもカランの姉…な、なぁ、カラン、俺行けるかな?」
怒りのオーラを放っていると、オルンが急にそんなことを聴いてきた。
そんなオルンに俺は事実を言った。
「うん、無理。一日で死ぬ」
「し、死ぬ!?」
「うん。俺でさえ死にそうに何度もなってるんだ」
だが、俺がそう言ってもオルンはまだ諦めきれていないらしい。
俺はセレティアの元旦那のあの時の顔をよく覚えている。
あの結婚した時の元旦那は筋骨隆々で、完全にセレティアに惚れていた。だが、離婚直前には筋骨隆々だった体も萎れ、全身アザだらけ。
セレティアは向こうの家に嫁いだから、トレイアから出て行った。その間のトレイア家は平和だったが、向こうの家は大変だっただろう。詳しい話は聞かないようにしていたが、大変ということだけは絶対断言出来る。
貴族ですら泣いて離婚したくなるセレティアを、オルンが……そう言えば…。
「オルンってそれなりに高い爵位の人?」
俺たちが侯爵家ということは知っているはず。
知っていてセレティアと一緒になりたいと思えるのは、侯爵家に近しい高い身分ということ。
「まぁ、一応はカランたちと同じ侯爵家だけど、俺は次男だからな」
「…うん。無理は言わない。セレティアは諦めろ」
ロタナス王国ですら崩壊ギリギリだったのに、小さなヒュパ救王国の侯爵家じゃ、あの怪物に耐えることは出来ないだろう。
結婚の話とかは流石にセレティアのプライバシーもあるから話さないが、セレティアと一緒にいたら大変だということだけオルンに伝える。
俺はこれ以上、あんな顔になる人を見たくない。そんなことになるなら、セレティアを生んだトレイア家に居させる方がいい。
オルンはず〜と考える仕草を見せたが、俺の説得でようやく諦めがついたのか、ため息を吐いた。
「あのカランがそこまで言うなら……」
俺はオルンの肩に右腕を乗せて、「それが人生で一番の正解だ」と言う。
セレティアという怪物は本当に体験し、その惨状を見た人じゃないと理解できないんだ。
すると、ギルドの扉が開き、『魔調帝』ことラル君を探しに行ったセレティアが帰ってきた。…俺が投げ飛ばしたシュバルナを背負って。
「ねぇ、この子、急に落ちてきたんだけど、カラン何したの?」
そう言って、無造作に気を失っているシュバルナを床においた。
「何で俺に聴くんだよ」
「あんたしかいないじゃない。こんな暴挙に出る人は」
「…チッ、お前には言われたくねぇよ」
初めからセレティアが姉と言っておけばシュバルナがあんなことを言わなかった。それに関してはシュバルナに対してのすまないと思っている。
だが、セレティア。いつも暴挙に出ているお前にそんなことを言われる筋合いは俺にはない。
そんなやり取りを見ているギルド内の皆は思った。
『これは、確かに姉弟だと』




