21話 俺の正体
街の雰囲気を見ながら進んでいると、門番が言っていたギルドが見えてきた。
見た目はロタナス王国のような特殊素材で出来ているわけではなく、ヒュパ救王国みたいに木で出来ている。
そして、ロタナス王国のギルドやヒュパ救王国のギルドに比べて横も高さも小さい。
ロタナス王国は大国で自国だけじゃくて、周辺の村からの依頼なども多い。
人口や周辺の村や国から出稼ぎに来る人も多いから、必然的に大きくないと冒険者たちが中でギュウギュウになる。それだと、とても大国とは言えないから、大きく作ったと俺は思っている。
ヒュパ救王国のギルドも鎖国国家にしてみれば大きい。だが、それは中に冒険者用の宿屋もあるから、通常のギルドよりも大きくなるのだろう。
俺が見てきたギルドは、ロタナス王国、ヒュパ救王国、そしてセアの出身国のバソガラム帝国の三カ国。その中で最も小さい。
俺はギルドの扉を開けた。
「お!兄貴!来てくれましたか!」
こいつが口を開いた瞬間、俺は口を塞ごうとしたが、兄貴と呼ぶならまぁいいかと思って何もしなかった。
「そりゃ、あんな手紙の内容みたら来ないとだろ。『魔調帝』の魔物なんて、お前たちじゃ正直言って無理だ」
「…なんで『魔調帝』の魔物の強さ知ってんですか?」
「…お前たちは戦ったんだろ?『魔調帝』に調教された跡があった魔物と」
「あぁ、あれ嘘っすよ」
「は!?」
…いや、嘘なわけない。実際、俺はあいつが調教した超大型の狼の魔物と戦ったから。
だけど、それを悟られないように俺は冷静になって、話を聴く。
「じゃあ、何でセレティアからの手紙には『魔調帝』の跡って書かれてあったんだよ?」
あの時のセレティアはこんなヤバい冗談を言ういつものバカ状態ではなかった。
だから、俺も信じてここまで走ってきた。
「それは、セレティアさんが『あいつはこのくらいのことを書かないと来ないから』って」
「じゃあ、その魔物の正体がテイマ帝国の魔物だってのは?」
「え!?何で知ってるんですか?」
「…嫌な匂いがしたからな」
これ関してはこれ以外の理由が考えられなかった。
「セレティアさんも同じこと言ってましたよ!兄貴もっすか!」
そして、拍手してくる。俺はため息を吐いた。
セレティアが俺をこさせるために書いた手紙の内容は嘘。だが、俺は戦った。
セレティアが考えた『魔調帝』の嘘が実現したということ。……これはセレティアが戦犯だ。
「というより、何で『魔調帝』の魔物の強さを知ってんですか?」
「あ、あ〜!ごめん!俺が道で戦った魔物がちょっとだけ強かったから、手紙に書いてあった『魔調帝』の魔物と勘違いしてた。なら、あの魔物はただのテイマ帝国の魔物だったんだな〜」
俺は早口でそう言い訳した。急に考えたにしたら上出来で俺の舌に震えている。
そして、ギルド内はこいつの反応を見て分かるように、暗い雰囲気ではなかった。…ヒュパ救王国のギルド内とは正反対だ。
酒を腕を回して飲んでいたり、依頼の取り合いをしている。
俺はとりあえずセレティアのところに行く。
セレティアは探さなくてもすぐ見つかった。
近づいて、セレティアの飲んでいる酒を奪った。
「おい、セレティア。あの手紙みた……」
セレティアを睨みつけて言っていると、俺はその最中にセレティアに羽交い締めにされた。
「おい!私の酒を奪ってただで済むと思うなよ!!」
「それはこっちのセリフだ!!お前の俺を呼ぶための嘘が実現したんだよ!」
もう、あの時のモードではなくなったセレティア。
そして、俺は今、左腕が使えない。右腕だけ使えても今のセレティアの羽交い締めからは抜け出せれない。だから、もう何の抵抗もせずに言う。
すると、セレティアは目を丸くてして、俺の耳元で言った。
「もしかして、本当にラル君と会ったの!?」
そう言うと、興奮しているのか、羽交い締めをしている俺の鼻が当たるところまで近づいてきた。
「会ったわけじゃない。ただ、あいつの声が聞こえたし、あいつの魔物とも戦った」
「ああ、だからその左腕完全に逝ってるのね」
…こいつ、知っていて羽交い締めなんていう行為に及んだのか?
まぁ、でも、これがセレティアという自分の姉だ。逆に安心する。
「それで?今はどういう状況なんだ?」
国の危機というには、住民もこのギルドの雰囲気もとても明るい。
「魔物はほとんど倒したわよ。後の残骸はこの国の冒険者に任せたわ」
そう言うと、セレティアは羽交い締めをやめて、スキップして「ラル君!ラル君!」と言いながら出て行った。
そして、セレティアが去ると俺の周りにヒュパ救王国の冒険者とペリストア農国の冒険者が集まってきた。
俺は羽交い締めの反動で動けない。…こんな情けない姿を見せるなんて、他のディヴァインウォリアーの奴らが見たらもう追放ものだ。
「…セレティアさんがラル君とは誰なんだ?」
シュバルナがそう聴いてきた。
俺はもういいか、と思って正直に言った。
「ラル君は『魔調帝』、ラルクラッド・テイマのことだ」
すると、先程までの賑やかさがなくなった。
「な、なぜ、あの『魔調帝』を、ら、ラル君などと呼んでいるんだ?」
流石のシュバルナも困惑している。だが、それよりも俺は鎖国国家のヒュパ救王国でも、『魔調帝』を知っていることに驚いている。
「練習相手になるからじゃないか?あいつの魔物が」
「……君たちは一体、何者なんだ?」
シュバルナが放ったその言葉は、おそらく、皆が思っていることだろう。
俺は少し間を置いて言った。
「…俺たちはただの侯爵家の人間だよ」
俺がそう言うと、皆は腰を抜かしてその場に尻餅をついた。
「「「「「え、……こ、侯爵家!?!?」」」」」
「あぁ、そうだよ」
そして、中には衝撃的過ぎたのか気絶する者まで現れた。
…これは正直がバレるのも時間の問題かもな。




