19話 魔物調教の国の皇帝『魔調帝』
家で風呂に入り、高級料理みたいな豪華な夕食を家族と食べ、もう一度、ギルドへ行く準備が出来た。
家族やメイドたちにもセレティアが数日間帰ってこないと伝えてある。
…え、俺は?
俺は行かない。行ったら今度こそ殺されかねないから。
それに、行くならペリストア農国はヒュパ救王国みたいな鎖国国家でもないから世間の情報が入ってくる。
ということは、変装して、名前も変えないといけない。それが、今の頭の中セレティアだらけのあいつらに出来ると思わない。
間違えてカランなんて言われたら終わりだ。
俺は転移の魔法陣の部屋でセレティアを見送る。
「じゃあ、頑張ってきてください」
「なによ、そんな他人行儀で言うなんて。いつもみたいにいってらっしゃーい!って言ってほしいんだけど」
「…国の危機とかいう大事だからな。そんなテンションでいられない。俺はお前と違ってちゃんと緊張感を持つ人間なんだよ」
「ふ〜ん…まぁ、それもカランらしいけど。……じゃあ、行ってくるわ」
そう言うと、俺が大変なことが起きた場合に備えて渡しておいた伝書鳩の頭を撫でて、セレティアは転移の魔法陣でギルドに行った。
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・・・・・・
セレティアが行ってから二日が経ち、トレイア家は平和だった。
いつもならセレティアに振り回されるメイドたちは仕事以外の時間は優雅にお茶を嗜み、セアとミーとの時間も平和に過ごすことが出来た。
……この伝書鳩が本当に飛んできた時までは。
セレティアに一応として持たせていた伝書鳩が本当に飛んできて、その内容が結構真面目にヤバいかもしれない。
というか、セレティアもよくこんな情報集めることが出来たなと思う。
伝書鳩に書いていた内容は『初めはただの農作物を襲う魔物や国の周辺に出た大型魔物対峙だったけど、その魔物たちが「魔調帝」に調教されていた跡があった。カランから魔調帝にやめろって言っといてくれない?』
魔調帝とは、ヒュパ救王国の北西にあり、ペリストア農国の北にある、テイマ帝国の人間。
テイマ帝国はこの世界で唯一、無害の魔物だけでなく害のある魔物も使役していることで有名。
その中で魔調帝は俺より若いがテイマ帝国の皇帝であり……俺と同じ神に選ばれたディヴァインウォリアーの一人でもある。
俺はあいつのことは苦手だ。
だって、普通に害のあるキモい魔物をペットのように連れ歩き、そのペットにキスをする。
俺は魔調帝になんでそんなことをするのか聴いたことがある。
「なぁ、なんでそんなこと出来るの?てか、する必要ある?」
「えぇ、ありますよ。こうすることで、僕の『調教接触昇格』がこの子の秘めている力を強めているんです。それにこれは印付けでもありますから」
「…なるほどね」
そう言って、ロタナスでは魔物ランクSに認定しているキャラムットというキモくて強い魔物にキスとして撫でる。
害のある魔物は狩ることしか考えていなかった俺からしたら、そんな行動をする奴と仲良くなりたいとは思わない。
ただ、あいつはテイマ帝国の人間だから魔物を敵として見ていない所以外は、普通にいいヤツだと思っている。
人柄も俺が見ていた時は穏やかで危なそうな思想を持っているとは思わなかったし、口調も優しい。
会話も上手く、あいつといると会話が絶えることがない。
そんな奴が自分が調教した魔物を他国に送って危機的状態にするとは到底思えない。
俺はとりあえず、その魔物を見るためにペリストア農国へ急ぐ。
「…ちょっと行ってくる」
「…はい、行ってらっしゃいませ。ご当主様」
すぐ側にいたメイド長に行ってくると伝え、急いで転移の魔法陣の部屋に行く。
ロタナス王国から行くよりヒュパ救王国からのほうが近い。
転移の魔法陣に魔力を注いでギルドに転移する。
いつもは賑やかなギルドだが、今日は人は居るには居るが少なく、このギルド内の雰囲気も騒げる雰囲気ではないと伝わってくる。
俺は気配を隠してギルドを出る。そして、胸ポケットに入れていたギルドガードを門番に見して外出する。
ペリストア農国へ走りながら向かっている最中に、変装するかしないか考える。
今回はただその魔物が本当に魔調帝が調教したのかを確かめるためであって、ペリストア農国の人やその国のギルド長、そしてペリストア農国の国王に会うわけではない。
ただ、国の周りに大国も密偵や、ディヴァインウォリアーの居る国の密偵でも居たとすればちょっとしんどいことになる。
そうなると、次の『神格会議』がただの討論会になる。そうなるとパッションの弱い俺は絶対に負ける。
…はぁ、やっぱり、やれることはやっといたほうがいいか。
そう思って、スイショートに行ったときにした黒髪に漆黒のコートを着る。これで変装は完了。
道中に出た魔物を倒しながら進んでいると、ペリストア農国にもう少しという辺りで嫌な匂いが鼻に入ってきた。
この匂いはテイマ帝国が魔物の使役で使っている特殊な香水。
俺はその匂いに一度足を止めたが、眉をひそながらもう一度走り出した。
「……あ、な、たはだれ?」
すると、空から大型なんてもんじゃない。超大型の狼の魔物が降ってきた。
現れると同時に俺の首を狙って鋭い爪で攻撃してきた。
それに、物理障壁は間に合わないと思った俺はギリギリで左腕を身代わりにすることで何とか生存した。
そして、たった一発で俺の左腕が完全に使い物にならなくなったことにも驚いたが、それとは別でその魔物に俺は目を丸くした。
…喋ったのだ。魔物が。
この時点でこんな常識外れの魔物を作れるのはこの世界にただ一人……それは『魔調帝』
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