16話 ヒュパ救王国の危機
兄貴と呼んだうちの一人が俺に抱き着こうとしてきたのをかわして、そのまま俺を警戒していた内の最も強そうな一人の男に近づいた。
すると、皆が俺を兄貴と呼んだからか、警戒が緩んでいたが完全になくなったわけではない。
「そう警戒しないでくれ。初めまして、名前は?」
「・・・人の名前を聞く前に自分の名を言うべきじゃないのか?」
・・・だいたいがこの返しすぎてつまらない。
だが、周りから「おい、しつれいだろ!」、「ギルドは強さ順だぞ!!」という声が聞こえる。
「はぁ、そうだね。・・・俺の名前はカラン。ギルド唯一のSSランクだ。よろしく」
俺はそう言って右手を差し出す。
「・・・シュバルナだ。こちらこそよろしく」
「シュバルナね。・・・驚かないんだな」
「まぁ、目が合った瞬間からそんな気がしてた。それに、こいつらが兄貴と言った時点で察した」
もっと、面白い反応してくれると思っていたから、こんな素っ気ない反応はつまらない。もっと「お、お前が、あのカランさん!?!?!?」みたいなことを考えていた俺のワクワクを返してくれ。
そんな気持ちがあったから男の手を強めで握った。
男は顔をしかめたが、そこにちょうど騒ぎを聞きつけたこのギルドの長、オルンが姿を現した。
「おい!カランが来たって本当か!?」
ギルド長室の扉が壊れる勢いで開けて走って俺のところまで来ると、オルンはなぜか手を合わせて、天を仰ぎ始めた。
「あぁ、ヒュパ様。やはりあなたは救済の神だ。この時にカランを迎えてくれるとは」
オルンが言っているヒュパ様とは、このギルドがある国、ヒュパ救王国の創建者にして、この国ではヒュパ救王国を滅亡の危機になった際に救ってくれる救済の神として崇められている。
このヒュパ救王国は小さな国でかなりの鎖国国家。本当に限られた信頼している国としかやりとりはしない。
それに、そんな鎖国国家で、ヒュパ救王国のある所もロタナス王国と言った大国や他の国々からすごく離れた東部に位置しており、世間の知識に疎い。
だから、俺がディヴァインウォリアーであることをヒュパ救王国の人たちは知らないから本名のカランを使っているし、変装もしていない。
じゃあ、世界を冒険している冒険者は?と思うかもしれないが、ヒュパ法王国は観光なら国に入れるが、冒険者ギルドはヒュパ救王国の人だけ入ることが出来る。
そこに部外者の俺がこのギルドに入れたのは、この国の周辺にある森で魔物に襲われている人たちがいて、それを助けたらそれがヒュパ救王国の第二皇子で、叶えられることならなんでも叶えてやると言われた。
その時、ちょうど活動拠点を探していたからギルド登録をしてほしいと伝えると五分後にはギルド登録されており、倒した魔物がヒュパ救王国指定の魔物だったこともあり最低ランクのFからBに格上げされた。そして、冒険者ギルド内にある宿の一部屋を無償で譲ってくれた。
そんなヒュパ救王国とロタナス王国は仲はよくなく、何の関わりもない。
俺が失踪中にここに来たのはたまたまだが、前々から興味はあった。だから、ここを活動拠点に決めた。それに、人にあれほど感謝されるのは久しぶりだった…
「…祈るのはいいけど俺に何か用でも?」
「あぁ!この国の行く末が決まる大事なことだ!!」
「行く末って、大げさ過ぎだろ」
俺がそう笑いながら言うと、シュバルが真剣な顔で言う。
「ヒュパ救王国の数少ない同盟国であり、食料などの輸入に関しては無くてはならない、ペリストア農国が今、国内で大変なことが起きているんだ」
俺はその言葉を聞くとすぐに2階にある部屋に戻ろうとしたが、ギルド長のオルンをはじめ、この冒険者ギルドの全員が俺を戻らせないと俺の全身に全方位でしがみつく。
だが、そこはディヴァインウォリアーであり、トレイアの血のこの体。
いくら大の大人が何百、何千と俺の体にしがみつこうとも、一瞬で全員を引き離せる。
例えばこうやって…
「「「「「ヒィ!!」」」」」
俺が戦場でいつも出していた雰囲気、そしてそこにし少しだけ威嚇を加えると、皆が悲鳴にも似た声を出し、地面にひれ伏した。
これは自分の意志とは関係無しにこの生物には勝てないと体が判断したのだ。
「このギルドには恩もあるし、助けれるなら助けてやりたい。だが、他の国が関わるのはごめんだ」
「な、なぜだ…」
シュバルナがそう言ったことに俺は「おぉ」と驚いた。
正直に言うと、ヒュパ救王国の人間は弱い。いくら自国内で高め合ったとしてもいずれ限界が来るし、現に俺が襲われているところを倒した魔物はロタナス王国の学生一人でも頑張れば倒せるレベル。
そんなレベルの魔物すら倒せないヒュパ救王国の人間の中に、俺の圧に耐えれるやつがいて、さらに話せるやつが居るとは世の中分からないものだ。
「お前なら何となく察してるんじゃないのか?俺の立場を」
実を言うと、そんなことを関わったら家に帰れなくなり、家族との時間がなくなってしまう。
だから、ここは今すぐにでも帰りたい。そして、俺のかわりに強力な助っ人を呼びに行きたい。
「…やっぱり、そういう御方か」
「気づいてたのか?」
「格好を見たら何となく、それに噂でだが…あのロタナス王国に白髮で、右手に手袋をした最強の騎士がいるときい…ッ!」
俺は全部を言い終わる前に風のように目の前には行き、口に人差し指を当てた。
それはそれ以上話すなという警告でもあり、それを手袋をしている右手でしているということは俺なりの脅しでもある。
「じゃ、俺はもう行くよ」
そう笑顔で言うと、人差し指を離す。そして、後ろを振り向き戻る。
すると…
「…何の真似だ?」
俺は『拘束魔法』で拘束されながらそう笑顔で聴く。
…顔は笑顔を保てているが、ここまでイラついたのは久しぶり。
「お願いします!あなた程の実力者じゃないと救えないんです!!」
「人にものを頼む側とは到底思えないな」
『拘束魔法』に足を取られた時に思いっ切り打った顎がマジで痛い。
すると、シュバルナは地面に穴が開く勢いで俺に土下座を繰り出した。
…これには流石にイラついていた感情より、心配のほうが勝つ。
「だ、大丈夫か?」
「はい!国の危機に比べれば!!」
ここではいと言えばこのまま家に帰れず連行されるだろう。……うん。やっぱりまずは帰ろう。
俺は自分の力だけで『拘束魔法』を物理的に破壊する。
普通はこんなこと出来ないが、そこは何でも物理で戦ってきたトレイアの血の出番というわけだ。
シュバルナは目を丸くして、すぐさまもう一度『拘束魔法』を繰り出したが、俺は『絶対防御』を発動させて『拘束魔法』を跳ね返す。
そして、その跳ね返った『拘束魔法』がシュバルナ自信に当たるという奇跡が起こった。
「ハハッ、まぁ、ここらへんで帰らせてもらう」
そう言って、階段を上がる。
その道中にシュバルナの声が聞こえていたが全部を無視して俺は部屋に戻り、転移の魔法陣で家に帰った。




