14話 妻との出会い
俺がさっき言った「あのアスロメア家がまだ公爵家だったとはな」というのは、魔王軍との戦いの後、ロタナス内では悪貴族たちが暴れていた。
その暴れていた貴族たちの中心とも言えたのがアスロメア家の前当主で、隠居していたヴァリアントの父親ワリダース・アスロメアだった。
隠居して、ヴァリアントが当主になったことをいいことに、アスロメアの地位を使って好き放題していた。
元から良くない噂しか聞かなかったワリダースだったが、この事件で子供は親に似ると言う言葉がよく分かった。ヴァリアントが入学当時、あれだけ悪役貴族だったのは親に似たからだろう。
つい最近、ようやく刑が執行されたが、俺は政治に全く興味が無いからアスロメア家がどうなったかは分からなかった。だが、流石に爵位は無くならないと思っていたが、まさか爵位の降格もなく現状維持とは運がいい。
陛下も中々の決断を下したと思うが、ヴァリアントは俺と出会ってから人間性も良くなり、戦いについてよく勉強していた。だからこそ、魔王軍との戦争でも軍事部門を務めるアスロメア家当主としてロタナスの滅亡を回避できた。
「先輩…一つ、聴いていいですか」
「あぁ」
「あの後、どこに行っていたんですか?」
「…お前も気になるのか」
「そりゃそうでしょ。どうしたら、行方不明になったと思ったら、数年後に他国の貴族令嬢を嫁に迎えて帰ってくることが出来るのか。とても気になります!」
何か、皆が聴いてくる所と違う所を聴いていたな。
なのにヴァリアントは、セアとの出会いを聴いてきた。まぁ、このくらい軽い会話が出来る仲でいるのはいいことだ。
「行方の件は話したら長くなるが、セアとの出会いならいいぞ」
「・・・すみません。セアとは?」
「はぁ、そうだったな。セアは妻のエキナセアを愛称で呼んだ名だ」
そう言うと、ヴァリアントはすごい勢いで立ち上がり、すごく綺麗な九十度で腰を曲げた。
「まさか、先輩の奥様の名前だったとは。申し訳ありません!」
「うん。もういいから座ってくれ。これに関しては社交界にあまり顔を出さないこちらにも非がある」
正直、謝るたびにこんなことをされるとめんどくさい。俺がやめろと言わない限り、ずっとその姿勢をキープする。・・・昔、人間性を改めるためにそう教えた俺も悪いのだが。
俺がそう言うと、ヴァリアントはすぐに座った。
そして、俺はセアとの出会いを話し始めた。
「あ~えっと、セアとの出会いだったな。あれは七年前・・・」
七年前、魔王軍との戦争が終わってすぐ俺は旅に出た。誰にも言わなかったのはすぐに帰ってくると思ったから。
だが、今まで人に囲まれて生きてきた俺にとって、一人の旅というのは楽しく、行く先先で出会う人たちは自分が誰か知らないからとても新鮮で、そしてロタナスのグラジオ流剣術に異国の剣術などを取り入れた俺だけの剣術も完成し、旅前より着実に力を身に着けていると実感できた。
冒険者ギルドにも登録して、一時期は冒険者として活動もしていた。すぐにギルドの最高ランクに到達し、ギルド内で宴会をしたのを覚えている。
ここでの生活が楽しすぎて、正直、旅先で死んだことにしてロタナスに帰らないという選択肢も思い浮かんだが、今、ロタナスはひどい状況で、他国からの抑止力であるディヴァインウォリアーの俺が死んだら、他国から攻められる可能性がある。だから、この選択肢は捨てた。
国に黙って出たとはいえ、俺をここまで育ててくれた国だ。思い入れもある。
そんな順風満帆な人生を送っている俺にギルドから直接依頼を受けた。依頼内容は、俺が今居る国の近くにあるバソガラム帝国のある公爵家が住んでいる付近に「ステイアウト」と呼ばれる凶悪な魔物が目撃された。そして、その魔物を離れさすか、倒してくれとのこと。
俺はこの依頼を承諾し、すぐにバソガラム帝国に行った。
そして、依頼を出した公爵家の家に着くと、すでに家の前で俺のことを待っている人が居た。
それが、後に、俺の妻になるエキナセアだった。
「はい。これが俺とセアの出会いの話だ」
そう言うと、ヴァリアントは「本当に?」とでも言いたげな目で俺を見てきた。
「・・・何が不満なんだ」
「いや、不満とかはないんですよ。ただ・・・先輩の話って似てはいるんですけど、どの小説もちょっと違うんですよ」
俺の小説・・・トレイア家はロタナス王国でも有名であり、その中でもディヴァインウォリアーになった俺の物語は子供から大人まで人気らしい。
記者は俺の学園時の生活や俺が行方不明の後、どんな所に行って、どんなことをしていたのかを気になって聴いてくるばかり。
そして、時間がある時にそれに対してその場その場でなんとなく答えると、一か月もすれば国中に「最強の旅路」なんていう小説が出回り、必ず売り切れになる。
小説は様々な所から出版されているから、俺のその場その場の答えを記者は真に受けて、小説を執筆している。その結果、似ているが少し違う内容が書かれた小説が大量に存在してしまっている。
「俺は過去のことは振り返らない男だからな」
そう言うと、ヴァリアントはちゃんと納得はしていない様子だったが、俺の雰囲気を察して理解してくれたらしい。
それからは、昔のことをヴァリアントが一方的に話しながら、俺はそんなこともあったな~みたいな感情になりながら聞いていた。
面白い、続きが気になる方はブックマーク、評価★★★★★、感想をお願いします




