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輪の剣③

ランドと共にダノンに乗ってシアフィスの森に入ったマル―シャはリアがついてきているか何度も後ろを確認しながら薄暗い不気味なシアフィスの森の中に視線を泳がせじっとだまって恐怖にたえていた。


「マルーシャ!そんなに震えるほど怖いんだったら目を閉じていたらどうだ。どうせ俺の服を掴んでいるんだし落ちないだろうが」


ランドは震えながらも視線をキョロキョロさせているマルーシャに含み笑いを浮かべながら言った。するとマルーシャは半分叫び声のような声で言い返した。


「目をつむると余計怖いのよ! いろんな音が聞こえて不気味じゃない!」

「そんなもんか?」

ランドは理解できないといった様子でため息だけつくと、再び意識を集中させ方位磁石の羅針盤の指し示す方向に馬を走らせ、何度も道をそれ、右や左と曲がりくねりながら進むので、さすがのランドも来た道は既に分からなくなっていた。


ラールノダの墓地は以前来たことがあったがこんなにいりくんでいなかったような気がするので、ランド自体どこに向っているのか少々不安になってきていた。


その時、方位磁石に埋め込んでいた緑の石が今度は逆の外側に向かって光を放ち始めた。その光が指し示す場所を目をこすりながら暗闇に視点を合わせると今までとは違い、少し先が開けた場所があるらしかった。


ランドはその場所に馬を急がせた。そしてようやく光のさす場所に着くと、羅針盤の磁針がぐるぐる回り始めた。ランドは馬からおりマルーシャをおろした。


ランドは辺りを見回しながら周辺の様子を確認した。夜明けが近づいてきているせいかぼんやりと周辺の様子が見えてきていた。ランド達がたどり着いた場所は地面には石が隙間なく敷き詰められ、訪れる人もいないはずにもかかわらず草一つ生えていなかった。ランドは辺りをしきりに気にしている。


「どうしたの?」

「いや、どうも嫌な気配がするんだが…風のせいか定まらない」

「ここがお墓だからじゃないの? それよりここがランドが以前言っていたお墓なの?」


「いや、俺が知っている墓はここじゃない。ここははじめてだ。地図では神官の第一の祈りの塔と記してあった場所だと思うんだが…この場所のどこかに輪の剣が隠されているかもしれないな」


「ランド、さっきからその輪の剣ってなんなの?」

マルーシャの質問に答えようとせず目の前の建物を真剣に眺めているランドにマルーシャは大きなため息をつきながら目の前の建築物を眺めながら言った。


「こんな祈りの塔なんてみたことないわね。入り口が見当たらないし、ただの真四角い箱みたいじゃない。あっでも、なんだか天井の部分が少しせり出ている感じね。かといってとても頑丈そうなつくりだから簡単に外から壊せそうにないし…不思議な建物ね。ラールシアにある祈りの塔といったらもっと先が尖っているじゃない、天の神に祈りを捧げるというより地に祈りを捧げているって感じね。なんだかこっちに傾いている感じがしない?」


「お前の言う通りかもしれないな、ラールノダの神は天と地に二人いたのかもな」

「天と地に神が…」


ランドの言葉を聞きながらマルーシャは最後のランドの言葉が耳にこびりついていた。マルーシャは何度も同じ言葉をつぶやきながら、その建物の全貌が見られる場所でひざまずき、両手を胸のところで組んで頭を下げて祈りを捧げた。祈り終わるとマルーシャは立ち上がり、その建物を見上げながらさらに近づいた。すると建物の前に丸い見事な円形の石が地面にのめり込む形で置かれているのに気づいた。


「この丸い石すごいツルツルしているわ。これだけの大きな石をこんな形にするのってどうやるのかしらね」


「マルーシャ! むやみにあちこち触るな! どんな仕掛けがあるかわからないんだぞ」

そう言ってランドがマルーシャをその場から自分の方に戻るように促そうした時、建物と球体の間にいたマルーシャが何かにつまずきおもいっきりその球体に両手がふれマルーシャの全体重が球体に集中してしまった。すると地面にめり込んでいたはずの球体がわずかにずれてその球体が揺れ動いた。マルーシャはビックリして叫び声をあげながらその球体にしがみ付いた。


「きゃあ! どうしてこの石だけ地面から出ているのよ! それにこの丸い玉、こんなに簡単に動くってあり? 心臓が止まるかと思っちゃったじゃない」


マルーシャは今つまずいた石をみながら体制を整え立ち上がった。確かに女のマルーシャの力でも簡単に動かせるぐらいにその石はただそこに置かれているだけで固定されていないようだった。


「たくっ! だから言ったんだ。むやみに触ると何が起こるかわからないんだぞ。きっとここは何か目的があって作られた建物なんだろう。変な仕掛けが作動しないうちにさがってろ! マルーシャが触るといつも何か問題がおこっちまうからな。もしかしたらもう何かの仕掛けが作動したかもしれないぞ」


そう言うとランドはマルーシャを少し球体から離れたところに非難させた。マルーシャは反論しようとしたが何も言い返せなかった。ランドはそんなマルーシャをため息交じりに睨みつけてから一人球体に近づいた。ランドはマルーシャがしたように球体を押してみた。確かに微かに動く気配があった。


そこでランドは力まかせにその球体を押してみた。するとなんとその球体が動き数メートル離れた場所まで転がって行ってしまった。


ランドはかがんでそのくぼんだ場所をみると全体は丸く球体の型をしているのに、底の中央部分だけが変な形のくぼみが出来ていた。そのくぼみは意外にも小さく親指ぐらいの太さと深さのものだった。


ランドが覗き込んでいると、マルーシャも恐る恐る近づきランドの後ろからそのくぼみを覗き込んだ。


「ねえそのくぼみなんだかこれに似てるわね」

マルーシャはそう言いながら首にかけていた砂時計を右手で握りしめて覗き込んだ。ランドはハッとしてマルーシャの方に向き直った。


「マルーシャ…それを貸してみろ」

マルーシャは首から砂時計を外しランドに渡した。マルーシャから受け取ったランドは砂時計の赤い石の部分を上にしてそのくぼみに差し込んだ。


「ピッタリみたいね」

二人は暫く様子を伺っていたが何も起こる気配がなかった。


「ねえランド、何も起こらないわね。まだ何か足りないのかしら?」

ランドは球体の部分や周りの石畳も念入りに手で触りだした。するとマルーシャがさっきつまづいた石の部分が周りの石と微妙にずれていることに気がついた。その石の部分だけ少し盛り上がっていたのだ。


ランドはその丸い形の平らな石を触ってみると微妙にぐらつき、石の周りの土がその部分だけ柔らかく隙間の土質が違っているのに気づいた。ランドは短剣をその土に突き刺し石を押し出してみると簡単に石がはずれ、石の下は筒状の空洞になっておりその真下にも石が敷き詰められていたが、ここにも真下の中央辺りに浅い深さの丸いくぼみがあった。


その形をみて方位磁石だと直感したランドは首から方位磁石をはずし、そこに埋め込んでみた。


ふたを開けたまま埋め込もうとしたがはいらなかったので閉じてそのくぼみに方位磁石がぴったり収まる位置を何度か試しながら差し込んだ。だがその位置は方位磁石の向きが正反対の向きで、蓋を開けると建物に背を向ける形になっていたのが気になったランドはその方位磁石を押しながら動くか回そうとしたが動きそうで動かなかった。


「ねえランド、それって何か光が関係しているんじゃないの? ほら、あの岩のところで火をこっちの砂時計に当てたら光だしたじゃない。それと同じで何か光をあてないと動かない仕掛けになってるんじゃないの?」


マルーシャの何気なしに言った言葉にランドは何かをひらめいたのか空を見上げた。


「光、光か…そうか朝日だ。朝日が赤の石に当たるとこいつがスイッチの役目をしてこっちも動くのかもしれないな。光が消えて時の砂が落ちるその瞬間に赤と緑が指し示す光のその先を手にいれよ。わかったぞ、こっちの砂時計は先に差し込むんじゃなくて、朝日が差し込んでこの赤い石に集まった瞬間に赤の石を逆さまにしてそこに差し込むんだ。赤の石に砂が落ちきると、それがスイッチになってこっちの方位磁石が連動してどちらかに動くようになっているんだ。その時ここについている赤と緑の目がどこかをさす光を放つって仕掛けか…いったい誰がこんな仕掛けを作ったのか会ってみたいもんだぜまったく」


ランドは大きな建物を見渡し空を仰ぎながら言った。

「きっとそうよ。だめもとでやってみましょう。もうすぐ夜明けでしょう。どこからか光が入ってくるんじゃないかしら」

マルーシャはそう言うと、埋め込んだ砂時計をまた取り出し石を上になるように持ち、夜明けを待った。暫く静寂の時が流れ、朝日が昇るのを二人は無言で待った。


やがて次第に周囲が明るくなり、建物の頭上辺りから光が差し込んできた。

マルーシャはすかさずその朝日に砂時計の赤い石をかざすと赤い石は真っ赤な光を放ちだした。


「マルーシャ今だ!」

ランドの言葉でマルーシャはその砂時計の赤い石の部分を逆さまにしてさっきの場所に差し込んだ。しばらくして砂が下に落ちきると同時にゴーッという音と共にその砂時計がさらに奥にのめり込んでいった。


するとランドの座っている辺りが微かに揺れだし、ランドがにぎっていた方位磁石が軽くなり右側に動き出した。ふたの上の部分がちょうど建物のある方角で止まった時、方位磁石の蓋の目の部分の赤と緑の石が光りだした。その光は空中で交差し絡まりあい、一筋の光になり右側の石の建物の上の部分を指し示した。そしてすぐ光は消えてしまった。


ランドは急いで方位磁石を取り出し首にかけると、その光が指し示した場所を確認する為、建物の天井部分に飛び乗った。マルーシャも砂時計を取り出し首にかけあわててそこを離れ、ランドが登っている建物の真下まで駆け寄った。


ランドは石造りの低い塔の天井部分の光が指し示した場所を念入りに手で探り、周囲と違うところがないかチェックをしていると、同じ間隔で敷き詰められている石の一つだけ微妙に違う石があることに気がついた。ランドは、腰の短剣でその石の周りの粘土状の土を突き刺し力任せにその石を押し上げた。


すると中にはねずみ色の粘土状の土のようなものがあるだけだが、さわると意外にもやわらかく何か下にありそうな感触だった。その真ん中には丸い小さな穴が一つ開いていた。それはちょうど方位磁石の上の部分にある緑の石が埋め込まれているのと同じ大きさのようだった。


ランドは首の方位磁石を外すと、石を下にするように持ちその穴にはめ込んでみた。するとなんとねじでも回すかのようにピッタリとはまった。暫く様子を伺っていたが、ランドは慎重に方位磁石を握りながらそれを持ち上げてみた。すると意外にも周囲の土は砂のように軽くなり何かを持ち上げることができた。


やがてゆっくりと剣の姿があらわになってきた。ランドはその剣を空に向かって突き上げると太陽に照らされて光輝いた。持ち手の一番下には方位磁石がピッタリと緑の石で繋がっていた。


その剣も持ち手は水晶でできているのか透き通るような透明感だった。そしてその鞘にはなにやら文字が刻まれていた。ランドは暫く言葉を失っていた。


すると下から突然マルーシャの叫び声が響いた。

ランドがあわてて下をのぞくと、なんとそこにはマルーシャを取り囲むようにして数人の黒ずくめの男達が立っておりマルーシャの首には剣が突き刺さっていた。ランドはとっさに自分の腰につけていた剣をさやごとはずすと、見つけたばかりの輪の剣を腰につけなおし、自分の剣を鞘からはずすとその場から飛び降りようとした。その瞬間聞き覚えのある声が響いた。


「どうやら剣を取り出せたようだな。胸騒ぎがして来てみて正解だったようだ。王女が一緒のところをみると、やはり王妃が宝玉と地図を持っていたようだな」


ランドはその声に飛び降りるのを止め、手に入れたばかりの宝剣をギュッと握り締め、声の主を睨みつけた。


「貴様! よくも俺の前に姿を表せられたもんだ」

「そのセリフをこの状況でよくはけるもんだな、誰のおかげでバルデ城に入れたと思っているんだ。感謝の言葉をもらってもいいぐらいだがな」


「貴様が俺の命を狙ったことでチャラなんじゃねえのか」


「フッ! 貴様の運の強さにはほとほと感心するね、だがお前のその運もここまでのようだな。さあ、この王女の命と引き換えだ。その剣をこちらに渡してもらおう。お前の腰の剣と一緒にな」


「あなたはいったい誰なの!」

マルーシャは突然現れた男達に驚きながらも、不思議と恐怖は感じなかった。それよりもランドと話をしている隣にいる男のことが気になって仕方がなかった。その男は顔にも黒い布を覆っていて、目の部分しかだしていなかった。


マルーシャの目の前にいるその男の瞳は何処かであったことがあるような気がしてならなかった。マルーシャは必死で思い起こそうとしているところに突然ランドの馬のダノンが男達が立っている場所に突進してきた。


「うわっ!」

男達が一瞬ひるんだ隙にランドは建物からダノンの上に飛びおり、マルーシャに突きつけられている剣を払い落とすと、馬上からマルーシャを抱え込むようにしてその場を駆け抜けた。男達が追いかけようとした時、ランドと話していた男が静止した。

 

「しかしジイール様! この場所を長年探し求めてようやく手にはいるところでしたのに」

「追いかけても無駄だ。しかし、馬も味方につけているとは…相変わらず運だけはいいようだ。少しの間だけ輪の剣を手にした喜びを味わわせてやるさ。これでようやく輪の剣もこの世に戻ってきたことだしな。慌てることはない、このぐらいのハプニングがあったほうが面白いってもんだ。奪い取るチャンスならこの先いくらでもある。あいつがラミド城にいる限りな…ふははははっ!」


ジイールは不気味な笑いを響かせながら塔を後にした。





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