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宴とマル―シャのけじめ②

マルーシャが大広間に着くと、暫くしてトルベル国王がスエル総帥と側近数名を引き連れて現れた。

トルベル国王はマルーシャの姿をみて微笑むと、大きく頷き扉の前で待っていた彼女に話かけた。


「マルーシャス、そのような姿をしているとスーリアの若い頃をみているようだ。どうじゃ、たまには一緒に並んで歩いてはくれぬか?」

そう言ってトルベル国王は自分の左手を腰に当ててマルーシャに微笑みかけた。


「本当ですかお父様、今夜はラールシアの勝利のお祝いですもの喜んでお供いたしますわ」

そう言うとマルーシャは自分の右腕をトルベル国王の腕にからませた。


その場にいたエセルと別の召使が扉を押し開けた。大広間ではにぎやかな音楽が奏でられ、既に人が大勢集まっていた。今夜の宴は立食形式なので皆思い思いの場所で会話を楽しんでいるようだったが、国王の入室でいっせいに大広間は静まり返った。


トルベル国王はマルーシャを伴い、奥の王座の前に立ち、そしてマルーシャはその横の王女の席の前に立った。ルベルト国王は大広間の全体を見回し話しはじめた。


「まず最初に、こたびの戦で犠牲になった全ての者達に哀悼の意を表して黙祷」

黙祷の後、トルベル国王は再び話しはじめた。


「本日葬礼の儀も滞りなく終了し、ここに戦争の終結を宣言する。今宵は無礼講である。皆も思う存分楽しんでくれたまえ。さあ音楽を、宴のはじまりだ」


トルベル国王の合図でテンポのいい音楽が鳴り響き、人々はまたにぎやかに会話をはじめた。トルベル国王が王座に座るのを確認してからマルーシャも自分の席に腰をかけた。


やがて宴も中盤になると、みんなそれぞれのパートナーと踊りだした。マルーシャもダンスは好きな方だったが、ここにいる貴族のお坊ちゃま達とは死んでも踊りたくなかった。笑顔で誘いにくる貴族達を断っていると突然隣に座っていたトルベル国王が立ち上がった。


「マルーシャスよ、一曲どうだね」

マルーシャは驚いて顔を上げると、トルベル国王が手を差し出していた。

マルーシャは笑顔でその手を取り、貴族達に混ざりダンスをはじめた。


何年かぶりの父トルベル国王とのダンスだったがまじかでみる父の顔にはしわが刻み込まれ、ずいぶん年をとったように感じられ、マルーシャは複雑な気分になってしまった。


「お父様、長い間私のわがままに目をつむってくださってありがとうございました。これからは私もこの国の為に公務をこなしますわ」


父親の顔をみるなり、マルーシャらしからぬことを突然言いだした娘に、トルベル国王は笑顔でマルーシャの方に視線を落とした。


「マルーシャス、そなたの父はそんなに老けたか?」

「えっ! いやですわお父様、お父様はまだ十分お若いですわよ。でも…なぜ私がそう感じたとお思いになるのですか?」


マルーシャは驚いてトルベル国王の顔を見た。トルベル国王はマルーシャの顔を覗き込みながら微笑んで答えた。


「マルーシャス、そなたは顔にでるからの。心配せずともよい。そなた一人を残してまだまだ死んだりはせんよ。そなたはそなたのやりたいようにこれからもすればよい。つまらぬ公務はわたしだけで十分こなせるからの。それに…今さら周りのことを気にするそなたでもあるまい」


「いいえお父様。これからはきちんと公務を果たしますわ。これは私自身が決意したことなのです。ラールシアを変えるにはまず私自身が変わらなくてわ。これからはお母様のような女性になれるように頑張るつもりですわ。すぐには無理でしょうけれど…少しずつ頑張るつもりです。ですからご安心ください。もうお父様一人に押し付けたりはいたしませんわ」


マルーシャはトルベル国王の顔を見上げながら可愛く舌を出してはにかんでみせた。


「わたしのかわいい宝物も知らない内に大人になってしまったのだな、少々さみしい気もするのう。マルーシャスよ、たまには可愛い子供の顔もみせておくれ」


「お父様といる時はいつまでもいたずら好きのマルーシャスのままですわ」

そう言うと、軽くトルベル国王の足を踏みダンスを中断させ、可愛くウィンクしてみせた。


「あらっ…ごめんなさいお父様、なんだかわたくし少し疲れてきたようですわ。先に部屋に戻らせていただいてもよろしいかしら?」


マルーシャは大げさによろめきながらトルベル国王にしがみ付き少し大きな声で言った。


「おおそれは大変じゃ! さあさあ、ここはもうよいから早く部屋に戻って休みなさい」


トルベル国王はオオバーに心配してみせ、周りに王女は気分が優れないから先に自室に戻るらしいとしらしめた。そして娘の体を気遣うふりをしてみせながらマルーシャの耳元で小声で囁いた。


「気分がよくなったら地下食堂ではじまる宴会には少し顔をだしなさい」

トルベル王はマルーシャにウインクしてみせた。


「お父様大好き!」

マルーシャはもう一度トルベル国王にしがみ付き小さな声で言った。トルベル国王は軽く笑みを浮かべるとエセルを呼び寄せ、マルーシャを部屋まで送り届けるように命じた。

 


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