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フツ王の娘

その頃、バルデ城では夜も深まろうというのにいたるところでたいまつが炊かれ、かなりの明るさで城内をのいたる場所を照らし出していた。


武装した兵士達も昼間とは違いきびきびと城内を巡回して回っていた。

そんな城内の様子を一望できる部屋の手前の廊下には王女らしき女性と若い兵士が歩きながら話していた。


「ノア―ヌ様、どうかお考え直してくださいませ。今の王には何を申し上げてもお聞き入れになってくださるとは思えません。姫様に何かございましたら大変です」


「わかっているわロム、でもこれ以上戦いが続けばもっと餓死者がでるわ。お父様は城外へお出になられないからわからないのです。あなたも知っているでしょう。これ以上長引けばこの冬はこせない人達が今よりも増えるわ。もうみんな限界をこえているのよ。せめてこの冬の人々の税を減らしてくださるようお願いしてみるつもりよ。あなたはここにいなさい」


そう言うとノア―ヌ王女はフツ王がいる部屋の前で立ち止まり、扉をノックした。


「お父様お話があります」

そう言うとノア―ヌ王女は一人フツ王の部屋に入っていった。


「お父様、もうこんな醜い争いはおやめくださいませ。これ以上大切な国民の命を犠牲にしてまでラールシアと戦い続けるのに何の意味があるというのですか。国中食糧難で人々の生活は限界にきています。このままでは、この国の民の大半が命を落としてしまいます。どうかせめて人々の税を軽くしてあげてください。このままラールシアに勝利しても、そこに生きる民がいなくては国はなりたちません。お父様、どうか今一度、お考えくださいませ。この国に生きる民の為に」


部屋でワインを飲みながら外の様子を眺めていたフツ王にノアーヌ王女は近づきひざまずいて懇願した。

しかしそんなノア―ヌ王女の必死の懇願を無視するかのようにノア―ヌ王女を払いのけ、冷たい視線をノアーヌ王女に向け言い放った。


「何をたわけたことを言っておる。民のためだと、この国の民が余の国の為に命をかけるのは当たり前のことではないか。フィスノダ国は必ず勝つ。この余がいる限りフィスノダ国に敗北の文字はない。また、ギロダ国から大量の兵士達を雇う手はずになっておるから、税を引き下げるなど論外だ。この国の人間など、やせ細ったヒョロヒョロばかりで戦闘にはまったく役立たずではないか、税金も納められない無能者は死んだほうがましだ、死ねば土地が空いてちょうどいいではないか」


「お父様なんということを! お願いいたします。どうかお考え直してくださいませ。もうこれ以上の負担を人々にかしてはこの国は滅びてしまいます」


「民だと? 人間なら他から集めてくればいいだけのことではないか。土地をくれてやるといえばいくらでも集まってくる。この国に余がいればこの国は滅びたりはせぬ! ええーい! 女のお前ごときが口を挟むことではない! これ以上逆らうのならばたとえ娘だとて容赦はせぬぞ! 誰か! 誰かおらぬのか!」


フツ王はノアーヌ王女の腕を掴むと扉までひっぱっていき、扉を開け放つと、廊下に彼女を突き飛ばした。そして廊下の前にいたロムに気づくと言い放った。


「こやつを地下牢に閉じ込めておけ!」

「しかし、ノアーヌ王女様を地下牢へとは…」

ためらうロムにフツ王は自分の腰の剣を抜きロムとノアーヌ王女に突きつけた。


「ノアーヌよ、お前に選択しを与えてやろう。今すぐこやつ共々首をはねられるか。フィスノダが勝利するまで地下牢に入っているかどちらかを選べ」


「今すぐ王女様を地下牢にお連れいたします」

ロムはあわててノアーヌ王女の顔につきつけられていた剣からノアーヌ王女をはなし、青ざめているノアーヌ王女を助け起こしながらフツ王に一礼し彼女を支えながら地下牢に向かって歩き出した。


「お父様…」

部屋を後にしながらノアーヌ王女はもう一度振り向いたが既にフツ王は部屋に戻っていた。

ロムはノアーヌ王女を支えながら話しかけた。


「ノアーヌ様大丈夫ですか? ですから話しても無駄だと申し上げたではありませんか」


「ロム…お父様にはわたくしの言葉など耳にはいらないのですね。わたくしはなんて無力なのでしょう」

打ちひしがれるノアーヌ王女にロムは小声で囁いた。


「ノアーヌ様お話があります。ひとまずこちらへ」

そう言うとロムは周囲に人がいないのを確認し、王女をある部屋の一室につれていった。そこにはノアーヌ専属の護衛兵の四人も控えていた。全員ノアーヌ王女が入ってくるといっせいに跪いた。


「あなたたち、こんなところに集まってどうしたというのです」

不思議がるノアーヌ王女にロムは黙って王女を部屋の奥に導くと、外に誰もいないことを確認しそっと扉を閉め、ノアーヌ王女の前で跪きながら話始めた。


「ノアーヌ様、実は昨日、ノアーヌ様が無くされたものを探しにルアボ村のはずれに再び行っていたジルが旅の商人風の姿をしている者達を大勢みかけたようなのです。旅の商人の服装をしていたらしいのですが、話し方から推測してラールシア人ではないかと申しております。恐らく、ラールシア軍ではないかと…もし敵なら見つかっていけないと、すぐ引き返してきたらしくお探しのものを発見することはできなかったようなのですが」


「そう、あれを落としてしまった私がいけないのです。あきらめるしかありませんね。けれど、ラールシア軍が迫ってきているというのは本当なのですかジル」


ノアーヌ王女はジルが頷くのを確認すると、再びロムに視線を移した。するとロムはノアーヌ王女の顔を見上げながら小声で話しを続けた。


「この季節、旅の商人が集団でやってくるのは不自然です。おそらく彼らはラールシア軍に間違いないと思います。ノアーヌ様、おそらく今夜あたりこの城に攻めてまいります。最初はどこかの部屋に非難していただこうかと考えていたのですが、王のご命令通りノアーヌ様はここは地下牢に避難なされた方が一番安全かと」


「それではここはもうすぐ戦場になるのですね。では急いでお父様に知らせて使用人達や都の住人たちだけでも城から避難させなくては…」


あわてて部屋をでようとしたノアーヌ王女をロムが引き止めた。


「おやめください。王に知れたら使用人も王の盾にされかねません。さっきの言葉でもおわかりでしょう。国民の命などなんとも思ってはおりません。使用人達は全てノアーヌ様の味方です。今からでは城をでることはできませんのでこれからの時間帯は使用人の姿を見なくても怪しむ兵士はいないでしょう。夜が深まったら朝まで安全なところにそれぞれ隠れているようにと伝えておきましたのでご安心ください。それに王に雇われているギロダ人以外のフィスノダ人の兵士達にも、もし万が一ラールシア軍がこの城に攻めてきた場合の行動計画は伝えてあります。我々フィスノダ人は全て姫様のご意志に従うと申しておりました。すでに勝敗はついているのです。もうフィスノダ国は終わりです」


ロムの言葉にノアーヌ王女は震える両手を胸のところでくみ神に祈った。そして静かに話しだした。

「それならなおのことわたくしが地下牢に隠れているわけにはいきません。フィスノダ国を立て直すにはフィスノダ国の王家の一族は一度消えなくては。クーデターを引き起こした父の娘であるわたくしも同様です。ラールシア軍も王女のわたくしの姿が見えなくてはわたくしを捜して隠れている使用人達がみつかってしまうかもしれません」


「ノアーヌ様! あなた様はこのフィスノダ国の民にとって最後の心のよりどころなのです。あなた様まで命を落としてはこの国は立ち直れません。たとえフィスノダ国が負けラールシア国の領土になろうとも、あなた様が生き続ける限りフィスノダ国の心はなくなりません。あなた様はどんなことをしても生き続けなくてはいけないのです。王が万が一お亡くなりになっても、あなた様が生きていれば、我が国民はあなた様のご判断に従い無条件降伏を受け入れるでしょう。強制労働を強いられている者達もすぐ開放してあげられます。ノアーヌ様、決断の時です」


ロムが言うと、五人は立ち上がりノアーヌ王女の前に一列に整列し頭を下げた。


「我等五人はこの命に代えましてもノアーヌ様をお守りいたします。ですがここはひとまず地下牢にお隠れください。我が祖国フィスノダ国の未来のために…」


「わかりました。それが神のおぼしめしならばしたがいましょう。神がお決めになるその瞬間まで、この命神に委ねましょう。あなた達もこの城で何が起ころうともその勝敗がつくまでわたくしと運命を共にしてくれますか?」


「我等五人、護衛兵としてジャラル様からノアーヌ様と共にこの城に留まることを命じられたあの日から、ノアーヌ様のためならば、いつでもこの命捨てる覚悟はできております」


ノアーヌ王女は五人の護衛兵と共に静かに部屋をでて地下牢へと向かって行った。


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