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出陣

それから三日後、ラールシア中に散らばっていた兵士たちの中から優秀な剣士たちが続々とモビレの砦に集結してきた。


砦の中の広場では集まった兵士たちがそれぞれ出発の準備を開始していた。

だが全員旅の商人を装っていた。それは商人を装ってバルデ城を目指す為でもあった。


それぞれ五・六人づつのグループに別れ、いくつかのグループは先にそれぞれの荷車に武器や食材などを積み、ルアボの村を目指すことになった。


そして、ランドやマル―シャと言った他のグループは一端シアフィスの森に向かいラールシア最大の港があるドンバ港まで行き、そこで船に乗り込み、細長く入り組んだシマモ湾をバルジ国の商船を装い、バルジ国側を船で西に航行し、国境沿いにあるバルジ国のタビュー港に行き、そこから国境を越えてフィスノダ国に入りルアボの村で落ち合うことで決定した。


このルアボ村は今は廃村になっているらしく、潜伏するにはうってつけな場所のようだ。

ルアボ村はドノーエ大陸の東側に北南に連なるルノーベ山脈の南の端にあり、その下はバルジ王国との国境に面している場所だった。


だがこのルアボ村から北に北上する道は二手に別れていて、一方は険しい道が山道が続き山の頂上付近にも村が点在していて、ランドが目指すバルデ城に近いサランの村に行くにはルアボの村から二日ぐらいはかかると予想された。


そしてもう一方は比較的低い位置に森がずっと続いていて人家はなくその森の先はフィスノダ国の都があるバルデの都があった。


しかし、この森は死の森として有名で、シアフィスの森同様、道からそれれば迷い正気を失うとされていた。またこの森にはフィスノダ国の王家の墓もどこかにあるとされていて、フィスノダ国の人間はこの森には立ち入ること自体禁止されていて人が誰も立ち入ることはしていなかった。


当初はシアフィスの森を抜けフィスノダ国の側の中央部分に広がるペルトウ平原を突っ切りフィスノダ国の最大の都のあるバルデ城を大群で攻め入る作戦を練っていたのだが、作戦の大幅変更に伴い、兵士の数も百人足らずと敵国の本城に攻め入るには少なすぎる人数で作戦が組まれ、人員の選出や作戦など、かなりの時間を有していたが全ての準備がようやく整った。



ランドがモビレの砦に来てから15日後、さまざまな情報が集まったと同時に、ラミド城にいるトルベル国王からランシェルドにバルデ城総攻撃の指揮をとるラールシア軍総指揮官の称号が与えられ、スエル総帥からラールシア軍の全てを指示できる権限が一時ランシェルドにゆだねるという書状が届いていた。


皆それぞれにこれから新たに始まる戦の準備に余念がなかった。

その頃ランドは部屋の一室の中で自分の剣を鞘から出してその剣の輝きを眺めながら物思いにふけっていた。


「ランドそろそろ準備はできたか?」

部屋をノックしながら開け放たれている部屋の扉の前にアルが既に旅支度を済ませ立っていた。


「ああ、外の様子はどうだ?」

背後からのアルの問いかけに、ランドはチラッと視線を向け答えた。


「そろそろ準備が整いそうだぞ、集合の合図をだしておくか?」

アルが答えるとランドはもう一度剣を眺めた。

「ああ、ところでマルーシャはもう出てきているのか?」

「ああ、ルカと何か話し込んでいたようだが、呼んでこようか?」

「いや、俺もすぐ行くと伝えておいてくれ」


落ち着いた口調で答えると、出していた剣を鞘に戻し立ち上がった。外はようやく太陽がさし始め、冷たい風が頬をなでる。

「よし!」


ランドは両手で顔を叩き自分を奮いたたせた。そして大勢の兵士達が集まる方へゆっくりとした足取りで歩きだした。


ランドの姿が見えると、ざわついていた声がいっせいにやみ、皆姿勢を正し視線をランドに向けていた。


ランドが兵士達の先頭に立つと、隣にマルーシャが立ち、その後ろにアルとルカが並んで立った。一瞬緊迫した空気が流れランドが口を開いた。


「まず最初に言っておくことがある。皆もすでに知っていると思うが、スーリア王妃様が何者かにより暗殺されてお亡くなりになられた。亡き王妃様は最後まで祖国ラールシアのことを心配しておられた。王妃様の思いに報いるためにも、フィスノダ国を必ず倒すぞ! これから我々はバルデ城を目指す。各自皆気を引き締めて挑んでほしい。俺からは以上だ」


ランドがしゃべり終わると、今度はマルーシャがランドの一歩前に歩み出た。

兵士達が少しざわめきだした。マルーシャがこういう場面で話すことは今まで一度もなかったからだ。


「今日は特別に出発前に少し時間をもらいました。みなさん、私達はこれからラールシアのために、そしてなにより、自分達の未来を明日につなげるためにフィスノダ国のフツ王を倒しに行くということをもう一度頭にいれておいてください。これまでラールシアのために命を落としていった多くの仲間達のためにも、私達は必ず勝利を掴んで一刻も早く祖国に戻れるように頑張りましょう。みんな! 最後のふんばりどころよ。さあ! 共に戦いましょう! 我がラールシアに栄光あれ!」


「マルーシャス様バンザーイ、ラールシアに栄光を!」


マルーシャの言葉に兵士達はいっせいに歓声をあげ、各々の腰に付けていた剣を空に向かって突き上げた。

ランドはアルやルカと顔を見合わせて頷きあった。


そしてランドを先頭にマルーシャやアルとルカ達はそれぞれの馬にまたがりランドが右手を振り上げた。兵士達もいっせいに配置につき、ランドの右手に注目した。ランドの腕が振り下ろされたと同時に、いっせいに大地を踏みならす音が辺りにとどろいた。


そして、順次予定通りに時間差でルアボ村を目指し出発する兵士とシアフィスの森を目指すグループとにわかれそれぞれ出発して行った。

決戦の時が迫っていた。


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