シアフィスの森②
「ランド! 私の言葉が聞こえなかったの?」
マルーシャは視線をキョロキョロさせながらランドの体を揺さぶった。
「はあ…城でもう少し体を休めてからでもよかったんだが、自分の命を守ることばかりにやっきになっているお偉いさん達に捕まりそうだったからな。それにこの近くには聖域がある。万が一敵が来ていたら教えてくれるだろうから眠るのには一番安全なんだよ。それに休憩をとりながらきているとはいえ朝からだからな、そろそろダノンとリアにも休ませてやらないとかわいそうだろ」
ランドは溜息をつくと、まぶたをあけ両手を頭の後ろに回すと、空を眺めながら静かに答えた。
「それはそうだけれど…聖域って何のことよ? ここなんだかへんな気配を感じない?」
マルーシャは周りの木々の向こうに視線を向けながら言い返した。
だがランドからは何も返事が返ってこず、ランドの言葉を待っていたマルーシャだったがランドが目をつむっているのに気付き彼のそばに駆け寄り彼の体をさらに揺すった。
「ねえったら! ランド?」
「たくっ…行きも夜中に通っただろうが…」
「行きは頭が混乱していたから変な気配に気をとられることもなかったのよ。ねえランド、休むなら砦に戻ってから休めばいいでしょう」
マルーシャはしつこくランドに食い下がった。
「あの気配なら心配いらねえよ。あいつらは俺達には危害を加えないから安心してお前も少し寝れ」
「それじゃあ…やっぱり何かいるのね? ランドはあれが何か知っているの?」
答えになっていないランドの返事に苛立ちを爆発させながらよりいっそうランドの体を揺さぶり続けるマルーシャに根負けしたランドが面倒くさそうに起き上がった。
「昔一度行ったきりだから正確な場所までははっきりとは思い出せないんだが、確かこの付近にラールノダ王国時代の墓があったはずだ。シアフィスの森の中でも、特にこの抜け道に関しては、道を外れず通過する分には誰であっても通過できるらしいが、こう道を外れるとそこに眠る霊達によって何をされるかわからないといろいろ噂のある場所だ。だが、俺の勘だが、俺達にはやつらは何もしないはずだ。それに、ここにいる限り、何が襲ってきても守ってくれるはずだ。やつらは争いを嫌うからな、殺気を放ってこの森に夜侵入する者には容赦しないはずだからこんな最強の味方はいないぜ。だから怖がる必要はない。安心して少し寝ることだな。それに実際のところ、ずっと寝てないからなそろそろ限界なんだよ」
それだけ言うとランドはまた横になり目を閉じてしまった。
マルーシャはランドがなぜラールノダ王国時代の墓がある場所を知っているのか気にはなったのだがそれ以上に実際のところランドと同じぐらい疲れていた。
仕方なくマルーシャはランドの隣に横になると、ランドが渡してくれた毛布を横にし、ランドにもかけるとしっかりランドの服の一部を握りしめて目を閉じた。
今夜はさほど冷え込んではいないようだ。まだ気候がラールシア側なのだろうと眠い頭で考えていた。
疲れきっていた二人はしばし遥か遠い昔の先祖達の魂に包まれながら仮眠をとった。




