シアフィスの森①
太陽が西に傾きかけた頃、二人はドルタ平原の終盤辺りまできていた。
目指す先には北のから南に続く広大な広さのシアフィスの森も目の前まで迫ってきていた。
この森を抜けるといよいよペルトウ平原が見えてくる。
そして二人はその森を抜けて直ぐの場所にあるモビレの砦に向かっていた。
しかしこの森を抜けるには最短ルートをかけ抜けても一晩かかるほど深い森だった。
「マルーシャ大丈夫か?」
ランドは少し遅れ気味のマルーシャの様子を気遣いながら馬のスピードを緩めた。
「えっええ大丈夫よ」
「マルーシャ、シアフィスの森まで頑張れるか?」
ランドは森を指差しながらマルーシャの顔色を伺った。
「大丈夫よ。どうしてもがまんできなくなったらすぐに言うわ」
正直、疲れが限界に近づいていた。
マルーシャはこらえようのない睡魔と格闘していた。
マルーシャはレアを一端止めると両手で自分の頬をパーンと叩き、眠気を追いだした。
そして急いでランドのところまで馬を走らせた。
「ごめんなさい。急ぎましょう」
マルーシャはランドとあえて視線を合わさないようにしながら目の前に広がる広大なシアフィスの森に視線を移した。
それからはランドも時折何かいいたそうだったが何も言わず、マルーシャのスピードに合わるように無言で馬を走らせ続けた。
二人が森に入ったのはもう夕日が沈み、一番星が夜空に昇っていた。
薄暗い森の中を慎重に周囲を気にしながら進んで行った。
ちょうど、左右に少し開けた場所にきた時だった。
マルーシャの背筋に悪寒がはしった。
マルーシャはあわてて周りを見渡したが何も見えなかったので、気のせいかと溜息をつきもう一度周囲に視線を移した。
すると一瞬、まっすぐに連なる木々のあいまから何者かに見られているような視線を感じ、思わず身震いしマルーシャはランドから遅れないように馬を急がせた。
ランドの横にレアをつけると周りをみないようにしながら前だけに視線を向けていた。
そんなマルーシャの態度の変化に気付いたランドは周囲に視線を走らせ、マルーシャの態度の変化の真相を察知した。
「マルーシャ、もう少し行けばネルーミ川だ、橋を渡る前に少し道から逸れるが川辺にでてそこで休憩だ。こいつにも水を飲ませてやりたいしな。あそこなら安全なはずだ」
「わかったわ、じゃあそこまで急ぎましょう」
一刻も早くここを通り過ぎたかったマルーシャは反論することも忘れてランドの提案を承知した。
やがて少し行くと近くに川の流れる音が聞こえ目の前に大きな橋が見えてきた。
ランドは橋の手前で道にはなっていない川原に馬を操り道から少し逸れる形で、道のない川沿いにそって暫く馬を走らせた。
暫くすると、少しなだらかな坂道があらわれ、水の流れる場所まで馬でもくだれる場所にでた。
ランドは愛馬からおりると、馬につけていたサドルバッグの中から毛布を取り出すとそれを下に置き、馬を自由に放してやった。
馬たちは川の水を飲みに水辺にむかった。
だが水を飲むとすぐに二人の所まで戻ってきた。
ランドは周囲を見渡してから乾いた流木を集め火をおこし暖をとった。
辺りは月明かりと焚き火の炎でかなりの明るさだった。
「マルーシャ今夜はここで野宿だ。ここなら道からそれているし、橋からも死角になっていて見えないし、火をつけていれば動物も近寄ってこないだろう。お前もそろそろ限界だろう」
「えっ! のっ野宿するの? こっこんな場所で? でっでも…さっきの辺なんだか気味が悪かったし、こんなところでもし敵にみつかったら大変じゃない。道からそれると本当の道がわからなくなったりするっていうじゃない、今夜は月明りがあるからまださっきの道への戻り方はわかるわ。今ならまだ引き返せば大丈夫よ。私なら平気だから、少し休憩したらすぐ出発しましょうよ」
こんな薄気味悪い場所で眠るなんてごめんだとばかりに首を振っているマルーシャの言い分など聞く耳をもたないと言うかのように、ランドはお構いなしに薪の近くの平らになった巨大な大岩の上に横になって目をつぶってしまった。




