スーリア王妃の死④
マル―シャはどれだけその場所にいたのか、ふと赤の宝玉が暑くなるのを感じた。
すると、その赤い石からは突然光がどこかを指示しているかのように一筋の光が放ち始めた。
「何これ・・・」
マル―シャはそれに吸い寄せられるかのように光が差し示す場所に向かって歩きだした。
いくつかの塔の間をすり抜けたどりついた場所はラミド城の西の裏門に近い場所にある今は使われていない昔の礼拝堂がある建物だった。
ようやく雨も止んで月が空に輝きだしていたせいか建物の中は窓のすき間から月明かりが差し込んでかろうじて奥の礼拝堂のある扉に向かって歩いた。
マル―シャが旧礼拝堂の扉の前までつくと、ステンドガラスになっている扉の中からうすぼんやりとした炎の光がこぼれた。
「ここは使われていない場所よね。誰かいるのかしら」
マル―シャは足音を立てないようにそっと扉を少し押し開き中をのぞき込んだ。
マル―シャが中をのぞくとそこには礼拝堂の長椅子が真ん中を取り囲むかのようにへんな配置で並べられているだけで、祭壇の向こうには今はイクーリア神の像すらも置かれていなかった。
「こんな時にこんな場所に誰がいるのかしら?」
「なんだい誰かと思ったら女だてらに兵士になって戦場に言っているっていう王女様じゃないか、時間がないんだから邪魔だから入るんだったらとっとと入っておくれ」
「キャー!」
薄暗い通路の自分の背後から突然老婆の声が聞こえたものだからマル―シャは小さな悲鳴を上げてしまった。
右手にはろうそくたてを持ち左手には杖をついていた。
その老婆は驚いて固まっているマル―シャの横をすり抜けてスタスタと先に中に入って行った。
マル―シャは入り口で固まっていると中に入って前の祭壇の上にろうそくたてを置くと手招きしながら言った。
「早くお入り、もうすぐ始まるんだから」
そう言われてマル―シャは引き寄せられるように中に礼拝堂の中に入った。
よく見ると、中央には白い布に何か文字が書かれた布が置かれていてそれを取り囲むかのようにして椅子が円を描くように置かれているようだった。
「どこでもいいから大人しく座っておいで、この後何が起きても声をだすんじゃないよ」
「あの、あなたは確か以前スシュル湖でお会いしましたよね。どうしてここにいるのですか? 砲撃さわぎで城の出入りは禁止されているのではないんですか?」
「許可はとってるよ、今夜はここに天界への道が通るからね。ざんげをしようとやってきたんだよ。お前さんもざんげかい?」
「ざんげってなんですか? 天界への道ってどういう事ですか? イクーリア神にお会いしたいのでしたら、中央にある礼拝堂ではないのですか? もしくはスシュル湖か」
マル―シャは一つ前の椅子に座った老婆に向かって近づくでもなく少し後ろに腰かけてたずねた。
「スシュル湖は正解だが、中央の礼拝堂にはイクーリア神はいないね。ただの銅像があるだけさ」
「そんなことはありませんわ。神はいらっしゃるわ。そうここにもきっといらっしゃるとは思うけれど」
マル―シャがしゃべるとランナは軽くため息を吐き出した。
「はあ、そういえばよくしゃべる王女様だったね。後で説明してあげるから黙っておいで、お前さんのその手に持っている宝石も暑くなってきているだろ、時間が迫ってきている証拠だよ」
「どっどうしてそれを、この宝玉がこの場所を示したから来ただけなんです。いったい何が始まるのですか?」
質問ばかりするマル―シャに老婆はため息をついてふとまた扉に視線を向けると扉に向かってしゃべった。
「お前さんもよばれたんだろう、そんなとこに隠れていないでお入り」
その言葉でマル―シャもつられるように自分が入ってきた扉に視線を向けると、閉じられていた扉が開いてランドが入ってきた。
ランド自身も驚いている様子だった。
「マル―シャどうしてここにいるんだ?」
「お前さんも宝玉に呼び寄せられたんだろ? いいからおはいり、その辺に座っているんだよ。何が起きてもたちあがったり声を出すんじゃないよ。向こう側から何か語りかけてくるまではね」
ラシドも訳が分からないという様子だったが、中にいたのがマル―シャと薬師ランナフィナだとわかると言われた通り、素直に中に入り、マル―シャが座っている隣に腰をおろした。




