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いつもの日常①

「なあ、俺達このままで本当に強くなると思うか?」

「知るかよ!」


ランドは地面にあおむけになり、両手を頭の下にひきながら目をつむり、ぶっきら棒に答えた。


「はあああ・・・つまんねえなあ、毎日毎日、走り込みや基礎訓練ばっかりでよ、まったく剣術の訓練もないし、こんなので強くなると思うか?もう腹は減るし、足はパンパンになるし、やってらんねえよな」


ルカはランドの隣で同じくあおむけになりながら、自分の右足を天に向かってあげ、その足を両手でさすりながらぼやいた。


「このままこんなことばかり毎日続けていると、さすがに気が滅入ってくるな」


アルもかなり疲れている様子だった。

スシュル湖のさわぎから季節は夏に変わっていた。

連日の猛暑に加え、最近三人の訓練が本格化し、毎日、他の訓練兵と共に、基礎訓練のメニューが課され、基礎トレーニングに明け暮れていた。 


この数日、三人は休憩時間以外でも、ランニングの途中に城の塔の死角になっている場所に消えるように隠れては訓練をさぼるようになっていた。そして頃合いをみて、何もなかったかのようにもとの訓練に戻るという日々を過ごしていた。


「こらーお前ら! またさぼっているのか‼」


突然の言葉に驚いて横になっていたルカが飛び起きた。

だが、そこに立っていたのは、鼻をつまんで塔の影から顔をのぞかせているマルーシャの姿だった。


「マルーシャ、ビックリしたじゃねえかよー、お前、俺達に恨みでもあるのか?」


ルカが声の主がマルーシャだとわかると、また地面に寝転がった。


「あら、やましいことをしているって自覚はあるみたいね。本当に上官の人を呼んできてもいいのよ」


「できるもんならやってみろってんだ。こっちは言いたいことが山ほどあるんだ。こっちから会いたいもんだよ。毎日毎日、掲示版に訓練のメニューを張り出すだけで、ほったらかしの上官に会えるものなら会ってみたいもんだな」


ルカは今度はマルーシャの顔すら見ずに答えた。

ランドはルカ同様横になったままだが、アルは起き上がり、その場に座り、右足だけを折り曲げ、ひざに右ひじをのせながら、二人のやり取りを笑顔で聞いていた。


「マルーシャ、君も座りなよ、ここすごく気持ちがいいんだよ」


「アルは相変わらず優しいわね。あなたも大変ね、こんな奴らの付き合いをさせられちゃって」


「なんだとマルーシャ、その言い方だと、アルを無理やり俺達につきあわせているみたいじゃねえかよ。コイツだって自分の意思でさぼっているんだからな。そうだろアル」


ルカはアルの方に向かっていうと、アルは返事の代わりに苦笑いを浮かベて頭をかいた。


「マルーシャ、お前もどうせさぼりだろ! 人の事言えるかよ。告げ口できるもんならやってみろってんだ!」


「やさしいアルが嫌だっていえるはずないでしょ。いいわよルカ見てなさい」


そういうと、マルーシャはすぐさま姿を消すと、三人にも聞こえるような大きな声で誰かに向かって叫んだ。


「大変よ、ここに訓練をさぼって寝ている不届きものがいるわ!」

「あっ! あいつ本当に叫びやがった」


ルカがマルーシャの声に反応して飛び起きると、マルーシャが姿を消した方に走り出した。だが、ランドは起き上がろうともしないで目をつむったままだった。


ルカがマルーシャを追いかけていくと、マルーシャは面白そうにお腹を抱えて笑い転げていた。


「あっははは おっかしい! あなたのその焦った顔」

「こらー! いい加減にしないと本当に怒るぞ~‼」


そういうなりルカがマルーシャに向かって手に持っていた訓練で使う竹刀を左手で振り上げる真似をした。


「キャー、暴力反対よ!」


そう言って再び塔の角を曲がると、ルカもマルーシャを追いかけて塔の角を勢いよく曲がった。すると、突然何かに思いっきりぶつかってしまった。


「いって―なあ、前みろよな。ケガでもしたらどうすんだ」


ルカが誰かとも確認しないで、今ぶつかった相手に向かって怒鳴り散らした。そして、顔をなでながらぶつかった相手を睨みつけると、意外な人物に言葉をなくしてしまった。


ルカがぶつかった相手はルカにシーッというジェスチャーすると、ルカの左手が掴んでいた竹刀に手を伸ばすと、それを持ってマルーシャが今曲がった塔の角を忍び足で曲がって行った。   


あまりの出来事に呆然としていたルカだったが正気に戻り、その後をついていくと、ちょうどその人物が音もなく目をつむっているランドめがけてその竹刀を振りおろそうとしている所だった。


横にいたアルも驚きでその場で固まってしまっていた。

そして、竹刀が顔にあたるという瞬間、ランドが目を開き、その竹刀を両手で掴み反射的にその相手を睨みつけた。


だが、予想外の相手にさすがのランドも言葉をなくし、その場に体を起こすと固まってしまった。


「総帥が、あなたは同じ年頃の兵士の中でずば抜けて優秀だと言っていたけれど、まんざら嘘ではないようね」


その言葉に正気を取り戻したランドはその場に立ち上がった。

アルもランドの横に立ち、ルカもその人物の後ろで固まっていた。

その様子をおもしろそうに見守り、笑っているマルーシャがいた。


「王妃様」


「ランシェルド、こんな所で何をしているのですか? 訓練兵のみんななら、今の時間は城の外周を走っている時間じゃないかしら?」


三人の前にやってきたのはスーリア王妃だった。

ランドは罰が悪そうにしながら頭をかきながら下を向いてしまった。


ランドは何も言い訳をせずに頭をさげて、そのままスーリア王妃の横を通り過ぎようとしたその時、スーリア王妃がランドに向かって言った。


「残念だわ。あなたには期待していたのだけれど、普通の子供だったみたいね」


その言葉にランドは歩き出しているその足を止めると、キッとスーリア王妃を睨むような目を向けた。


「それはどういう意味でしょうか?」


「あら言葉通りの意味ですよ。今のあなた程度の兵士ならこのラ―ルシアにはたくさんいるという意味ですよ。その上努力もせずにさぼってばかりでは、先がしれているわね。今のあなたになら、このわたくしだって勝てそうだわ」


その言葉にランドはより一層スーリアに挑むような視線を向けた。


「お母様、剣術がお出来になるの?」


スーリア王妃の後ろにいたマルーシャが興奮した様子でスーリアの腕を掴んで見上げた。


「ええできますよ。そうだわランシェルド、私と勝負しましょうか。あなたが勝てば、総帥に、あなた方三人を特別に基礎訓練を免除して、普通の兵士と同じ訓練に混ざれるように掛け合ってあげますよ。但し、あなたが負ければ、今後一切さぼらずに与えられた訓練メニューをこなしなさい。どう私と勝負する?」


「いいのですか? この勝負、たとえ王妃様でも手加減はしませんよ」




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