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雨乞いの儀式①

マルーシャ達が村の広場まで戻ってくると、お昼前ということもあり、村はずれの泉の広場には多くの露店を目当てに人々が既に集まってきていた。

ラバンナおばあさんの家が見えてくると、家の前に置かれたテーブルの上にはまだたくさんのパンが並べられ、ラバンナが通りがかる人々相手にパンを売っていて、何人かの人だかりができていた。


「ラバンナおばあさん、ただいまあ~! 聖水汲んでこれたわよ~」


マルーシャは幌馬車から飛び降りるとラバンナお婆さんめがけて飛び込んで行った。


「ああ~ご無事で何よりです。本当に申し訳ありません。私が余計なことを申し上げたばかりに」

「あら、どうしてそんなことをいうの? 聖水はもともと私たちが探していたものよ」


マルーシャがラバンナと話していると、てっきりラバンナのパンを買いにきていたお客だとばかり思っていた人だかりが突然、マルーシャの前に駆け寄り、一斉にその場に土下座をしたのだ。

驚いているマルーシャと三人はラバンナの顔をみるとラバンナは申し訳なさそうに言った。


「姫様すみません。実は、姫様たちが出発なされた後、やっぱり心配で村長さんの家に相談に行ったんですよ。祭り前夜は徹夜で準備しているって聞いていたもんですから」


そこまで話すと、急に一番前で土下座をしている長老の老人が頭を下げたまま答えた。


「姫様がおいでだとは存じませんで、ご挨拶が遅れてしまい申し訳ありませんでした」


「みなさん、頭を上げてください。私は今お忍びできているんだから、こんな道の真ん中で土下座なんかされちゃったら、騒ぎが大きくなっちゃうから私困るわ」


マルーシャはひざまずいて村長たちに顔を上げるように促すのだがいっこうに頭を上げる様子がなかった。

困ってマルーシャもその場にしゃがみ込んでぽつりと囁いた。


「あああっ、城に連れ戻されるのかな」


マルーシャが残念そうにため息をついていると、村長が頭を地面につけたまま話し出した。


「おっ恐れながら姫様、実は、我々からお願いがありましてお待ちしていました」

「えっ? お願い?」


「はい、ラバンナさんに聞きましたところ、聖なる水を汲みに海岸へ行かれたとのこと、その聖水の水を一滴だけ我々にわけてはくださいませんか?」


「え?」


「あっいえ、スシュル湖が今大変な状況だということも承知しております。この年寄り一人でよろしければいかなる罰も受ける覚悟です。我々のちっぽけな村の泉のためになど、お使いになれないということは重々承知しております。我々も海岸の聖水のことは存じておりましたが、聖水をくみ出せるのは大人であって、子どもでない者のみとされておりますし、あそこは大人であっても危険な場所ですので、行く人間が見つからず、途方に暮れておりました。それで、ラバンナさんから姫様たちのことを聞いて、図々しくもお帰りをお待ちしておりました。どうかお願い致します。雨乞いの儀式が失敗となれば、今年一年、雨に関わる被害があれば、我々村人のほとんどが農業で生計を立てている身としましては農作物に被害が及び生死にかかわってまいります。姫様、どうかお願いいたします」


 マルーシャは困った顔をして横に立っているランドに視線を向けるとランドが頷いた。それをみたマルーシャは長老に向かって言った。


「わかったわ。とにかく、私今、城の兵士達に見つかりたくないのよね。まさかとは思うけれど、兵士達には私たちのことは話していないわよね?」


「はい、兵士の方々には何も申し上げてはおりません。スシュル湖の水のことは、泉の水を調査しにきていた兵士の方からお聞きしただけですので、姫様のことは何も申し上げてはおりません」


「そう、よかった。じゃあ話はラバンナお婆さんの家の中で聞くから立ってくれないかしら? 私からもみなさんにお願いもあるし」


マルーシャの言葉に驚いて顔を上げた長老に向かってマルーシャは最高の笑顔を向けた。

そして、マルーシャは長老と祭り関係者たちと共に、ラバンナの家の中に入って行った。


だがマルーシャは、家の前にルカとアルの二人を残し、ラバンナの代わりにパンを売るように命令した。


「アル、ルカが売り物のパンをこっそり食べないように見張っていてよね!」

「そりゃあないよ。俺腹減って倒れそうだよ。一つぐらいいいよねラバンナお婆さん、お金はきちんと払うから」


ルカはお腹をさすりながらラバンナの方に視線を向けて言うと、ラバンナは笑顔で頷いた。


「温かいシチューを後でお持ちしますよ」


「ヤッター、よし、とっととパンを売っちまおうぜ! さっきみたら露店にいろんなうまそうな食べ物が売っていたからな、早く行きたいしな」


ルカは腕をまくると右手を空に向かって突き上げた。


「あっ、その前に、服のほこりをはたいて井戸で手を洗うのを忘れちゃ駄目よ!」


マルーシャはそういうと、ランドと共にラバンナの家の中に入っていった。

アルとルカはそれを見送ってから幌馬車を裏の牛舎まで運ぶと、馬に水と牧草を与えると、服の汚れをはたき、井戸水で丁寧に手を洗い、濡れた服を干し、道を通りかかる人々相手にパンを次々と売っていった。



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