地底人⑥
四人が洞窟を引き返すころにはかなり海水が戻ってきていた。途中で気が付いたルカがパニックを起こしながらもランドの一括でひとまず落ちついたルカに状況を簡単に説明した。
そして真っ暗な海水で完全に水没してしまっている通路を前にマルーシャの腕を掴むとおもいっきり息を吸いこむようにマルーシャにいうと、ためらうことなく海水の中に飛び込んだ。
ランドは流れに反して海水の中を泳ぎきり、マルーシャも何とか泳ぎきった。
ここには通路の上の方のくぼみにアルがたいまつを置いていたおかげで先が暗闇になる事はなく、後から泳ぎきったルカとアルと共に洞窟をでた。
洞窟を出た四人は泳ぎながら何とか地上にあがり、馬車が置いてある場所まで戻ってきた。四人は幌馬車に積まれていた古着に着替えた。
ラバンナが先に積んでおいてくれたようだった。四人はラバンナに感謝しながら濡れた服を脱ぎ、ラバンナの用意してくれていた服に着替え、大きな毛布をかぶり寒さをしのいだ。
そして、ランドは幌馬車を出発させ、元来た道を引き返し始めた。
「なあ、これからどうするんだ?」
「そうだな、聖水は見つかったし、スシュル湖に戻ろうといいたいところだが、まず、地下の洞窟のことを詳しく話してもらおうか」
実はランドの気配を感じ取った少年がマルーシャの元から去っていくのをランドはチラッと目にしていたのだ。
「そうそう、俺も驚いたよ。地下にあんな空洞があったなんてな。なんか別の出入り口でもあるんじゃないか? あいつの肌の色は少し白かったから、あれはフィスノダ人じゃないかな」
「ええ! そうなの? 私はてっきり地底人かと」
「マルーシャお前なあ地底人なんかいるはずがないだろう」
「あらルカ、いないなんて断言できないわよ。もしかしたらいるかもしれないじゃない。この世界は不思議に満ちているってお母様が言っていたわ。私たちの知らないことも多くあるって」
「そうだね、マルーシャの言うとおりかもしれないね。僕達が知らないだけで、まだまだ、この世界には秘密があるかもしれない」
「そうよね。さすがアル」
「で、そのフィスノダ人のやつはなんていったんだ? 会話を交わしたんだろ?」
ランドはとってきたばかりの聖水の瓶を手で眺めながら聞き返した。
「あそこの水は枯れた大地に潤いをもたらす水で、私達が探している水はランドあなたがくんできた水と、さっきの地下水の水と、雨乞いの後に天から降り注がれる最初の神の涙を受け取ることができればグレーン湖の水が元に戻るんですって、あっなんだかわからないけれど、別の水が入った小瓶ももらったわ」
マルーシャはポケットの中から小瓶を取りだし、ランドに手渡した。
「もしかしたら、別の湖の水かもしれないな。じゃあ後は、雨乞いの祭りに最初の雨を効率よく受けとる必要があるってことか?」
「ええっそんなことできるのか?」
「できなくてもやらなきゃいけないのよ。さあ、急いで村に戻りましょう。お祭りは夜からだって言っていたじゃない」
「わかった。でっ、さっきの場所の水は汲んであるのか?」
「もちろんよ」
マルーシャはそういうと自慢気にほほ笑んだ。それから四人は、来た道を引き返して行った。
その様子を遠くで見つめている影があった。
「マルーシャス・ロウェン・ラールシア、いつか君は僕の敵になる。その時は容赦しないよ。僕の最後の宝を守るためにね。あの時…運命が動き出さなければ君とはいい関係になれていたかもしれないのに、残念だよ…」
ジイールは岩陰に隠れながらマルーシャ達の姿をそっと見送った。
「ジイール様、あの聖水を渡してしまってよかったのですか? あれがなくてはあれを封印できなくなるのでは」
そこには、全身黒ずくめの男達が数人潜んでいた。
「いいんだ。この国のぼんくらどもがのん気に構えているから、先に手を打ってやろうと思って聖水を汲みにきたんだが先を越されたしな。まさかここで出会うとは思わなかったよ。この国にもいたのを忘れていたよ。さあ、宝剣探しを再開させるぞ。あいつを再びバルデ城に封印としたとしても父上と母上は戻らない。この国の光も失われては、あいつの思うつぼだ。もし、本当に光の後継者がいるのなら。神の涙も手に入れられるはずだ。聖水を使って閉じ込めなくても、宝剣が見つからない限り、あいつはあの城からはでないだろうしな」
ジイールは幌馬車に向かって小さく呟いた。
「神の湖…スシュル湖か、あいつがあの湖に執着しているのはもしかしたら求めているものがあそこにあるのかもしれないな。聖なる湖が完全に闇に染まるまであと3日、光が勝つか闇が勝つか見ものだな」
ジイールはそういうとそっとその場から離れた。




