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ロタ村のラバンナお婆さん④

それから朝食を急いでとりながら、ラバンナに各自段取りを聞き、それぞれの仕事に取りかかった。ラバンナは一通り説明をすると、ルカを伴って、幌馬車で都の朝市に向った。


「さあアル、私達はまずこの花一面の庭の手入れをしましょうよ。道のすぐきわの花畑の上に机を並べるって言ってたけどそうすると、花がずいぶん潰れちゃうわ」


「じゃあまず、道の前に石を積み上げて花壇を作らないか、少し花を捨ててしまわないといけなくなるけど、花壇にして石を積み上げて道と区別をつけたほうが見栄えがよくなると思うんだけど、どうかな?」


「さすがアルね、私もその方がいいと思うわ。家までの通路が道なのか庭なのかわからない状態だもの、石の間にかわいい動物の置物があれば絶対かわいいわ。じゃあ私も運ぶのを手伝うわ」

「裏に牧草を運ぶ荷台があったからあれを使おう」


アルはそういうと早速荷台をとりに行き、石を運び始めた。どれだけ時間が過ぎただろうか、マルーシャも汗だくになりながら花壇作りに精を出した。


太陽が真上に来るころには道から家に入るあぜ道を挟んで、ようやく可愛い花壇が出来上がっていた。マルーシャは花の間にも朝石で動物を作っていた置物を所どころに置き、家の入り口に続く道の両側にも石を並べ、花壇と道の区別をつけ、元は、花が踏み荒らされていた場所に素敵な庭園ができていた。


二人は裏の倉庫にあったテーブルを運んできて、庭の中ほどのスペースに置き、お店の準備が完了した。


アルはあまった時間で、ランドの手伝いをしに行っている間、マルーシャは家の中で、パンを包む紙になにやら絵を描いていうようだった。


マルーシャは大量にあった紙全てに絵を描き終え、何かを思いついたのか、二人が作業している所に行き、平らな板を探すと、道具箱の中からくぎを一つ取り出すと、地面に直に座り込んで一心に何かを描き始めた。


二人は何も言わずにマルーシャを避けながら作業を続けた。ようやくランドとアルの作業が終わった頃ラバンナとルカが帰ってきた。


その声にマルーシャはとっさに、仕上がったばかりのその板を大量に積まれているまきの横に隠した。


「これは秘密よ」


そういうと、マルーシャはラバンナを出迎えるために家の中に戻った。


「今戻ったぞー!」


ルカが手にいっぱいの荷物を抱えて入ってきた。


「お帰りなさい。どう全部買えたの?」

「ああばっちりだ、俺様のかわいらしさでずいぶんまけてもらったしな。あっそうそう、お前にお土産だ」


そういうと手にもっていた袋の中から白い布の袋をアルーシャに手渡した。


「あら何かしら? あなたがお土産をくれるなんて珍しいじゃない」


マルーシャはそう言って袋の中を覗くと、驚いた顔と怪訝そうな顔を交互にしてルカを睨んだ。


「マルーシャ、何が入っているんだ?」


アルが覗き込もうとした時マルーシャはとっさに袋の中を隠した。


「ちょっと、どうしてあなたがこれをもっているの? あなた城に戻ったの?」


「ああそれなっ、朝市でグレナにばったりあったんだよ。いやービックリしたのなんのって、てっきり家出がばれて捜索隊がでてるとばかり思っていたからよ、グレナに腕を掴まれた時はもう駄目だと思ったぜ」


「えっ! グレナに会ったの? でっどうしたのよ。やっぱり城に連れ戻されたの? えっお迎えが来ちゃったの?」


マルーシャはとっさに後ずさりながら扉の向こうを除きこんだ。


「心配しなくても大丈夫だよ。なんか詳しくはしらねえけど、スーリア王妃様には城を出るところからばれていたみたいだな。でっ俺達、無断外泊じゃなくて王妃様の用事であのランナとかいう婆さんのところに暫く滞在していることになっているんだってさ。なんでもあの婆さん凄い人みたいだな。あの婆さんのところにいるって大臣や軍のえらいさん達に言っておけば何も言わないんだってさ。陛下にもうまいこと言っておいてくれているみたいだぜ。まっそういうわけだから、なんだか知らないけど、俺達は当分自由だってことだ。でっ、なんでかしらないけど、それをアルーシャに渡してくれって頼まれたんだよ。何が入っているんだ? パンツか?」


「ルカのばか! レディーに失礼よ!」


マルーシャは真っ赤になって目に前のルカを思いっきり突き飛ばした。そんなマルーシャとルカのやり取りを無言で聞いていたランドがポツリと言った。


「どうしてルカが朝市にいることがばれたんだろうな」


ランドの独り言にラバンナはただニッコリ微笑んだだけだった。



昼食を食べ終わったマルーシャ達はルカ以外の三人は朝の作業で服や顔中が泥だらけになっていたため、ラバンナのすすめで体中をきれいにふき取り、ランドとアルはラバンナの息子の昔の古着を借り、マルーシャもラバンナの古着と白いエプロンをつけてパン作りの準備が整った。


脱いだ服は乾くように先に洗濯し、外に干し、手を念入りに洗い、台所にそれぞれ集まった。

三人が着替えやらをしている間にルカはラバンナと共に台所の清掃にとりかかっていた。


「さあみなさま、お菓子やパン作りの基本はまず、体をきれいにすること、そして部屋の中を清潔にすることです。テーブルの上はきれいにふいていますね。ではまずクッキーを作りますので分量は正確にはかってくださいね。はかり違いは仕上がりに差がでますので、気をつけてくださいませ」


ラバンナは四人にテキパキと作業分担を指示し、ハーブ入りのクッキーが焼かれた。そしてその間に手際よくパンをこね始めた。


そしてパン生地に混ぜ込む果物や干し肉やチーズなど多くの種類のパンの生地を作りあげた。

ラバンナは下準備が整い、片付けも終って机をふきんで拭きながら言った。


「さあ、今からパンの発酵ですから先に夕飯を食べましょう。姫様もお疲れでしょう。お庭がとても素敵になっておりましたわ。家に続く土の通り道ができて感激いたしました。あの花の間に置かれている動物の置物も本当に素敵ですね。姫様は絵がとてもお上手ですね」


「えへへ、私絵は自信があるのよね。そうだ、これ、パンを包む紙に絵を描いてみたの。この家、いろんな花が家の周りにたくさん植えられているでしょ。その花の絵を描いてみたの。花の絵の下にラバンナのパンってロゴもいれたのよ。パンを食べた人がラバンナお婆さんのパンだって覚えてもらえると、また都で朝市にパンを売る時買ってくれるかもしれないでしょ。私ね。小さいけど看板も作ったのよ。絵と文字はくぎで先に傷をいれてから炭でえどったからすぐには消えないと思うわ。今とってくるから。あれがあれば、都でパンを売る時、みんな目印になると思って」


マルーシャはそういうと、裏口を出てすぐ横に積みあがっているまきの横に置いた板を持って戻ってきた。


そしてテーブルの上に看板の板とそれを支える板を組み込み、ラバンナに見せた。それには、パンを包む紙に描かれた絵と同じように、花の絵とラバンナの似顔絵が描かれ枠の真ん中にラバンナのパンときれいな飾り文字で描かれていた。


「まあ、これ姫様が描いてくださったのですか? どのお店の看板より素敵だわ。これじゃあ、パン代を少し値上げしなきゃいけなくなりますね」

「えっ?」


「冗談ですよ。本当にありがとうございます。姫様、こんな素敵なプレゼントは初めてですよ。それにルカさんもランドさんもアルさんも本当に今日一日ありがとうございました。こんな年寄りの為に…こんな嬉しいことばかり起こっては、神様に後で叱られないか怖くなるわね」


「あら、大丈夫よ。だってラバンナおばあさんは困っていた私たちを快く泊めてくれておいしい食事まで用意してくれたじゃない。そのほんのお礼よ。それに今日はまだ終っていないわよラバンナおばあさん。今夜は徹夜になるんでしょ。私徹夜は始めてよ」


「本当に姫様方はお優しいですね。皆さまに神のご加護がありますように」


 ラバンナはそういうと暖炉の上に飾られているイクーリア神像に向かって祈りを捧げた。


「さて姫様、では、早く夕食を食べて、最終段階のパンの成型にとりかかりましょう。果物や干し肉、チーズ、いろんな種類のパンを作りますから、お手伝いお願いしますね。今夜は徹夜はありませんが、早起きをしますので、終われば早く眠るようにいたしましょう。焼き始めるのは早朝ですから今夜は早めに寝ますよ」


ラバンナは夕食用に暖炉にかけていたシチューを皿によそいながら言った。


「あら残念、でもそうね、徹夜をしちゃうと、疲れちゃうものね。ねえラバンナおばあさん、お祭りってどんなことをするの?」


マルーシャはラバンナから皿を受け取り、空いた皿を交互に渡しながら聞き返した。


「この村の祭りは、本来は水の神ラグーナ様の怒りを静める儀式なんです。ですから村のはずれにある森の入り口のビーダの泉にその年の祭りで一番人気のあった村人が作ったお酒を泉に注ぎ入れて、その年も水の恵みがありますようにと、祈りをささげるんです。本来なら泉の水と混ざることで神様に祈りが届くんですけれど、今年はどうするのかしら?泉の水が枯れるなんてめったにありませんから。まあ、酒の方は明日のお昼に泉の前で一番の美酒を決めるんですよ」


「そうなんだ。ねえ、ラバンナおばあさんは美酒の選考には参加しないの?」


「はい、美酒選びは美酒を作った村人と村長さんたちで決めるんですよ。私も亭主が生きていた頃に何度か参加したんですけどね、酒造りは一人では大変ですので」


「そうなんだ。でも泉からも水は沸いてきていないんじゃお祭りができないんじゃないかしら」


「そうなんですよ、今夜にでも一雨あるといいんですが。都の方では雨がふったようなんですが、ここいらでは少ししか降らなくて、泉に水が湧き出てこないと、明日の雨乞いの儀式ができないんじゃないかとみんな心配しているんですよ」


「雨乞いの儀式? お祭りじゃないの?」


「はい、もとは神聖な儀式なんですよ。昔からあの泉の水が枯れた年は雨が少なくて農作物が不作になるって言い伝えがあって、そうならないように泉の側で、村人がお店をだしたり、踊ったりしてにぎやかに過ごすんですよ。簡単に言えば雨乞いですね」


「はあ、ついてないわね。今年に限って枯れているなんて」


「そうだな…でももしかしたらその泉のほかにも湖に流れこんでいた水と同じ成分の水がどこかに湧き出ているかもしれないし、諦めるのはまだ早い」


ランドの言葉に三人も頷いた。


「他にどこかに泉はありませんか?」


アルがラバンナに向けてたずねると、ラバンナは考え込むように言った。


「そうですねえ…あっそうだわ」


ラバンナが何かを思い出したのか、急に立ち上がると寝室に入って行き、しばらくして小さな木箱を大切そうに持って戻ってきた。


ラバンナはその木箱を食卓の上にのせると大切そうに箱を開け、中から小さな白い色をした石を取り出した。


「これは私の祖父にもらったものなんですが、祖父がよくこの石をなでながら、これは神様の水の近くにあった石だから、それを手に握っていると、体の悪い毒を吸い取ってくれるとよく言っておりました。祖父が言っていた水が姫様のお探しの水と同じ水かどうかはわかりませんが、確かラダ岬の崖の下に洞窟があって、その奥に、干潮になる瞬間に少しの間だけ海水が全てなくなる時があって、その時に洞窟の中に入って行くと、空色の空間が現れるそうなんです。その一番奥まで行くと、岩の切れ目から水が溢れている場所があるそうなんです。その水は乳白色なのだそうですよ。これはその湧き出ている場所におちていた石なんだそうです」


「それだ!」


四人は同時に叫んだ。


「ありがとうラバンナおばあさん。きっと私達が探している水はそれだわ」

「おやくに立ててなによりですよ」


ラバンナはその白い石を手でなでながら言った。


「詳しい場所を教えていただけませんか?」

「ええ、おやすい御用ですよ。なあにすぐわかりますよ。この家の道を道沿いにずっといくと海岸に付きあたるんですよ。その場所までかなり距離がありますが真っ直ぐ道なりだからすぐわかりますよ。突き当りの崖の下は岩場があるんですけどね、下に降りると、大きな岩の洞窟があるそうですよ。その奥に海水ではない乳白色の水が湧き出ている場所があるそうですよ。昔は別の場所からも行けたようですが、今言った場所は今も行けばすぐわかると思いますよ。ですがあそこはかなり危険ですよ。崖はかなりの高さがありますから、おぼっちゃま方だけでいかれるにはあぶのうございます。どなたか大人の方とご一緒のほうがよろしいのではありませんか? そうだわ海岸沿いには兵士の方々がいるようですから、その方々に手伝ってもらったらどうですか?」


「兵士ですか? あっ大丈夫ですよ。我々も十分気をつけますからご心配には及びません」


「そうですかあ、あっでもくれぐれも気をつけてくださいよ。最近あの辺りで小型の海賊船のような船が停泊しているってうわさですから、へんな輩が近づいてきたら十分気をつけてくださいませね」


ラバンナの言葉にマルーシャが聞き返した。


「海賊船? ラダ岬はそんな船が出入りできる入り江があるの?」


「いいえ、小舟がやっとですよ。なんでも、近くに停泊して、小舟で上陸してくるのだそうですよ。こんな田舎に海賊たちがきてもお宝なんて埋まってるわけないのに変だねえって村でもっぱらの噂なんですよ。ですがそのせいで、今年はお祭りは中止にしようかって声も出ていたんですよ。準備に夜遅くまで行われますから、けが人でもでると大変だって。ですが、中止にするという噂を聞いた陛下から、雨乞いの祭りは大切な儀式だから、是非ともするようにって、陛下の配慮で、海岸沿いに兵隊さんを巡回に出してくださるってんで出来ることになったんですよ」


「お父様もこの祭りは知っているのね。私ちっとも知らなかったわ。ちょっと待って、ええっ、城から兵士がきているの? 今村のどこかにいるってこと?」


「はい、確か昨日から、泉の周辺にテントを張っているとか聞きましたけど、ここは村の端ですから、兵士の方々の姿はみえませんけど、それがどうかしたのですか?」


「えっいいえ、どうもしないわ。ねえランド」


ランドは険しい顔をしていたが何もいわなかった。






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