過去からの贈り物④
王の墓から墓地に戻ってきた二人は二頭の馬がいる場所まで戻ってきていた。
「さてと! マルーシャこれからどうする? お前はここ以外で行きたい場所はどこかないのか? 地図があることだし駄目もとでキューラ城でも探してみるか?」
「ランド、あなたはどうしたいの? 他に行く予定はないの?」
「俺か、目的の物は手に入れたし、もう一つの場所はまあ…いいかと思っている所だ」
「そう…このまま城に戻るなんてもったいないし…でも、なんとなく今、キューラ城を探し回っても見つけられない気がするわ。それよりランドは他に行こうと思っていた場所があったのならそこに行ってもいいわよ」
マルーシャはリアのたてがみをなでながらランドに言った。
「そうだな…あそこは少し厄介な場所だからな、今回はやめておくよ。マルーシャが別に行きたい場所がないんだったら、城に戻るついでに寄り道してラールシアの王家の墓所にでも行くか? お前、スーリア王妃様の墓に一度も行ってないだろう。いつも急病で動けなくなったとか理由をつけて、一度ぐらい行ったらどうだ?」
ランドはマルーシャの顔をじっと見詰めながら問いかけた。マルーシャはリアのたてがみをさすりながら下を向いて黙り込んでしまった。
そんなマルーシャの態度をいぶかしそうにみつめながらもマルーシャがしゃべり出すのを待った。暫く無言の時が流れて、ようやく小さい声でしゃべり出した。
「だって、あそこ嫌いなんだもの。どうしてあんな岩だらけでの偏狭の場所に王家の墓なんか造ったのかわからないわ。あそこはお母様の亡骸があるってだけでお母様の魂はあんな場所にはいらっしゃらないはずだもの…」
マルーシャはそれだけいうと口をへの字に曲げながら黙り込んでしまった。それを見たランドは何も言わずマルーシャに近づき、彼女を後ろから抱きしめながら一言言った。
「余計なことを言って悪かった、お前の言う通りだ」
ランドはマルーシャから離れると、ダノンに近づき今度はマルーシャを見ずに言った。
「行きたい場所がないんだったら、もう城に戻るぞ、城のほうがお前も安全だしな」
「えええっ! ちょっと待ってよ、いっ行きたい場所がまったくないなんて私言ってないでしょ。あるわよ、行きたい場所なら、でもあそこは…」
マルーシャはランドの言葉で城に戻ろうとしているのを聞いて慌てて顔をあげランドのほうに視線を向けたが口ごもってしまった。
「マルーシャ? はっきり言わないとわからないだろうが」
「あのね…前から一度行ってみたいと思っていた場所があるんだけど…お母様の故郷なんだけど…あっ、無理ならいいのよ。簡単に行ける場所じゃないし」
「スーリア王妃様の故郷? カタルスか、マルーシャお前…」
「ランド、お母様の本当の故郷知っていたの?」
「あっああ、昔王妃様が教えてくださった」
「そうなの? 私ね、お母様から聞いていたカタルスに昔から一度は行ってみたいってよく思っていたのよ。大きな湖があって凄く素敵な場所なんですって、カタルスはラールノダの時代から今も残る最後の聖地の一つなのよ。でも、簡単には行けないんでしょ」
「カタルス…確かにやっかいな場所だな。あそこは一応はラールシア領にはなっているが、立ち入り禁止区域だからな。なんでも、あそこに通じる全ての道が全てカタルス側から封鎖されていて、どの道も通行できないってうわさだ。今はカタルスがどうなっているか情報すら入ってこない状態になっている場所だぞ」
「そうなんだけど…ねえ二リアに行けば、カタルスに行ける方法がつかめるんじゃないかしら。あそこが一番近いんでしょ。お父様がお母様と出会ったのもあそこだっておっしゃっていたのを聞いたことがあるわ。二リアは確かこのまま、シアフィスの森沿いを北に向えばいいんじゃなかったかしら?」
マルーシャの言葉にランドは暫く黙って考え込んでしまった。
「二リア…確かにあそこならカタルスに通じる秘密ルートの行き方を知っていそうな人物に一人心当たりがあるが…カタルスじゃあ行ける可能性は低いぞ。このままニリアに行っても無駄足になるかもしれないぞ」
マルーシャはニリアという言葉をだした時のランドの態度が気になったが、それよりもカタルスに行けなくてもなぜか二リアに行きたいという思いが込み上げてきていた。
「かまわないわ、駄目でもともとだもの。でもランド、あなたニリアに知り合いがいたの?」
「行けばわかる。もしかしたら、当初の予定通りにあそこに行けるかもしれないな…」
ランドは独り言をいうかのように何かブツブツつぶやきながらダノンに跨り先に進み出した。
だが進路は二リアに向けた。マルーシャはランドの意味ありげな言葉に首をかしげながらも、それ以上は聞かずその後は黙ってランドの後に続いた。
マルーシャは墓地の去り際にもう一度振り向き、頭を大きくさげた。そして笑顔でランドの後に続いた。
後にはやさしい風が吹き抜けていた。




