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湖の異変⑤

「ねえ、ここからどうやって城の外にでるのよ、ここって、下働き専用の門でしょ、ここは特に監視が厳しいんじゃない? 出入りする荷馬車の一つ一ついちいち確認するでしょ」


「ああ、だが確認するのは入ってくる荷物だけで、帰りの空の荷物はいちいち確認しないんだよ。ほらあそこに一台だけ幌がついている馬車があるだろう」


ランドは荷馬車が数多く置かれている方向に視線を向けたまま一番門に遠くて、厩舎に近い場所にとめている幌馬車を指差しながら言った。


「あの馬車は馬達にやる野菜くずを運んでくるグーザ爺さんの幌馬車だ、あの中身は今は空のはずだ。グーザ爺さんはいつも決まって城からでると、ビ二の酒場に直行しているって言っていたから。あそこに紛れていると脱け出せるはずだ」


「なるほど、あの馬車なら四人が横になれば隠れられそうね。でも帰り際にあの中覗いたりしないかしら?」


「大丈夫だよ、俺達今回の計画を何日も前から練って、念入りに調べているんだから、グーザ爺さんはお昼前に野菜くずを持ってきて、昼休憩が終ってから支払いされる賃金を貰うのに、昼休憩の間は食堂にいってただ飯にありついているはずだから、ここには馬しかいないはずだ。門番もこの時間、全ての空の荷馬車が置かれている内側は監視の体勢は取られていないんだよ」


「ふーん、よくそんなことまで知っているわね」


マルーシャは感心しながら荷馬車の方を眺めていると、ランドの「行くぞ」という声と共にマルーシャの手を掴んだランドが走り出し、四人はすばやくグーザ爺さんの幌馬車の中にまぎれこみ、これまたどこにかくしていたのか幌馬車の荷台と同じような柄の汚れた布を取り出し、横になった四人の上にかぶせた。


四人は息を潜めてじっとしていると、しばらくして、人の話し声が聞こえて一台まだ一台と荷馬車が動きだし、門を出て行く音が聞こえてきた。


それからほどなくして幌馬車が揺れて、グーザ爺さんが戻ってきたのか動き始めた。


「さ~て、懐が大きくなったことだし、酒でも飲みにいくとするか」


グーザ爺さんの独り言が聞こえてきた。


「ねえ、この馬車を降りたらどうやってスシュル湖に行くの?」


グーザ爺さんの陽気な歌声を聞きながら、マルーシャは野菜が腐ったような異臭がする布と板の間で鼻を摘みながら小声でランドに話しかけた。



その頃、城の中ではマルーシャ達の行動を既に察知していた人物が二人いた。


「本当によろしいのですか? あの場所はかなり危険な場所になってしまっていますでしょう。お体にもしものことが起これば大変なことになるのではありませんか?」


城門が見える塔の窓からマルーシャ達の乗せた馬車を心配そうに見つめながらグレナが隣にいるスーリア王妃に向かって言った。


「危険を恐れていては何も解決できないわ。それにあの子には仲間が一緒ですもの。きっと無事に帰ってくるわ。なにより、カタルスの予言書にあったでしょ」


スーリア王妃も塔の窓から顔を乗り出してマルーシャの乗っているであろう幌馬車を眺めながら言った。


「〝黒き闇が地上に放たれし時、聖なる水も黒く染まらん゛と言うあれですか? ですがあれは遥か古のことなのでは、今回のスシュル湖の件とは関係ないのでは?」


「そうかもしれないし、違うかもしれない。でももし、あの預言書が今回のことだとしたら、大人たちでは解決できないわ。だって唯一の解決策はラグーナ様の涙を手に入れること、私達にはもう消えてしまった汚れなき魂と光溢れる清んだ瞳でなくては得られないという伝説の泉から聖水をくみ出すことなんですもの」


「ですが、子供達だけでは危険なのではありませんか。フィスノダ国の政権が変わり、戦争が始まってしまった今、いつこの都にも敵が攻めてくるやもしれないですのに」


「そうね、けれど今ここで真実を隠し続けても、あの子は必ず異変に気付いてしまう。そして、必ずなんとかしようとするでしょうね。一人で近づけば危険が伴うし、私達が連れて行って見せても余計取り乱すだけだわ。けれどあの子達が一緒なら、あの子も大丈夫だと思うわ。私達にはないものを持っているあの子達なら」


スーリア王妃は心配するグレナに微笑みを浮かべながら言ったが彼女はまだ心配な様子だった。


「ですが・・・」


「あなたは本当に心配性ね、森には森の番人がいるもの。危険があれば助けてくれるでしょう。それに、雨乞いの祭りもちょうど明後日だし、時はまさに今なのよ。大丈夫よ。私の娘よ。それより、ランシェルド達の休暇届けは出しておいてくれた?」


「はい、ですがスシュル湖で確認するだけでしたら夕刻には戻ってくるのでは?」


「ふふふっ、でも冒険にはハプニングがつきものでしょ。私達が真実の答えを教えなくても、あの子達は必ず真実にたどり着くでしょうからね。そしたらあの子達はいったん城に戻るなんてことはしないわ。将来優秀な兵士候補生が無断外泊に加えて王女誘拐も発覚したのでは地下牢に投獄だけじゃなく、除隊処分にでもなりかねないわ。そうなったら大変でしょ。あの子たちは未来の総指揮官候補なんですもの」


「スーリア様もあの子たちには甘いですわね。こんな危険をおかしてまで城出した子どもたちには一度お仕置きも必要だと思いますけどね。まったく、あの子達はいくつになられても、あぶなっかしいですわね」


「みずからの力で未来を切り開いていこうとする力は全ての人に与えられているけれど、それを実行できる勇気と知恵は簡単に誰もがだせるわけじゃないわ。一人では出来ないことでも仲間が一緒なら必ず不可能を可能にかえることが出来るはずだわ。わたくし達はあの子達の未来を信じましょう」


二人は幌馬車が城門を過ぎ見えなくなるまで見送っていた。



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