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第5話 空を翔ける影

「これは食べてもいいものなのだろうか…l


俺はそんなことを考えながら倒れたホーンラビットを見つめる。

人間だった頃なら、生肉なんて絶対に食べたくない。

でも今は違う。


腹の虫が鳴りっぱなしだ。


「いただきます。」


恐る恐る牙を立てる。

ガブッ。


「……。」


グロいあまりにもグロい。

こうゆう世界だから倒したら消えるものだと思ったが、やはり死んだ後もちゃんと残るらしい。

だが思っていたより食べやすい。というより、うまい。


自分でも驚くくらい自然に肉を噛み、飲み込んでいく。そしてこれを食えるようになった自分への

絶望感も押し寄せてくる。


「トカゲになったからかな……。」


気付けば夢中で食べていて、

数分後には、ホーンラビットは骨だけになっていた。


「ごちそうさま。」


食事を終えた俺は近くの川で口をすすぐ。

冷たい水が気持ちいい。


「さて。」


これからどうするか。森を見回す。

右は木が密集していて暗い。

左は少し開けている。


「とりあえず、安全そうな場所を探すか。」


この森で生きるなら、寝床くらいは欲しい。

俺はゆっくりと歩き始めた。しばらく歩くと、小さな丘へ出る。

木々が少なく、見晴らしがいい。


「おぉ……。」


思わず声が漏れる。

森がどこまでも続いている。

その景色を眺めていた、その時だった。


サァァァ……


風が止む。

いや、違う。

森全体が急に暗くなった。


「ん?」


地面を見ると、自分の影とは別に、とてつもなく大きな影が森を覆っている。

ゆっくりと空を見上げる。


雲の向こう。あまりにも巨大な何かが飛んでいた。

翼を大きく広げ、悠々と空を翔けている。

遠すぎて姿までは見えない。


それでも分かる。


大きい。


ただ、それだけははっきりと分かった。

次の瞬間。


『ドォォォォォンッ!!』


少し遅れて、とてつもない風圧が森を襲う。


「うわっ!」


身体が浮き、そのまま地面を転がった。

木々は大きく揺れ、葉が一斉に舞い上がる。


「な、なんだよ今の……。」


慌てて起き上がり、もう一度空を見る。

だが、そこには青空が広がっているだけだった。


「あれ……。」


夢だったのか。

そう思うほど、一瞬の出来事だった。

けれど。


地面には舞い落ちた葉が散乱し、折れた枝が転がっている。

夢じゃない。

確かに、何かが空を飛んでいた。


「あんな生き物もいるのか……。」


この世界は広い。

俺なんて、まだほんの小さなトカゲに過ぎない。

それでも。


「あんな風に、空を自由に飛べたら……。」


その姿は、しばらく俺の頭から離れなかった。

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