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第4話 ひよこ看病

シルヴァードと別れて数日。

俺たちは火山地帯を目指し、森の中を歩いていた。


「まだ着かないの?」


マロンが少し疲れたように呟く。

するとガルドが地図を見ながら答えた。


「この森を抜ければ、少しずつ暑くなってくるはずだ。」


その時だった。


「……ピィ。」


小さな鳴き声。


「ん?」


マロンが立ち止まる。


「今、何か聞こえた。」


俺も耳を澄ます。


「向こうからだね。」


三人で草むらへ近付く。

すると。


「……!」


そこには、一羽の小さな赤い鳥が倒れていた。

ひよこほどの大きさ。

体のあちこちが煤で黒く汚れ、小さな翼には傷がある。

弱々しく火が灯っていた。


「かわいそう……。」


マロンは慌てて駆け寄る。

その瞬間。


「ピィッ!!」


小鳥が突然羽を広げた。

ボッ!

小さな火の玉が飛ぶ。


「きゃっ!」


マロンは慌てて避ける。

そしてガルドは咄嗟に剣に手をかける。


「魔物か?」


「待って!」


戦おうとするガルドにマロンも咄嗟に

前に出る。

その時


「ピィ……。」


火を吐いた途端、小鳥は苦しそうに倒れ込んだ。


「無理したんだよ。」


「倒しちゃダメだからね!」


「わかった、わーった。そんな怒るなって。」


怒るマロンに呆れながらもガルドは頷く。

マロンはゆっくり近付く。


「大丈夫。」


「怖くないよ。」


優しく両手を差し出す。


「ピィッ!」


また威嚇する。

それでもマロンは手を引かなかった。


「助けたいだけだから。」


しばらく睨み合いが続く。

やがて。


「……ピ。」


小鳥は小さく鳴き、力なくその場へ座り込んだ。

マロンはそっと抱き上げる。


「あったかい……。」


小さな体から、ほんのりと熱が伝わってくる。

まるで体の中で、小さな炎が燃えているようだった。


「宿場町まで急ぐぞ。」


ガルドが周囲を見回す。


「このままじゃ夜になる。」


俺は頷いた。

俺たちは歩く速度を上げる。

数時間後。森を抜け、小さな宿場町へ辿り着いた。

宿を借りると、マロンは長旅で疲れただろうに、すぐに小鳥の手当てを始める。

傷口を水で洗い、布を巻く。


「痛かったね。」


「もう大丈夫だから。」


小鳥は警戒したままだ。

それでも暴れる力は残っていなかった。


「治癒魔法は……まだ少ししか使えないけど。」


「《ヒール》。」


温かな光が小鳥を包んだ。


「ピ……。」


少しだけ表情が柔らかくなる。

マロンは嬉しそうに笑った。


「よかった。」


「元気になってきた。」


その様子を見ていた俺とガルドは思わず顔を見合わせた。


「マロンお前、魔法使えたのか!?」


「シルヴァードさんに言われてから合間に勉強したんだよ!」


自信満々なマロンをただただ感心して見ていた。


「とりあえずすっかり懐かれそうだな。」


「まだ威嚇されてるよ。」


マロンは苦笑する。


「でも、この子かわいい。」


小鳥は照れ隠しのように顔を背ける。


「そうだ!」


マロンが何かを思い付いたように顔を上げた。


「名前付けてもいいかな?」


「名前?」


俺が聞き返す。


「うん!」


「ピーピー鳴くから……。」


少し考え込んで。


「ピヨピー!」


部屋が静まり返る。


「……ぷっ。」


ガルドが吹き出した。


「お前、それ本当に名前にするのかよ。」


俺も堪えきれず笑う。


「ピヨピー……。」


続いてガルドが高笑いする。


「アヒャヒャヒャ!!」


「お前ガキじゃねえんだから。」


「かわいいじゃん!」


「ピヨピー!」


名前を呼ばれた小鳥は一瞬だけこちらを見る。


「ピィ。」


短く返事をしたようだった。

マロンは嬉しそうに笑う。


「よろしくね、ピヨピー。」


「本当にそれにすんのか。」


「可愛いからいいじゃん!」


この日、俺とガルドはずっと笑って、

その隣でピヨピーも鳴いていた。

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