第3話 風の継承
「では、ヴァルディ。」
「継承を始めよう。」
シルヴァードがゆっくりと前足を持ち上げる。
「目を閉じよ。」
「はい。」
俺は静かに目を閉じた。
次の瞬間。
優しい風が額へ触れる。
それだけだった。
しかし、
体の奥で鼓動が鳴る。
全身を風が駆け巡り、力が溢れ出してくる。
《風竜シルヴァードの継承を確認》
青白いパッドが目の前へ現れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
《進化可能》
《ウイングドラゴニア》
風属性そして飛行を得意とする個体。
進化先も多く成長も早いが、
最初はドラゴンにしては小さい。
《ファングドラゲナイ》
身体能力とブレスに特化した個体。
その爪は何でも切り裂くと言われるが、
身体能力に特化したため防御力は少ない。
《双竜》
希少種であり、首が二本ある。
うまくいけば神話級に進化できる。
だがその代わり成長も遅く、
進化先も狭まる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「双竜……。」
俺が呟くと、シルヴァードは少しだけ眉をひそめた。
「勧めぬ。」
「昔からあやつとは反りが合わん。」
「気に入らぬ。」
「七竜にも双竜がいるんですか?」
「うむ。あやつはこの世界で唯一双竜からヒドラになった
ドラゴンだ。だが性格が曲がっているのだ。」
真顔だった。
マロンが思わず笑う。
「七竜ってケンカするんだ。」
「する時もある。」
即答。
ガルドは苦笑した。
「案外普通なんだな。」
俺はもう一度進化先を見る。
「分かりました。」
「ウイングドラゴニアに進化します。」
《進化を開始します》
眩い光と慣れない違和感が全身を包み込んだ。
パキッ……
パキパキッ……
鱗が剥がれ落ち、新しい鱗へと生まれ変わる。
背中が熱い。
「グウッッ。」
何かが押し出されるような感覚。
やはりこの感覚には慣れない。
やがて。
バサッ――。
一対の翼が大きく広がった。
光が晴れる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:ヴァルディ
種族:ウイングドラゴニア
種族ランク:希少級
ランク:D
スキル
刃切〈Lv2〉壁走り〈Lv2〉滑空〈Lv1〉
鑑定〈Lv3〉
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これが……ドラゴン。」
翼を軽く動かす。
何だが変な感じだが、とりあえず近くにあった川で
自分の姿を確認する。
そこに写っていたのはドラゴンだった。
「よく似合っておる。」
シルヴァードは満足そうに頷く。
「何だかシルヴァードさんに似てますね。」
「私も昔はそうだったからな。」
「長い年月を経てこの姿になった。」
「そうなんですか!?」
「うむ。」
すると急にマロンが話し始めた。
「じゃあ、ヴァルディも将来ああなるってこと?」
「なるかもね。」
するとシルヴァードの視線が俺の腰へ向く。
「その鎖…武器か?」
「はい。これで呼び寄せるんです。」
「見せよ。」
俺は腰の鎖を掴む。
「《呼応》。」
ジャララッ――。
飛んでいったタイタンブレイカーが一瞬で俺の手へ飛来した。
ガルドが思わず目を見開く。
「いつ見てもすごいな。これ。」
シルヴァードは剣へゆっくりと前足を近付ける。
そして。
爪先で軽く触れた。
カチッ。
たった、それだけ。
しかし剣の表面へ淡い風色の紋様が一瞬だけ浮かび、すぐに消えた。
《龍刻を確認》
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
タイタンブレイカー
ランク:古代級
《龍刻》
風竜シルヴァードの龍刻が刻まれています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「龍刻……。」
「七竜が認めた武器だけに刻まれる印だ。」
「何かしらの能力がついたはずだ。
今度使ってみろ。」
「わかりました。」
そうシルヴァードと話をしていたら、
後ろから小さな声でマロンが喋っていた。
「私も何か欲しいな…」
「おい!マロン…」
マロンを見た七竜を見て、ガルドが慌てていう。
するとシルヴァードは意外にも優しく答えた。
「お主には火の才と癒やしの才がある。」
「まだ小さい。」
「だが、必ず大きく花開く。」
マロンは目を輝かせる。
「本当に?シルヴァードさん!」
シルヴァードは静かに頷いた。
「火山地帯へ向かえ。」
「そこに、お前の力を導く者がおる。」
そう言うと、一枚の美しい羽が風に乗って舞い降りる。
真紅に輝く羽。
それは耳飾りの形へと姿を変えた。
「これは……。」
「持っていけ。」
「いずれ必要になる。」
マロンは両手で大事そうに受け取る。
「ありがとうございます!」
シルヴァードは静かに翼を広げ、自分を見る。
「ヴァルディ。」
「火山地帯へ行く道中。」
「水を司る七竜がいる。」
「訪れてみろ。」
「さらばだ。」
大きな風が吹き抜ける。
気が付けば、シルヴァードの姿はもうそこにはなかった。
静寂だけが残る。
マロンは耳飾りをそっと握りしめる。
「……行こう!」
「うん。」
俺は翼を一度だけ広げた。
「にしてもお前、本当のドラゴンなんだな。」
「そうですか?」
「ガルドさん!ヴァルディはもう立派なドラゴンなんだから。」
「何でお前が自慢げなんだ。」
思わず笑いが込み上げる。
そして俺たちその場を後にし、火山地帯に向かった。
リアクションお待ちしております!




