第2話 強者の名
「来たか。」
穏やかな声が森へ響く。
俺は小さく笑った。
「約束通り、森の主を倒したよ。」
巨大な竜は静かに頷く。
「風を通して見ていた。」
「見事だった。」
その言葉だけで十分だった。
少し照れくさい。
そんな会話を聞いていた2人はおかしな顔をした。
「しゃ、喋った。」
「本当に七竜なのかよ…。」
「そちらは?」
「仲間のガルドとマロンです。」
すると七竜は少し笑い、
「良き仲間をもったな。」
「はい!」
すると、七竜はふっと森の奥へ視線を向ける。
「そして……あやつも。」
「よく戦った。」
俺は首を傾げる。
「あやつ?」
「森の主だ。」
「昔、まだ獣人であった頃に一度だけ会った。」
ガルドとマロンが息を呑む。
「森の主が……獣人?」
「うむ。」
「何度か言葉を交わした。」
「我を見ても物怖じせず話しかけてきた、変わった男であった。」
少しの沈黙が流れる。
風が木々を揺らした。
「……友、と呼ぶには短い付き合いだった。」
「だが。」
「悪い奴ではなかった。」
七竜は静かに目を閉じる。
「……残念だ。」
その一言だけだった。
けれど、その言葉には確かな悲しみが滲んでいた。
しばらく静寂が流れる。
やがて七竜はゆっくりと俺へ向き直った。
「……まあいい。」
「まだ我の名を教えておらなんだな。」
俺は静かに頷く。
「約束だったもんね。」
巨大な翼がゆっくりと広がる。
「我が名はシルヴァード。」
「風を司る七竜が一柱。」
「それが我の名だ。」
俺はその名を胸の中で繰り返す。
「シルヴァード……。」
シルヴァードは静かに頷く。
「では。」
「今度はお前の番だ。」
俺は姿勢を正す。
「俺の名前はヴァルディ。」
「よろしく、シルヴァード。」
シルヴァードは初めてその名を口にした。
「……ヴァルディ。」
そして静かに前足を差し出す。
「では、ヴァルディ。」
「継承を始めよう。」
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