第31話 逆転の一手
ジャラララララッ!!
黒い鎖が森中を駆け回る。
木を砕き。
岩を貫き。
まるで生きた蛇のように俺たちへ襲いかかる。
「くっ!」
一本を避ける。
だが、その横からもう一本。
「速い……!」
ガキィン!!
《刃尾》で弾く。
しかし、弾いた先から別の鎖が足元へ伸びてくる。
「ヴァルディ!」
ガルドの声。
「正面だけ見んな!」
「っ!」
反射的に飛び退く。
次の瞬間、さっきまで立っていた場所を鎖が貫いた。
ドゴォン!!
大木が一本、真っ二つになる。
(危なかった…)
サブロークハントは動かない。
ただ立ったまま、鎖だけを操っている。
「……そういうことか。」
俺は小さく呟く。
「ガルドさん!」
「何だ!」
「あいつ、自分は動いてません!」
ガルドの口元が少しだけ上がる。
「ようやく気付いたか。」
「鎖を操ってる間は、自分の動きが鈍る。」
「だから――」
「俺が囮になる。」
ガルドは迷いなく飛び出した。
「おらぁぁぁっ!!」
巨大なグレートソードを振り回し、真正面から突っ込む。
当然、鎖が一斉にガルドへ向かった。
ジャララララッ!!
「来い!」
ガルドは避けない。
叩き落とす。
斬る。
弾く。
一本、二本、三本。
だが数が多すぎる。
鎖が腕へ巻き付き、足へ絡みつく。
「今だぁ!!」
ガルドの叫びが森に響く。
「はい!」
俺は一気に地面を蹴る。
《壁走り》!!
木から木へ。
岩から岩へ。
鎖の死角だけを駆け抜ける。
サブロークハントの視線は、ガルドへ向いている。
(今しかない!)
俺は背後へ回り込んだ。だが、その瞬間。
サブロークハントの頭だけがゆっくりこちらを向く。
「……!」
気付かれた。
ジャラッ!!
一本の鎖が一直線に俺へ飛ぶ。
(来る!)
俺は避けない。
「《刃尾》!」
ガキィン!!
鎖を弾き飛ばす。
その勢いでさらに前へ。
「もう一本!」
二本目。
弾く。
三本目。
避ける。
四本目。
切り裂く。
修行で何度も繰り返した。
一撃で終わらない。
次。
また次。
攻撃を止めない。
サブロークハントとの距離は、もう数メートル。
「ヴァルディ!」
マロンの声が聞こえる。
「右!」
俺は反射的に右へ飛ぶ。
その瞬間、左から鎖が通り抜けた。
危なかった。
「ありがとう!マロン!」
「ヴァルディ前見て!」
サブロークハントは鎖をすべて俺へ向けた。
その時だった。
ガルドが笑う。
「引っかかったな。」
「……!」
サブロークハントが振り返る。
もう遅い。
鎖は全部、ガルドの周囲にある木や岩へ巻き付いていた。
一本。
また一本。
ガルドは戦いながら、わざと鎖を誘導していたのだ。
「ヴァルディ!」
「最後の一本だ!」
俺も気付く。
サブロークハントの腰から伸びる最後の鎖。
あれさえ止めれば――。
俺は一直線に駆けた。
《壁走り》!!
木を蹴り。
空中で一回転。
「《刃尾》!!」
黒い刃が最後の鎖を切り裂く。
ガキィィン!!
切れはしない。だが、大木へ深く食い込む。
ガルドが力いっぱい鎖を引く。
「捕まえたぜ。」
ジャラララララッ!!
すべての鎖が張り詰める。
腰から伸びた鎖は、自分自身を縛り上げるように四方八方へ固定された。
サブロークハントの両腕が止まる。
脚も動かない。
「今だ!」
ガルドが大剣を両手で構える。
静かに目を閉じた。
そして――
低く、詠唱を始めた。
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