第32話 血雷降天
サブロークハントは暴れる。
ジャララララッ!!
全身の筋肉を膨れ上がらせ、鎖を無理やり引きちぎろうとする。
だが。
木に巻き付き。
岩に食い込み。
地面へ突き刺さった鎖は簡単には外れない。
ガルドはゆっくり大剣を地面へ突き立てた。
両目を閉じる。
空気が変わる。
森を吹いていた風が止んだ。
鳥の鳴き声も消える。
「……?」
空が赤い。
いや。
赤く染まり始めている。
俺は思わず空を見上げた。
雲が渦を巻いている。
その中心へ向かって。
地面から赤い鎖が吸い込まれていく。
一本。
また一本。
無数の赤い鎖が天へ昇る。
まるで世界中の血が空へ集まっていくようだった。
ガルドが静かに口を開く。
「天を巡る紅き雷よ。」
「古き契約に応え、その牙を示せ。」
「我が血を贄とし――」
ガルドは左手の親指を噛み切る。
血が大剣へ落ち、
その瞬間。
ズォォォォン……
空の赤い渦が一気に膨れ上がった。
「裁きを下せ。」
「血雷降天。」
ゴォォォォォッ!!!!
空が裂けた。
真紅の雷が一直線に落ちる。
ズガァァァァァン!!!!!
轟音。
視界が真っ赤に染まる。
森全体が震えた。
耳が何も聞こえない。
雷はサブロークハントへ直撃し、その巨大な体を飲み込む。
「グアアアアアアアッ!!!!」
初めて聞く絶叫。鎧が赤く焼ける。黒い煙が立ち昇る。
雷は数秒間落ち続けた。
やがて。静寂。
煙がゆっくり晴れていく。
そこには片膝をついたサブロークハントがいた。
鎧は砕け。全身から煙が上がっている。それでも。
まだ倒れない。
「……すげぇ。」
俺は思わず呟く。あれを食らって立ってるのか。
ガルドは膝をつく。
「はぁ…はぁ…」
肩で息をしている。
かなり魔力を使ったらしい。
「ヴァルディ。」
「後は任せた。」
俺は頷く。
「はい!」
《壁走り》。
木を蹴る。
岩を蹴る。
空高く跳ぶ。
サブロークハントもゆっくり顔を上げた。
その目はまだ死んでいない。
「終わりだ。」
俺は《刃尾》を最大まで伸ばす。
黒い刃が今まで以上に鋭く輝く。
「これで……終わらせる!!」
一直線に振り下ろした。
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