第24話 鑑定スキル
村へ戻ってから数日。
ガルドは前みたいに酒場へ入り浸ることはなくなった。
朝になると、誰よりも早く起きて剣を振り、夕方になると静かに酒場へ戻る。
酒を飲む量も明らかに減っていた。
「最近のガルドおじさん、変わったよね。」
マロンが小さく笑う。
「そうだな」
俺もそう思う。
あのダンジョンで、本当に何かが変わったんだろう。
でも、俺にはまだやることがある。
サブロークハント。
あいつを倒せるくらい強くならないと。
俺はガルドの前まで歩いていく。
ガルドはちらっと俺を見ると
少し驚いていた。
「先に話しかけろよな。お前見た目はただのリザードなんだから」
やはり慣れても慣れない物なんだな。
いつか人間になれるか?
とりあえず俺は近くに落ちていた枝を拾い、地面へ文字を書いた。
『けいこ おねがい』
ガルドは文字を見る。
「……字は相変わらず下手だな。」
「でも最初より全然上手くなったよ!」
マロンが嬉しそうに言う。
「毎日練習してたもん!」
俺は少し照れくさくなった。
「ありがとうマロン」
「うんう――」
マロンの言葉が止まる。
「…………え?」
俺は首を傾げた。
「どうした?」
今度はガルドまで固まる。
「……。」
二人とも俺の顔を見たまま動かない。
「え、何?」
マロンが震える指で俺を指差した。
「しゃ……。」
「しゃ?」
「喋ってるーーーーーー!!」
「……へ?」
言われて初めて気付いた。
「あ。」
普通に喋ってる。
俺は慌てて自分の口を押さえた。
「え、ほんとだ。」
今までみたいに「ぎゃー」じゃない。
ただ少し声が低く、ガラガラしていた。
人間とも違う、不思議な声。
ガルドが眉をひそめる。
「昨日まで鳴き声しか出せなかったよな。」
「俺も今気付いた……。」
急いでパッドを開く。
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《鑑定 Lv5》
新機能を解放しました。
《言語補助》
鑑定済み言語を自動翻訳します。
発声機能を補助します。
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鑑定のおかげだ。
文字を覚えたり、人と接したことでレベルが上がったらしい。
そしてマロンは目を輝かせた。
「やっとお話できる!」
「今まで何言ってるか全然分からなかったんだから!」
「それは俺も同じだよ。」
思わず笑ってしまう。
ガルドは腕を組みながら小さく息を吐いた。
「……なら話は早い。」
その一言で空気が変わる。
俺も自然と真剣な顔になる。
「お前、本当に強くなりたいんだな。」
「ああ。」
迷わず頷く。
「サブロークハントに負けた。」
「あいつを倒して……もっと先へ進みたい。」
ガルドはしばらく黙って俺を見つめていた。
やがて鼻で笑う。
「その目は嫌いじゃねぇ。」
「明日、日の出前村の門に来い。」
「俺が鍛えてやる。」
「だが…」
俺は息を呑む。
「敬語だ。」
「師匠になってやるんだからそれくらいしろ。」
何だか照れくさっていたがまあいいだろう。
だが確かに教えてもらう人に敬語は必要だ。
そして思い返すと胸が熱くなった。
やっとだ。
やっと教えてもらえる。
俺は勢いよく頭を下げた。
「よろしくお願いします!」
ガルドは少しだけ目を丸くした。
そして照れくさそうに頭をかく。
「…教えてやるよ。」
「だが教えるからには、中途半端にはしねぇ。」
「覚悟しとけ。」
「はい!」
俺は力強く返事をした。
ガルドはニヤッと笑う。
「その返事が、いつまで続くか楽しみだな。」
翌朝。
俺はまだ知らなかった。
この修行が、想像を遥かに超える地獄になることを。
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