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第21話 忘れ去られたダンジョン①

村を出てから、誰も口を開かなかった。

ガルドは巨大なグレートソードを肩に担ぎ、一定の歩幅で森を進んでいく。

俺とマロンは、その少し後ろを歩いていた。

森を抜けて一時間ほど。

木々が途切れた先に、大きな岩山が姿を現した。

その麓には、ぽっかりと口を開けた巨大な洞窟。

入口には倒れた石碑があり、苔に覆われて文字はほとんど読めない。

ガルドは足を止めた。

しばらく洞窟を見つめる。

そして、小さく息を吐いた。


「……ここだ。」


静かな一言だった。

その声には、十年という時間では消えなかった後悔が滲んでいるように聞こえた。

グレートソードを握り直すと、ゆっくりと歩き出す。


「行くぞ。」


俺とマロンも無言で後に続いた。


洞窟の中は、異様なほど静かだった。

水滴が落ちる音だけが響いている。


ポタッ……


ポタッ……


しばらく歩くと、足元で何かを踏んだ。


カラン……


「グギャッ」


何を踏んだかと思えば、人骨だった。

人のものか、魔物のものかも分からないほど白く風化している。


「そんなもんでビビんな」


ガロウは少し笑いながら言った。

さらに進む。

壁には無数の傷跡が刻まれていた。

剣で斬られた跡。

鋭い爪で抉られた跡。

魔法で焼け焦げた跡。

十年前の戦いが、そのまま残っているようだった。

少し先には、朽ちた焚き火の跡があった。

黒く焦げた石。

割れた木の器。

錆びた鍋。

ガルドはその前で立ち止まり、ゆっくりとしゃがみ込む。

焦げ跡へ静かに手を添えた。


「……飯うまかったな」


「レオンのやつ、肉ばっか食ってな。」


少しだけ口元が緩む。

だが、その笑みは一瞬で消えた。


「すまねぇ。行くぞ。」


何も言わず立ち上がり、再び歩き始める。

俺もマロンも、何も聞かなかった。

聞けなかった。

さらに奥へ進む。

一本道だった通路は、少しずつ広くなっていく。

その途中。

壁へ深く食い込んだ、大きな斬撃跡が目に入った。

近くには、半分に折れた剣が落ちている。

ガルドはそれを拾い上げた。

錆びついた剣をしばらく見つめる。

見つめた後また剣を元の場所へ戻した。


また歩き出す。


ダンジョンの空気が、少しずつ重くなっていく。

冷たい。

いや、寒い。

まるで誰かに見られているような感覚だった。

その時。

カツ……

小さな足音が響いた。

俺は反射的に足を止める。

マロンも息を呑む。

ガルドはゆっくりとグレートソードを握り直した。


「……来る。」


低い声が、静かな通路へ響く。


カツ……


カツ……


足音は一つではない。暗闇の奥で、何かが動いた。

ゆっくり。

本当にゆっくりと。

人影のようなものが姿を現し始める。ボロボロの鎧。

錆びた剣。朽ち果てた体。

その姿を見た瞬間。

ガルドの表情が凍りついた。

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