表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/27

第20話 道場カチコミ宣言

「ことわる」


今日も同じ返事だった。

酒場の前。

ガルドは酒瓶を片手に、面倒くさそうに俺を見下ろしている。


「グルッ!」


俺は諦めずに頭を下げる。


「ことわる」


「グル!」


「ことわる!」


「グルルッ!」


「……しつけぇな。」


ガルドは酒を一口飲むと、そのまま酒場の中へ入ってしまった。


「はぁ……。」


俺は肩を落とす。


「また駄目だった?」


後ろからマロンが歩いてきた。

俺は小さく頷く。


「グル。」


「もう一週間くらい毎日行ってるよね。」


俺は苦笑する。

この村で一番強い。

そう分かっているのに諦められるわけがない。

でも、どうしてここまで頑なに断るんだろう。

その時だった。


「フォッフォッフォ。」


聞き慣れた笑い声が響く。

振り向くと、村長が杖を突きながら歩いてきた。


「まだ頼んでおるのですな。」


俺は頷く。


「グル。」


村長は酒場の方を見つめ、小さくため息をついた。


「……あやつも、昔は村一番の戦士でした。」


マロンが驚く。


「やっぱり本当だったんだ。」


村長は静かに頷いた。


「ですが、今のあやつを作ったのは、一つのダンジョンです。」


俺は思わず顔を上げる。

村長は少しだけ目を閉じた。


「あれは十年ほど前。」


「新しくダンジョンが見つかりましてな。」


「鑑定士は超初級ダンジョンだと判断しました。」


「危険は少ないと聞き、あやつは仲間と……息子を連れて入りました。」


「息子……。」


マロンが小さく呟く。


「あやつの妻は、その数年前に病で亡くなっております。」


「残された家族は、息子のレオンだけでした。」


「レオンは父親に憧れておりましてな。」


『父ちゃんみたいな戦士になる!』


そう毎日のように話していたそうです。」


村長は少し笑う。

だが、その笑みはすぐ消えた。


「しかし。」


「ダンジョンは超初級などではありませんでした。」


「実際は上級ダンジョン。」


部屋の空気が重くなる。


「最初は何とかなったそうです。」


「ですが、奥へ進むにつれ魔物は強くなり、逃げることしかできなくなった。」


「仲間たちは、一人ずつ残って時間を稼ぎました。」


「ガルドは、レオンを抱えて走り続けた。」


「ですが……。」


村長は目を伏せた。


「レオンは魔物の毒に侵され、ガルドの腕の中で息を引き取りました。」


俺は何も言えなかった。


「その直後、魔物たちが仲間とレオンの亡骸を連れ去ったそうです。」


「ガルド自身も瀕死となり、救助隊に助けられました。」


「それ以来です。」


「酒しか飲まなくなったのは。」


静寂が流れる。

マロンは目を潤ませていた。


「そんなことが……。」


俺は酒場の扉を見る。

あのだらしない姿。

全部、自分を責め続けた結果だったのか。


「フォッフォッフォ。」


村長は寂しそうに笑う。


「誰もあやつを責めてはおりません。」


「ですが、一番許せないのは……あやつ自身なのでしょう。」


俺はゆっくり立ち上がった。


「グル。」


マロンが俺を見る。


「行くの?」


俺は力強く頷いた。酒場の扉を開ける。

ガルドは相変わらず酒を飲んでいた。俺を見るなり、ため息をつく。


「……帰れ。」


俺は帰らない。

ゆっくりと前へ歩く。


「グルッ。」


「帰れ。」


「グルッ!」


ガルドは机を叩いて立ち上がった。


「聞こえねぇのか!」


酒場中が静まり返る。それでも俺は動かない。

真っ直ぐガルドを見る。

逃げない。

俺は頑固なんでね。

その視線に、ガルドの表情が少しだけ揺れた。

しばらく沈黙が続く。

やがてガルドは酒瓶を机へ置いた。


「……。」


そして壁へ立て掛けてあった、欠けだらけの巨大なグレートソードを手に取る。

ゆっくり肩へ担ぐ。


「……一回だけだ。」


低く呟く。


「着いて来い。」


その一言だけ残し、ガルドは酒場を出ていった。

俺はマロンと顔を見合わせる。

そして静かに、その背中を追いかけた。

リアクションお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ