第19話 道場申込
村で過ごし始めて三日。
体の傷もだいぶ良くなり、一人で歩けないがマロンと一緒なら
いいと言われた。
「グル……。」
村を歩いていると、あちこちから視線を感じる。
子どもたちは興味津々でこちらを見る。
だが、大人たちは違った。
「魔物だ……。」
「村長が許したからってな。」
「早く出て行ってほしいもんだ。」
聞こえないふりをして歩く。
仕方ない。
「トカゲさん!気にしなくていいからね?」
マロンは優しいなあ…
その時だった。また大人たちの会話が聞こえるが自分のことではない。
「また昼間から飲んでるよ。」
「ほんと、働きもしないで。」
「昔は強かったらしいけどねぇ。」
そんな話し声が聞こえてきた。
気になって視線を向ける。
酒場の外。
木箱にもたれ掛かり、一人の犬獣人が酒瓶を傾けていた。
ぼさぼさの長い毛。
手入れをしていないせいで、首回りはライオンのたてがみのようになっている。
着ている服もかなりくたびれていた。
どう見ても、だらしないおっさんだ。
「……。」
一応、鑑定してみるか。
パッドを向ける。
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名前:ガルド
種族:犬獣人
ランク:B
レベル:41
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「は?」
思わず二度見した。
「レベル四十一!?」
俺のレベルが12だから、勝てるはずもない。
この村で見た誰よりも高い。
「あの人……。」
村人の噂を思い出す。
"昔は強かった"
どうやら本当らしい。
ガルドは俺の視線に気付くと、面倒くさそうにこちらを見た。
そして一言。
「何見てんだ、デカ物…気色悪リィ」
低い声だった。
俺はその場から動かない。
するとガルドはため息をつき、足元に立て掛けてあった武器へ手を伸ばした。
「!」
それは巨大なグレートソードだった。
刃は欠け、錆も浮いている。
何度も修理した跡があり、とても立派な武器には見えない。
それでもガルドはそれを片手で軽々と持ち上げた。
「……。」
俺は思わず息を呑む。
あんなもの、誰でも持ち上げるだけでも苦労するはずだ。
ガルドは肩へ剣を担ぐと、そのまま酒場の裏へ歩いていく。
「待ってくれ。」
もちろん言葉は伝わらないが喋り続ける。
「グルッ!」
俺は慌てて後を追いかけた。
ガルドは振り返ることなく歩き続ける。
俺は地面に落ちていた枝を拾い、必死に剣を振る真似をした。
それから、自分を指差す。
さらに頭を下げる。
「グルッ……!」
ガルドはちらりとこちらを見る。
「……何だ。」
その意味を考えるように目を細めた。
そこへ、ちょうど少し離れていたマロンがきた。
「あっ!トカゲさん!1人で行かないでよ〜!」
そしてマロンは画廊に気がついたようで、言う。
「あ!ガロウおじさん!」
どうやら2人は知り合いのようだ。
俺は地面へ木炭で文字を書こうとする。
だが、この世界の文字はまだ書けない。
一応ジェスチャーでも伝える。
「グルゥ…?」
困っている俺を見て、マロンは少し考え込んだ。
「もしかして……。」
彼女は地面へ、この世界の文字で一つの単語を書いた。
『稽古』
そしてガルドを指差し、俺を指差す。
「あなた、この人に稽古をつけてもらいたいの?」
「!」
俺は何度も頷いた。
「グルッ! グルッ!」
マロンはくすっと笑い、ガルドへ向き直る。
「ガルドおじさん。この子、おじさんに強くしてほしいんだって。」
ガルドは酒を一口飲む。
そして鼻で笑った。
「ことわる。」
それだけ言うと、巨大なグレートソードを肩に担ぎ直し、背中を向けて歩き出した。
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