第18話 意思疎通
村長が出て行ったあと、
それに続くように村人たちも外へ出ていく。
しかし、何人かは最後まで俺を睨んでいた。
「……まぁ、当然か。」
俺は苦笑する。
もし俺が人間だった頃、突然でかいトカゲが家にいたら同じ反応を…
いやドラクエのリザードマンと思えば全然だな。
部屋には助けた獣人の少女だけが残った。
少女は安心したように胸を撫で下ろす。
「よかったぁ……。」
そう言って笑いかけてくる。
俺も笑い返そうとした。
「グルッ。」
「……?」
やっぱり伝わらない。
「そりゃそうか。」
俺は頭を掻いた。
どうにかして意思疎通しないと、このままじゃ何も話せない。
部屋を見回す。
木の机。
椅子。
薬草。
その隅に、小さな木炭が転がっていた。
「これで書けば!」
俺は木炭を拾い、床へ文字を書き始める。
『ありがとう』
少女は首を傾げる。
「え……?」
読めないのか?
そうか。
俺が知っている文字じゃない。
異世界なんだから当たり前だ。
「グル……。」
肩を落とした、その時だった。
少女は俺が書いた文字をじっと見つめる。
そして木炭を拾うと、その隣へ見たことのない文字を書いた。
丸や線が組み合わさった、不思議な文字。
「これ。」
読めない。
少女は自分を指差した。
そして文字を指差す。
どうやら名前を書いたらしい。
「名前?」
俺は自分を指差す。
それから床へ書く。
そしてその言葉と一緒に書く。
『×』
この世界に×があるかは知らないが一応書く。
そうすると少女は少し考え込んだあと、なるほどという顔をした。
多分この世界にも×的なのはあって何となく伝わったらしい。
今度は少女が自分の胸を叩き、もう一度同じ文字を指差した。
「グル。」
俺も頷く。
本当に少しだけだが、会話らしいものができた気がした。
その時、部屋の外が少し騒がしくなる。
「またやられたぞ!」
「畑が荒らされてる!」
「サブロークハントだ!」
その名前を聞いた瞬間、俺の表情が変わる。
「あいつ……。」
まだ村を狙っている。
少女も不安そうに窓の外を見つめていた。
俺は拳を握る。
「……もっと強くならないとな。」
そう心の中で呟きながら、俺は床に書かれた見知らぬ文字を見つめた。
まずは、この世界を知るところから始めよう。
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