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第17話 起きたら包囲状態だった

「……っ。」


意識が少しずつ戻ってくる。柔らかい感触。

草の上じゃない。


「ここ……。」

ゆっくり目を開ける。見知らぬ天井だった。木で組まれた家。

壁には乾燥させた薬草が吊るされ、部屋の中には独特な香りが漂っている。


「生きてる……。」


あの一撃を食らって助かったのか。

そう思って体を起こそうとすると、


「ッ!」


全身に激痛が走る。


「いてて……。」


腹には布が巻かれていた。

誰かが治療してくれたらしい。

その時。


ガチャ。


扉が開いた。

昨日助けた獣人の少女だった。


「あっ!」


少女は俺が起きたことに気付き、嬉しそうな表情を浮かべる。


「よかった……!」


言葉はわからないが相手が何を言っているのかは、なぜか自動翻訳されている。

鑑定のおかげか?


「あぁ……助けてくれたのか。」


そう礼を言ったつもりだった。


「グルル……ギャ。」


「……。」


少女は首を傾げた。


「あ、そっか。」


俺は喋れないんだった。

言葉は理解できても、口から出るのは魔物の鳴き声だけ。

少女は少し困ったように笑うと、部屋の外へ駆け出していった。


数秒後。


バタバタと大勢の足音が近付いてくる。


「本当に起きたのか!」


「危険だ! 離れろ!」


部屋へ入ってきたのは数人の獣人たちだった。

槍や斧を持ち、全員が俺を警戒している。


「魔物を村へ入れるなんて!」


「今すぐ追い出せ!」


「いや、倒した方がいい!」


口々に叫ぶ。

俺は思わず肩をすくめた。


「まぁ……そうなるよな。」


逆の立場でも、俺なら同じ反応をする。

少女は慌てて俺の前へ立った。


「違うの!」


「この人が助けてくれたの!」


「私をかばって戦ってくれたの!」


周りの獣人たちは顔を見合わせる。


「しかし相手は魔物だ。」


「信用できん。」


少女は必死だった。


「本当なの!」


「この人が来なかったら、私……。」


部屋の空気が重くなる。その時だった。


ガチャ。


杖を突く音が部屋に響く。

獣人たちが一斉に道を開けた。

ゆっくりと入ってきたのは、白い毛並みの老獣人だった。

長い髭を撫でながら、細い目で俺を見つめる。


「フォッフォッフォ……。」


穏やかに笑っている。

だが、その目だけは少しも笑っていなかった。


「これがお客人ですかな。」


俺は思わず姿勢を正す。

老人はゆっくり近付き、俺の前で立ち止まる。


「話は聞いておりますぞ。」


「マロンを助けてくださったそうで。」


あの子マロンっていうのか。

俺は小さく頷いた。


「グルッ。」


老人は少しだけ目を細める。


「言葉は話せませぬか。」


しばらく俺を見つめた後、後ろの村人たちへ振り返った。


「このお客人は、三日ほど村へ置きます。」


その一言で空気が張り詰める。

老人は俺の耳元に囁く。


「フォッフォッフォ。」


「お客人。」


「もし村人へ危害を加えるようなことがあれば……。」


笑顔のまま杖を軽く鳴らした。


「わかっていますな…?」


笑っている。

なのに、背筋が少し寒くなる。

俺は静かに頷いた。


「……グル。」


「ありがとうございます。」


老人は満足そうに頷く。


「では、ゆっくり傷を癒してください。」


俺は大きく息を吐く。


「……何とか助かったみたいだ。」


だが、本当の問題はここからだった。


「言葉……どうやって伝えよう。」


俺は自分の手を見つめながら、小さくため息をついた。

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