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世界は静かに壊れている【ショートショート集・短編集】  作者: 御影のたぬき


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【ダークファンタジー】悪魔バトルロワイアル

 地獄の第九圏、最深部の玉座の間に、二百体を超える悪魔が集められた。堂々たる姿のルシファー、威圧的なサタン、蠅の群れを纏うベルゼブブ、妖艶なアスモデウス、巨大な海蛇の姿を持つレヴィアタン、黄金に輝くマモン、怠惰そうに寄りかかるベリアル。七大悪魔が最前列に並び、その後ろには無数の悪魔たちが控えていた。リリスは艶やかな微笑みを浮かべ、バフォメットは山羊の頭を誇らしげに掲げ、メフィストフェレスは羊皮紙の契約書を指で弄んでいた。東方からは酒呑童子が酒瓶を片手に、玉藻前が九つの尾を優雅に揺らし、アステカのテスカトリポカが黒曜石の鏡を抱え、スラブのバーバ・ヤーガが箒に跨って宙に浮いていた。


 玉座には、地獄の支配者である「深淵の主」が座っていた。その姿は定まらず、光と闇が混ざり合い、見る者によって異なる姿を見せた。深淵の主は、重々しい声で告げた。

「悪魔諸君、集まってくれてありがとう。本日、特別な催しを開催する。その名も、『悪魔の王決定戦』だ」

 会場がざわめいた。ルシファーが眉をひそめ、サタンが低く唸り、ベルゼブブの周りの蠅が一斉に飛び立った。深淵の主は続けた。

「地獄は長きにわたり、複数の勢力に分かれて統治されてきた。だが、そろそろ一つにまとめる時が来た。そこで、バトルロワイアル形式で、最強の悪魔を決定する。勝者には、地獄の唯一の王の座を授ける」


 会場が一瞬、静まり返った。そして、爆発的な反応が起きた。

「ふざけるな!」

 とサタンが吠え、

「私こそが王に相応しい」

 とアスモデウスが叫び、

「金で買えないのか?」

 とマモンが呟き、

「面倒くさい」

 とベリアルがあくびをした。ルシファーは冷静に尋ねた。

「ルールは?」

 深淵の主は答えた。

「シンプルだ。この地獄の第一圏から第九圏まで、全域が戦場となる。最後の一体が残るまで、殺し合ってもらう。同盟は自由だが、最終的には一体しか勝者になれない。武器、魔法、能力、すべて使用可能。ただし、人間界への干渉は禁止だ」

 メフィストフェレスが質問した。

「時間制限は?」

 深淵の主は答えた。

「なし。決着がつくまで続ける」


 酒呑童子が笑った。

「面白い!久々に暴れられるぜ」

 玉藻前が冷ややかに言った。

「野蛮ね。でも、まあいいわ。久々に本気を出せるのは悪くない」

 テスカトリポカが黒曜石の鏡を見つめて呟いた。

「運命は既に決まっている。私が勝つ運命だ」

 バーバ・ヤーガがカカカと笑った。

「若造どもが。本当の恐怖を教えてやろう」

 深淵の主は宣言した。

「それでは、三日後に開始する。準備をしておくように」

 そして、玉座の間は閉じられた。


 悪魔たちは、それぞれの領域に戻って準備を始めた。ルシファーは自身の宮殿で、堕天使の軍団を集めた。アザゼル、サマエル、ベリアルが揃った。ルシファーは冷静に言った。

「このバトルロワイアルは、罠だ。深淵の主は何かを企んでいる」

 アザゼルが頷いた。

「同感です。しかし、参加しなければ、他の者に王座を奪われます」

 ルシファーは考え込んだ。

「ならば、勝つしかない。だが、正面から戦うのは愚かだ。戦略が必要だ」

 サマエルが提案した。

「同盟を結びますか?」

 ルシファーは首を横に振った。

「同盟は裏切られる。信じられるのは自分だけだ」


 一方、サタンは第七圏で、怒りの悪魔たちを集めていた。

「奴らを皆殺しにする!特にルシファーだ!あの偽善者め!」

 サタンの周りには、怒りに燃える悪魔たちが集まっていた。彼らは武器を研ぎ、牙を磨き、爪を尖らせた。サタンは叫んだ。

「力こそが正義だ!最強の者が王になる!それが俺だ!」

 悪魔たちは雄叫びを上げた。ベルゼブブは第二圏で、蠅の大群と共に浮遊していた。

「くくく、皆殺しか。いいじゃないか。腐敗と疫病で、全員を倒してやる」

 蠅たちが嬉しそうに羽音を立てた。


 アスモデウスは豪華な寝室で、インキュバスとサキュバスを侍らせていた。

「バトルロワイアルなんて野蛮ね。でも、勝たなきゃ。美しい私が王になるのが相応しいわ」

 サキュバスの一人が言った。

「アスモデウス様、色仕掛けで敵を倒しましょう」

 アスモデウスは微笑んだ。

「いい考えね。でも、最終的には力も必要よ。準備を怠らないように」

 レヴィアタンは深海の領域で、巨大な体を波打たせた。

「嫉妬か。他の悪魔が王になるのは許せない。私こそが相応しい。すべてを飲み込んでやる」


 マモンは金貨の山の上で、計算機を弾いていた。

「バトルロワイアル、か。コストとリターンを計算しないと。勝てば地獄の王、負ければ死。リスクが高いが、リターンも高い。よし、投資する価値がある」

 マモンは傭兵悪魔を雇い始めた。

「金はいくらでもある。強い奴を雇えばいい」

 ベリアルは自室のソファで寝転がっていた。

「面倒くさいなあ。でも、やらないと殺されるし。仕方ない、最低限の努力はするか」

 ベリアルは魔法の罠を仕掛け始めた。

「罠で敵を倒せば、自分で戦わなくて済む。楽ちんだ」


 リリスは闇の庭園で、夜の花々と戯れていた。

「男たちの争いね。愚かしい。でも、私も参加しなきゃならない。女の意地を見せてやるわ」

 リリスは配下の夜の悪魔たちを集めた。バフォメットは山の頂上で、崇拝者たちと儀式を行っていた。

「血と魂の饗宴だ。我が力を示す時が来た」

 メフィストフェレスは書斎で、契約書を何枚も書いていた。

「契約で敵を縛れば、戦わずして勝てる。知恵こそが最強の武器だ」

 アバドンは破壊の領域で、無数の武器を磨いていた。

「破壊、破壊、破壊!すべてを破壊する!」


 酒呑童子は宴会場で、配下の鬼たちと酒を飲んでいた。

「おお、バトルロワイアルか!面白い!久々に大暴れできるぜ!」

 茨木童子が横で笑った。

「親分、今回は俺たちも本気出しますよ」

 酒呑童子は豪快に笑った。

「おう、やってやろうぜ!」

 玉藻前は優雅な宮殿で、九つの尾を揺らしながら鏡を見ていた。

「西洋の悪魔たち、私の美しさと力を知らないようね。教えてあげるわ」

 玉藻前の周りには、狐の妖怪たちが控えていた。


 テスカトリポカは黒曜石の神殿で、予言を読んでいた。

「鏡よ、未来を見せよ。誰が勝つ?」

 鏡の中に、様々な未来が映った。だが、どれも曖昧だった。

「運命は流動的か。ならば、自分の手で未来を掴む」

 バーバ・ヤーガは森の奥の小屋で、毒薬を調合していた。

「若い悪魔どもが。魔女の恐ろしさを知らないようだね。教えてやろう」

 バーバ・ヤーガの小屋は、鶏の足で歩き回り、準備を整えていた。


 そして、三日後。地獄全域に、鐘の音が鳴り響いた。深淵の主の声が、すべての悪魔に届いた。

「悪魔バトルロワイアル、開始する。健闘を祈る」

 瞬間、地獄が揺れた。悪魔たちは、一斉に動き出した。第一圏では、辺獄の悪魔たちが剣を抜き、互いに斬りかかった。第二圏では、色欲の悪魔たちが誘惑と暗殺を始めた。第三圏では、暴食の悪魔たちが互いを喰らい始めた。第四圏では、強欲の悪魔たちが金と宝を巡って争い始めた。第五圏では、憤怒の悪魔たちが狂ったように殺し合い始めた。第六圏では、異端の悪魔たちが魔法を撃ち合い始めた。第七圏では、暴力の悪魔たちが血の雨を降らせ始めた。第八圏では、詐欺の悪魔たちが罠と策略を巡らせ始めた。第九圏では、裏切りの悪魔たちが背中から刺し始めた。


 ルシファーは、第九圏の宮殿から冷静に状況を見ていた。配下のアザゼルが報告した。

「すでに五十体以上が脱落しました。主に下級悪魔たちです」

 ルシファーは頷いた。

「予想通りだ。弱い者から消えていく。我々は動かない。消耗戦を避ける」

 サマエルが言った。

「しかし、いつまでも待てません。誰かが力をつければ、対抗できなくなります」

 ルシファーは答えた。

「適切なタイミングで動く。今はまだその時ではない」


 サタンは第七圏で、既に十体以上の悪魔を倒していた。

「弱い!弱すぎる!もっと強い奴はいないのか!」

 サタンの怒りのオーラが、周囲を焼き尽くした。小悪魔たちが次々と灰になった。その時、ベルゼブブが現れた。

「サタン、久しぶりだな」

 サタンは笑った。

「ベルゼブブか。お前も俺と戦うのか?」

 ベルゼブブは蠅の群れを放った。

「当然だ。お前を倒せば、俺の格が上がる」

 サタンは炎を放ち、蠅を焼いた。

「やってみろ!」

 二体の悪魔が激突した。炎と蠅が渦巻き、周囲の悪魔たちが巻き込まれて消えた。


 戦いは激しかった。サタンの炎がベルゼブブを焼き、ベルゼブブの蠅がサタンに群がった。だが、決着はつかなかった。やがて、二体は距離を取った。サタンが言った。

「お前、強いな」

 ベルゼブブが答えた。

「お前もな」

 二体は、暗黙の了解で停戦した。今は互いを倒す時ではない、と判断したのだ。サタンは去り、ベルゼブブも別の方向へ飛んでいった。


 アスモデウスは第二圏で、色仕掛けで悪魔たちを次々と罠にかけていた。インキュバスとサキュバスが誘惑し、油断した悪魔を背後から刺す。

「簡単ね。欲望は悪魔の弱点よ」

 アスモデウスは既に二十体以上を倒していた。だが、その時、リリスが現れた。

「アスモデウス、あなたの手口は古いわ」

 アスモデウスは微笑んだ。

「リリス、あなたも色欲の悪魔でしょう。似たようなものよ」

 リリスは笑った。

「似て非なるもの。私は欲望ではなく、恐怖を使う」

 リリスの周りに、闇が広がった。アスモデウスの配下たちが、恐怖に怯えて逃げ出した。


 アスモデウスは舌打ちした。

「厄介ね」

 二体の女性悪魔が対峙した。アスモデウスは魅了の魔法を放ち、リリスは恐怖の魔法で対抗した。光と闇が衝突し、爆発が起きた。煙が晴れた時、二体とも無傷だった。アスモデウスが言った。

「引き分けにしましょう。今はお互いを倒す時じゃないわ」

 リリスは頷いた。

「同意。でも、いずれ決着をつけるわよ」

 二体は背を向けて去った。


 レヴィアタンは第五圏の沼地で、巨大な体を波打たせていた。小悪魔たちが近づくと、レヴィアタンは大口を開けて飲み込んだ。

「嫉妬に狂って死ね!」

 レヴィアタンの体は、飲み込んだ悪魔たちを消化し、力に変えた。既に三十体以上を喰らっていた。その時、アバドンが現れた。

「破壊の化身、アバドンが来たぞ!」

 アバドンは巨大な剣を振りかざし、レヴィアタンに斬りかかった。レヴィアタンは尾で剣を弾いた。

「小賢しい!」

 二体の巨大悪魔が激突した。


 戦いは激烈だった。アバドンの剣がレヴィアタンの鱗を砕き、レヴィアタンの尾がアバドンを叩きつけた。だが、どちらも致命傷には至らなかった。やがて、アバドンは撤退した。

「くそ、硬い!」

 レヴィアタンは勝ち誇った。

「破壊の化身など、所詮はこの程度か」

 だが、レヴィアタンも傷を負っていた。

「回復しないと」

 レヴィアタンは深海に潜って、傷を癒やし始めた。


 マモンは第四圏で、雇った傭兵悪魔たちを使って、効率的に敵を倒していた。

「金で雇った方が、自分で戦うより楽だ」

 マモンは安全な場所から指示を出していた。傭兵たちが次々と敵を倒した。だが、その時、メフィストフェレスが現れた。

「マモン、金で解決するのは限界があるぞ」

 マモンは笑った。

「メフィスト、お前も契約で解決しようとしてるだろう」

 メフィストフェレスは羊皮紙を広げた。

「契約は裏切らない。金は裏切る」

 マモンは金貨を投げた。

「試してみるか?」


 二体の悪魔が対峙した。マモンは傭兵たちを送り込み、メフィストフェレスは契約の鎖で傭兵たちを縛った。

「契約に縛られた者は、逆らえない」

 傭兵たちがマモンに襲いかかった。マモンは驚いた。

「裏切ったのか!」

 メフィストフェレスは笑った。

「金より契約の方が強い」

 マモンは逃げ出した。

「くそ、計算違いだ!」

 メフィストフェレスは追わなかった。

「逃がしてやる。今はまだ殺す時ではない」


 ベリアルは第四圏の隠れ家で、罠を仕掛けて待っていた。

「誰か引っかからないかな」

 罠は巧妙で、気づかずに踏んだ悪魔は即座に消滅した。既に十五体が罠にかかっていた。

「楽でいいなあ。自分で戦わなくて済む」

 だが、その時、バフォメットが現れた。バフォメットは罠を見破り、すべて無効化した。

「怠惰な悪魔め。罠など通用しない」

 ベリアルは面倒くさそうに立ち上がった。

「あーあ、バレたか」


 バフォメットが魔法陣を展開した。

「我が前に跪け!」

 強力な圧力がベリアルを押しつぶそうとした。だが、ベリアルは怠惰の結界を張った。

「面倒くさいから、防御だけしとく」

 圧力が結界に阻まれた。バフォメットは驚いた。

「怠惰の結界だと?そんなもので私の魔法を防げるのか?」

 ベリアルはあくびをした。

「意外と強いんだよね、怠惰って。何もしないことの力」

 バフォメットは攻撃を続けたが、ベリアルの結界は破れなかった。やがて、バフォメットは諦めた。

「無駄な時間だ。他を狙う」

 ベリアルは安堵した。

「助かった。本気で戦うの面倒だったし」


 酒呑童子は第七圏で、鬼たちと大暴れしていた。

「うおおお!楽しいぜ!」

 酒呑童子の金棒が、悪魔たちを次々と粉砕した。茨木童子も隣で暴れていた。

「親分、こっちも倒しましたぜ!」

 酒呑童子は笑った。

「おう、いいぞ!」

 既に四十体以上を倒していた。その時、テスカトリポカが現れた。

「東洋の鬼どもか。アステカの神の力を見せてやろう」

 テスカトリポカが黒曜石の鏡を掲げると、鏡から黒い光が放たれた。


 酒呑童子の周りの鬼たちが、次々と石化した。

「なんだこれは!」

 酒呑童子は酒を飲んで力を高めた。

「やるじゃねえか!」

 酒呑童子が金棒を振り下ろすと、地面が割れた。テスカトリポカは素早く避けた。

「力だけの野蛮人め」

 テスカトリポカが魔法を放つと、酒呑童子の体が重くなった。

「重い!何をした!」

 テスカトリポカは笑った。

「運命の重さだ。お前の運命は、ここで終わる」

 だが、酒呑童子は笑った。

「運命?そんなもん、力で壊してやる!」

 酒呑童子が渾身の力で金棒を振ると、魔法が破れた。テスカトリポカは驚いた。

「馬鹿な!」


 二体の戦いは激しかった。だが、決着はつかなかった。やがて、玉藻前が現れた。

「あら、面白そうなことしてるわね」

 玉藻前の九つの尾が、美しく揺れた。酒呑童子は笑った。

「玉藻か。お前も参加するのか」

 玉藻前は微笑んだ。

「当然よ。私が勝つわ」

 玉藻前が妖術を放つと、幻影が現れて酒呑童子とテスカトリポカを惑わした。二体は混乱した。玉藻前は笑った。

「男たちは単純ね」

 そして、玉藻前は姿を消した。


 バーバ・ヤーガは第六圏で、毒薬を撒き散らしていた。

「死ね、死ね、みんな死ね」

 毒に触れた悪魔たちが、次々と倒れた。バーバ・ヤーガは既に二十五体を倒していた。その時、ルシファーの配下のアザゼルが現れた。

「老婆、お前の毒は通じないぞ」

 アザゼルは堕天使の力で毒を浄化した。バーバ・ヤーガは舌打ちした。

「堕天使め。聖なる力の残滓がまだあるのか」

 アザゼルは剣を抜いた。

「お前を倒して、主に献上する」


 バーバ・ヤーガは箒に乗って空中に逃げた。

「追いつけるかな?」

 アザゼルは翼を広げて追った。空中戦が始まった。バーバ・ヤーガは魔法を次々と放ち、アザゼルは剣で防いだ。戦いは拮抗していた。だが、バーバ・ヤーガは老獪だった。

「若造が。経験の差を見せてやろう」

 バーバ・ヤーガが呪文を唱えると、アザゼルの動きが遅くなった。

「老化の呪いだ!」

 アザゼルは抵抗したが、体が重くなった。バーバ・ヤーガは笑った。

「さあ、死ね」

 だが、その時、ルシファーが現れた。


「私の配下に手を出すな」

 ルシファーの光が、バーバ・ヤーガの呪いを破った。アザゼルは復活した。バーバ・ヤーガは驚いた。

「ルシファー!」

 ルシファーは冷たく言った。

「老婆、お前の時代は終わった」

 ルシファーが剣を振ると、光の刃がバーバ・ヤーガを斬った。バーバ・ヤーガは悲鳴を上げて消えた。ルシファーは言った。

「一体目」

 アザゼルは頭を下げた。

「ありがとうございます、主」

 ルシファーは頷いた。

「油断するな。まだ始まったばかりだ」


 一方、サタンは第五圏で、レヴィアタンと再び戦っていた。

「お前を倒せば、俺が最強だ!」

 サタンの炎がレヴィアタンを焼いた。レヴィアタンは怒りで吠えた。

「貴様ごときに負けるか!」

 レヴィアタンの尾がサタンを叩きつけた。二体の戦いは、周囲を破壊し尽くした。だが、その時、ベルゼブブが再び現れた。

「お前ら、邪魔だ」

 ベルゼブブが疫病の雲を放つと、サタンとレヴィアタンの両方が苦しみ始めた。

「くそ、ベルゼブブ!」

 サタンは炎で疫病を焼き、レヴィアタンは水で洗い流した。


 三体の大悪魔が激突した。戦いは凄まじかった。炎、水、疫病が渦巻き、地獄が揺れた。だが、決着はつかなかった。やがて、三体は同時に疲弊した。サタンが言った。

「くそ、埒が明かない」

 ベルゼブブが言った。

「一旦休戦するか」

 レヴィアタンが言った。

「同意だ」

 三体は、暗黙の了解で停戦した。今は互いを倒せないと判断したのだ。


 時間が経ち、悪魔の数は減っていった。二百体いた悪魔は、百体、五十体、三十体と減少した。残った悪魔たちは、いずれも強者ばかりだった。七大悪魔、リリス、バフォメット、メフィストフェレス、アザゼル、酒呑童子、玉藻前、テスカトリポカ、そして他の強力な悪魔たち。


 ルシファーは、そろそろ動く時だと判断した。

「アザゼル、サマエル、集合しろ」

 配下たちが集まった。ルシファーは言った。

「これから、計画通りに動く。まず、弱った敵を狙う。サタン、ベルゼブブ、レヴィアタンは疲弊している。今が好機だ」

 アザゼルが言った。

「しかし、彼らは強力です」

 ルシファーは微笑んだ。

「だからこそ、策を使う」


 ルシファーは、メフィストフェレスに接触した。

「メフィスト、取引をしよう」

 メフィストフェレスは興味を示した。

「どんな取引だ?」

 ルシファーは言った。

「お前の契約の力を貸してくれ。代わりに、お前を最後まで攻撃しない」

 メフィストフェレスは考えた。

「悪くない。だが、最終的には戦うことになる」

 ルシファーは頷いた。

「その時はその時だ。今は共闘しよう」

 メフィストフェレスは羊皮紙を広げた。

「契約だ。破れば、地獄の業火に焼かれる」

 ルシファーはサインした。

「構わない」


 ルシファーとメフィストフェレスは、サタンを狙った。サタンは疲弊していた。ルシファーが現れると、サタンは笑った。

「ルシファー、やっと来たか」

 ルシファーは言った。

「サタン、お前は強い。だが、疲れている」

 サタンは認めた。

「確かにな。だが、お前を倒すくらいの力はまだある」

 ルシファーは首を横に振った。

「一人ではない」

 その時、メフィストフェレスが契約の鎖をサタンに巻きつけた。

「動くな、サタン」

 サタンは驚いた。

「メフィスト、貴様!」


 サタンは抵抗したが、契約の鎖は強力だった。ルシファーが剣を抜いた。

「さらばだ、サタン」

 ルシファーの光の剣が、サタンを貫いた。サタンは叫んだ。

「くそ、ルシファー!貴様を許さん!」

 サタンは消滅した。ルシファーは冷たく言った。

「二体目」

 メフィストフェレスは笑った。

「いい仕事だった」

 ルシファーは頷いた。

「次だ」


 次に、ルシファーとメフィストフェレスは、ベルゼブブを狙った。ベルゼブブも疲弊していた。

「ルシファー、メフィスト、二人がかりか」

 ルシファーは答えた。

「効率的だ」

 メフィストフェレスが契約の鎖を放ち、ルシファーが光の剣で斬りかかった。ベルゼブブは蠅の群れで防御したが、ルシファーの光が蠅を焼いた。

「くそ、光は蠅の天敵だ!」

 ベルゼブブは必死に抵抗したが、二対一では不利だった。やがて、ルシファーの剣がベルゼブブを貫いた。ベルゼブブは呻いた。

「くそ、策略に負けたか」

 ベルゼブブは消滅した。ルシファーは言った。

「三体目」


 同様に、ルシファーとメフィストフェレスは、レヴィアタンを狙った。レヴィアタンは巨大で強力だったが、疲弊していた。二体がかりの攻撃に、レヴィアタンは徐々に追い詰められた。

「くそ、卑怯者め!」

 レヴィアタンは吠えたが、やがて力尽きた。ルシファーの剣が、レヴィアタンの心臓を貫いた。レヴィアタンは断末魔を上げて消えた。ルシファーは言った。

「四体目」


 残りの悪魔たちは、ルシファーとメフィストフェレスの強さに震え上がった。だが、まだ強者は残っていた。アスモデウス、マモン、ベリアル、リリス、バフォメット、アバドン、酒呑童子、玉藻前、テスカトリポカ。そして、ルシファーの配下のアザゼルとサマエル。


 アスモデウスとリリスは、女性悪魔同士で同盟を結んでいた。

「ルシファーは危険ね。協力しましょう」

 リリスは頷いた。

「同意。まず、ルシファーを倒す」

 二体は、ルシファーに挑んだ。アスモデウスが魅了の魔法を放ち、リリスが恐怖の魔法を放った。だが、ルシファーは動じなかった。

「色欲も恐怖も、私には通じない」

 ルシファーは堕天使の誇りで、すべての魔法を無効化した。


 アスモデウスとリリスは驚いた。

「なんて強さ!」

 だが、諦めなかった。二体は協力して、物理攻撃に切り替えた。鞭と爪でルシファーを攻撃した。ルシファーは剣で防いだが、二対一は厳しかった。その時、メフィストフェレスが助けに入った。

「契約通り、協力するぞ」

 メフィストフェレスがリリスを契約の鎖で縛り、ルシファーがアスモデウスを斬った。アスモデウスは悲鳴を上げて消えた。

「五体目」

 だが、リリスは契約の鎖を破った。

「この程度の契約、破れるわ!」

 リリスは逃げ出した。ルシファーは追わなかった。

「逃がしてやる。まだ他がいる」


 マモンは、金で雇った新たな傭兵たちと共に、ルシファーに挑んだ。

「今度は裏切らないように、契約を結んだ」

 だが、メフィストフェレスが笑った。

「私の契約の方が上だ」

 メフィストフェレスが契約を上書きすると、傭兵たちは再びマモンを裏切った。マモンは叫んだ。

「また裏切られた!くそ!」

 マモンは逃げ出したが、ルシファーが追いついた。

「マモン、金では買えないものがある」

 ルシファーの剣が、マモンを斬った。マモンは消滅した。

「六体目」


 ベリアルは、怠惰の結界に隠れていたが、ルシファーに見つかった。

「ベリアル、隠れても無駄だ」

 ルシファーが結界を破ると、ベリアルは観念した。

「面倒くさいなあ。降参するよ」

 ルシファーは容赦しなかった。

「降参は認められない」

 ルシファーの剣が、ベリアルを貫いた。ベリアルは呟いた。

「やっぱり、面倒くさかった」

 ベリアルは消えた。

「七体目」


 バフォメットは、儀式の力でルシファーに対抗した。

「我が崇拝者たちの力を受けよ!」

 強力な魔法がルシファーを襲った。だが、ルシファーは堕天使の光で魔法を打ち消した。

「崇拝など、所詮は虚構だ」

 ルシファーの剣が、バフォメットを斬った。バフォメットは叫んだ。

「我が神よ!」

 バフォメットは消えた。

「八体目」


 アバドンは、破壊の化身として、ルシファーに挑んだ。

「破壊、破壊、破壊!」

 アバドンの剣がルシファーを襲った。戦いは激しかった。だが、ルシファーの方が上手だった。ルシファーの剣が、アバドンの剣を砕き、アバドンを斬った。アバドンは叫んだ。

「破壊が、破壊された!」

 アバドンは消えた。

「九体目」


 酒呑童子は、茨木童子と共に、ルシファーに挑んだ。

「おう、ルシファー!やってやろうぜ!」

 酒呑童子の金棒と、茨木童子の腕が、ルシファーを襲った。だが、ルシファーは冷静に二体を相手にした。光の剣が二体を翻弄した。茨木童子が先に倒れた。

「親分、すまねえ」

 茨木童子は消えた。酒呑童子は怒った。

「茨木!許さん!」

 酒呑童子は全力で攻撃したが、ルシファーには及ばなかった。ルシファーの剣が、酒呑童子を貫いた。酒呑童子は笑った。

「面白かったぜ」

 酒呑童子は消えた。

「十体目、十一体目」


 玉藻前は、妖術でルシファーを惑わした。

「幻影の中で迷いなさい」

 無数の幻影がルシファーを囲んだ。だが、ルシファーは冷静だった。

「幻影など、見破れる」

 ルシファーが光を放つと、すべての幻影が消えた。本物の玉藻前が姿を現した。

「さすがね」

 玉藻前は九つの尾で攻撃したが、ルシファーの剣がすべて斬り落とした。玉藻前は悲鳴を上げて消えた。

「十二体目」


 テスカトリポカは、黒曜石の鏡でルシファーの運命を操ろうとした。

「お前の運命は、ここで終わる」

 だが、ルシファーは笑った。

「運命など、自分で決める」

 ルシファーが剣を振ると、鏡が砕けた。テスカトリポカは驚いた。

「馬鹿な!」

 ルシファーの剣が、テスカトリポカを斬った。テスカトリポカは呟いた。

「運命が、狂った」

 テスカトリポカは消えた。

「十三体目」


 残った悪魔は、ルシファー、メフィストフェレス、リリス、アザゼル、サマエルの五体だった。ルシファーは配下に言った。

「アザゼル、サマエル、よくやった。だが、これからが本番だ」

 アザゼルとサマエルは頷いた。ルシファーは、まずリリスを狙った。

「リリス、逃げ切れると思ったか?」

 リリスは覚悟を決めた。

「やってみなさい」

 リリスが恐怖の魔法を放ったが、ルシファーには通じなかった。ルシファーの剣が、リリスを斬った。リリスは微笑んだ。

「さすがね」

 リリスは消えた。

「十四体目」


 残りは四体。ルシファー、メフィストフェレス、アザゼル、サマエル。ルシファーは、メフィストフェレスを見た。

「メフィスト、契約は終わりだ」

 メフィストフェレスは頷いた。

「そうだな。最初から分かっていた」

 メフィストフェレスが契約の鎖を放ったが、ルシファーは光で焼き切った。

「契約も、光の前には無力だ」

 ルシファーの剣が、メフィストフェレスを貫いた。メフィストフェレスは笑った。

「面白い取引だった」

 メフィストフェレスは消えた。

「十五体目」


 残りは三体。ルシファー、アザゼル、サマエル。ルシファーは配下に言った。

「お前たちは、よくやった。だが、王は一人だけだ」

 アザゼルとサマエルは悲しんだ。

「主よ、私たちを」

 ルシファーは首を横に振った。

「これが運命だ」

 ルシファーの剣が、アザゼルとサマエルを斬った。二体は涙を流して消えた。

「ありがとうございました、主」

「十六体目、十七体目」


 ルシファーだけが残った。地獄全域に、鐘の音が鳴り響いた。深淵の主の声が響いた。

「勝者、ルシファー。お前が、地獄の唯一の王だ」

 ルシファーは、玉座の間に戻った。そこには、深淵の主が待っていた。深淵の主は言った。

「おめでとう、ルシファー。お前は、すべての悪魔を倒した」

 ルシファーは頷いた。

「これで、地獄は一つになる」


 だが、深淵の主は笑った。

「だが、一つ問題がある」

 ルシファーは眉をひそめた。

「何だ?」

 深淵の主は言った。

「王になるには、私を倒さなければならない」

 ルシファーは驚いた。

「貴様も戦うのか?」

 深淵の主は頷いた。

「当然だ。私こそが、真の地獄の支配者だ」


 深淵の主が姿を変えた。光と闇が渦巻き、巨大な姿が現れた。それは、すべての悪魔の力を合わせたような存在だった。ルシファーは覚悟を決めた。

「ならば、戦うしかない」

 ルシファーと深淵の主の戦いが始まった。光と闇が激突し、地獄が揺れた。戦いは壮絶だった。ルシファーの剣が深淵の主を斬り、深淵の主の闇がルシファーを飲み込もうとした。


 戦いは、何時間も続いた。だが、徐々にルシファーが押し始めた。堕天使の誇りと、すべての戦いで得た経験が、ルシファーを強くしていた。ルシファーは叫んだ。

「私は、地獄の王になる!」

 ルシファーの剣が、深淵の主の核を貫いた。深淵の主は叫んだ。

「馬鹿な!」

 深淵の主は消滅した。


 地獄が静まり返った。ルシファーは、玉座に座った。鐘の音が鳴り響き、地獄全域に声が響いた。

「新たな地獄の王、ルシファー!」

 地獄のすべての魂が、ルシファーに跪いた。ルシファーは、ついに地獄の唯一の王となった。


 だが、ルシファーは複雑な心境だった。多くの悪魔を倒し、配下すらも犠牲にした。王座は血で染まっていた。ルシファーは呟いた。

「これが、王の座か」

 孤独だった。誰も信じられる者はいなかった。すべてを失って、王座を得た。ルシファーは、地獄を見渡した。荒廃した地獄。悪魔たちの亡骸。そして、静寂。


 ルシファーは、深いため息をついた。

「王とは、孤独なものだ」

 だが、それでも、ルシファーは前を向いた。地獄を再建し、新たな秩序を築く。それが、王の責務だ。ルシファーは、玉座から立ち上がった。

「さあ、始めよう。新しい地獄を」

 ルシファーの号令と共に、地獄の再建が始まった。悪魔バトルロワイアルは終わり、新しい時代が幕を開けた。

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水が死んだ日

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