血とムクロと国盗りと
これから2日に一度の投稿になります。
「……………………つまり詳細を纏めると?」
「襲われたから鏖殺しにした。反省も後悔もしていない」
夜が明けた後、俺達は事情聴取を受けていた。
場に残されたのは生者と不死者と亡者のみ。
死屍累々と広がる惨状、死人に口なし。
つまり証人は俺たちだけ。
「………話によると、襲撃者の中にシノビがらしいが?」
「3人いたな」
「……………コウガか………それともイガか………………」
頭を抱える鴉羽の少年。
甲賀と伊賀………日本かよ。
「なぁ、あの連中の正体に心当たりはあるか?」
「………………申し訳ない」
分からないなら仕方ないか。
「………隊長殿、彼らの目的は一体?」
「うちのメンバーを攫おうとしていたな」
本当に何故か、リリアナがターゲットにされていた。
ケモ耳に執着でもあるのだろうか。
「………………女中殿は黒獅子の系譜の筈。ムクロ様の怒りを買う様な愚行を何故…………?」
新しい人物名が出てきた。
「ムクロ様とは?」
「先代の侍大将だった御方だ。並外れた武芸者であられたが、30年ほど前の国盗り戦の際にご隠居されてな。『ムクロが来た』の一報で軍勢が総崩れになるような、一騎当万の鎧武者。己も討ち合ったが………いやはや、よく生き延びたものだ」
マジモンの怪物だった。
というか、目の前の少年が30年前の戦に参加していたことが理解できない。
「………因みにアンタは何歳だ?」
「今年で162だな。…………………首級と武勲を積み上げた獣人は不定命妖と化す。よくある事だ」
「よくあるのかよ」
それより気になることが一つ。
「ムクロとリリアナの繋がりについて教えてもらえるか?」
「………ムクロ様が隠居されていたのが黒獅子の村だ。物静かな辺境の地ゆえ、永い生を過ごすには良い土地だったのだが………………………」
「滅びた、と」
「そう言う事だ………………もし本人が望むのであれば、町の外の座敷牢へ行かせてやれ。数年前からそこに居を構えているはずだ」
「すまない、助かった」
鴉羽の少年に礼を言って、場を後にした。
「で、何か分かったことは?」
「敵の正体は謎の中。そのほか一切の事は不明です」
「役立たず」
急遽割り当てられた部屋で作戦会議。
取り敢えず訳を話す。
「……………お兄ちゃん。砦を奪い返してから『教会』とやらをぶっ潰せばいいんじゃないかな?」
「それだ」
「あの、レン君?流石にソレは厳しいん」
「………鏖殺しにしよう」
「ギンカちゃん?!」
「レンさん。もしよろしければ座敷牢に行かせて貰えませんか?久し振りに、ムクロのお爺ちゃんに会いたいので」
「そうするか」
実際、どんな奴なのか興味はあるし………………少なくとも悪いようにはならないだろう。
打算を抱えて街を出た。
町を囲む防壁から幾分か離れた空き地に構えられた、一軒の平屋。
かなり広い木造建築。
中に入りたいが、勝手に入っていいものか。
「ムクロさん!リリアナです!黒獅子の里にいた」
「入ってこい」
リリアナの声を遮って、嗄れ声が聞こえてきた。
入っていいみたいだ。
家の内に脚を踏み入れた。
家の中は思ったより明るかった。
等間隔で並んだ蠟燭の、仄暗い火に照らされて佇む一人の骸。
羽織を着込んだ髑髏という、異様な出で立ちの老人。
纏った気配からして、恐らく俺の同類。
「………………リリアナ……生きていたか」
「はい………色々あって、今は奴隷をしています」
「そうか……………すまなかった。あの時、村を守れなくて」
「………ムクロさんは悪くありませんから」
「……………すまない」
場に流れる重たい沈黙。
澱んだような空気の中、何か言葉を発しようとして………………………
「………小僧、儂と同じ死人か」
睨まれた。
死人というのはきっと不死者の事なんだろう。
「…………………ついて来い。稽古ぐらいつけてやる」
ありがたい。
渡された道着を着込み、鍛練場に入る。
目の前には、刃渡り1メートル半ほどの太刀を腰に下げたムクロの姿。
一礼を交わし、愛刀を抜き放つ。
壁際で手を掲げるリリアナ。
審判役ありがとうございます。
目を見開き、大太刀を大上段に構えて───────────────
「始めッ!」
「──────ッ」
ムクロが霞むように消えた。
尋常じゃない速さで放たれた居合斬りを、ほとんど反射神経で切り結ぶ。
圧力が消え、上からの一閃。
火花と金属音を響かせ、全力で弾く。
真下で走る剣光。
顎を刈りに来たそれを、半歩引いて躱す。
刃を水平に構えて突き込み、あっさりと避けられる。
勘のみで繰り出した切先が、横面の一撃を僅かにずらす。
振り上げた刀身を全力で斬り下ろし、振り返って背後からの一太刀を、掲げた太刀で受け流す。
薄皮1枚切り裂かれながらも振るった刃が、相手の羽織を斬り落とす。
勝負をつけるべく大きく後ろに退り、腰だめに構えた剛刃を唸らせて、吹き飛ばされた。
爆発的に膨れ上がる、どす黒い奔流。
腰を落とし、柄に掛けられた右の手。
伽藍洞の眼窩から、熾火の様に紫焔が噴き出し─────────────
「【頸骸流、秘奥之太刀:赫巴残月】」
───────────────神速。
そう言い表すのが最も相応しいような、横薙ぎの一閃。
奇跡のような反応速度でソレを受けきり、反撃に出ようとして─────────────赤く染まった一撃に、首を刎ねられた。
???「MYNAAAAAMEME!!IZGYOUBUMASATAKA ONINIWA!!!」




