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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
故郷と龍と信仰と

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組織と薬と実践と

遅くなったかもしれない。

 大書庫の机に突っ伏す俺。

 …………不死者が発狂する仕組みについて調べたらコレだ。

 難しすぎてほとんど理解できなかった。

 なんでも暴走状態に突入するとか再生能力が跳ね上がるとか自分の存在の確立が云々とか精神の均衡の崩壊が云々とか書いてあったが、よくわからん。

 そして机の上に置かれた、一本の古い万年筆。

 今際の吸血鬼から託された品。

 「あの毒蟲共を滅ぼしてくれ」という妄執にも似た台詞。

 ペンに刻まれた、天を仰ぎ見る蛇蝎の紋章。

 散々漁りまくって探し出した、反社会的勢力のブラックリストの一ページ。

 そこに描かれた同じモノ。全く、毒蟲とはよく言ったものだ。


「〔外神教会〕か………………これまたえぐい連中だなぁ、オイ」


 児童誘拐や違法薬物の生産売買、人体実験に暗殺謀殺鏖殺とやりたい放題。

 なんでも既存の信仰ではなく、この世界の外から来た神を奉っているらしいが、やっていることが完全にヤバい宗教団体………というよりただの反社会的勢力。

 ヤのつく自由業は異世界にて健在という事なのだろう。

 関わらない方が良さそうだが、約束したからには成し遂げよう。

 その為にも……………


「…………………やっぱり作っておくか」


 机に広げた一冊の古本。

 埃臭いソレに書かれた調合の手順(レシピ)

 正直、全く気が進まないが、保険は必要だろう。

 必要な物品を揃えるべく、魔王様に会いに行った。





















 魔王様に怪訝な顔をされながらも、一通りの素材を入手してきた。

 中には御禁制のヤバイ薬とか劇薬指定のヤバイ物もあるが、気にしてはいけない。

 枝付きフラスコにアルコールランプ、乳鉢と乳棒。硝子の小瓶に小型の抽出器。


「さて、始めるか」


 目当ての物を作り始める。

 乳鉢に素材を入れていく。

 ノコギリソウに鴈来紅、ロベリアの花弁。

 薬包紙から竜涎香と屍蠟を少量取り出し、乳棒で擂る。

 小型のナイフを取り出し手首に押し付け────掻き切る。

 溢れ出す黒い血液を乳鉢に受け取り、練り合わせる。

 どす黒い丸薬を抽出器に据え付けられたフラスコに入れ、冷却管にも血を注ぐ。

 アルコールランプに火を点け、器具の下に置く。

 コレを放置しておけば目当てのブツ………不死者専用の筋力増強剤が出来るのだとか。

 待ち時間を利用して本命を作ろう。

 使った道具を念入りに洗浄して、乾いた布で拭く。

 口紅水仙にマンドラゴラ、弟切草にアーティチョークとアルメリア。

 薊にパセリ、ダリアに桑の実を投下。

 バジリスクの眼球に、御禁制の蛇頭鬼女(ゴルゴン)の毒牙。

 山トリカブトの根に俺の血。

 全部纏めて磨り潰して、練り混ぜて、枝付きフラスコにぶち込む。

 コルクで蓋をして小瓶を取り付け、アルコールランプの火にかける。

 冷却器から蒸気が吹き上がった。

 筋力増強剤の抽出が終わったようだ。

 フラスコの中に満ちた赤黒いソレを、硝子瓶に詰める。

 まだ余っていたので更に詰める。

 合計で3本も出来た。

 本来なら死霊術士(ネクロマンサー)が自身の眷属を強化するために使うものだが、自分自身に打っても問題無いだろう。

 先にセットしていた小瓶の中で泡立つ、黒い粘体。

 もう出来たのか。

 というか思ったより量が少ないな。

 瓶一本分しかないとは。

 だがそれでも切り札であることに変わりはない。

 大事に使おう。


「……………………レン。これは何?」

「おい待て弄るな」


 いつの間にか隣にいたギンカが、小瓶を振り回していた。

 割られても困るので取り敢えず取り上げる。

 何故か残念そうな顔をするギンカ。


「ねぇ、これ何?」

「自己発狂用の薬」

「今すぐ捨てろ」

「切り札なんだが?」


 何でも、死霊術士が自分の眷属を使い捨てる目的で切り札として作る禁薬らしいが………まぁ、問題無いだろう。

 うん。


「レン、これあげる」


 ギンカに桑の実を渡された。


「………………………ソレ、お前の物じゃな」

「いいから喰え」


 口に叩き込まれた。

 視認できない速度で。

 めっちゃ渋い。


「………美味しい?」

「不味いな」


 無言で殴られた。

 理由が分からない。


「………………ねぇ、コレ(桑の実)の花言葉、知ってる?」

「知るかよ」

「『一緒に死んで』だってさ」

「重いな」


 そもそも何故このタイミングでそれを言う。


「……………………レン、模擬戦しよう?」

「なんでそうなる」

「………………どうする?」


 唐突過ぎて状況が理解できないが、確かに、ここ最近はまともに動いていなかった。

 呪詛の実戦訓練も兼ねてここは………………………


「わかった」


 大人しく訓練場に向かった。



























 修復の終わっていない訓練場で、ギンカと向き合う。

 壁際で不安げに立つリリアナ。

 窪みに亀裂、諸々の残骸。

 不安要素は多いが、それを考えてビビっても意味は無い。

 漢は度胸、ネバーギブアップ。

 詰まる所……………………………


「は、始めッ!!」

「突撃イィイイィィィィ!!!」

「ッ?!」


 リリアナの掛け声と同時に行呪を発動、最高速度で前進して─────────転げながら盛大に吹き飛んだ。

 流石にコレの制御は無理だったか。

 背中に突き刺さる『なんだコイツ』という視線が痛い。

 全身の発条をフル活用して跳ねあがり、体勢を低くして身構え。


「【叩き殺せ】」


 不可視の一撃をギリギリで躱す。

 太刀を抜き放ち、下段に構える。

 大身の刃を揺らめかせ、前方に傾くように踏み込んで───────────────行呪。

 足の裏で地面を砕きながら突貫。

 上体の捩じりで無理矢理旋回しながら薙ぎ払う。

 手応え、無し。

 影が落ちて上を見上げる。

 華麗に宙を舞うギンカ。

 勢いよく振り落とされた拳を刃で受け止め、受け流す。

 肉を軋ませ、腕を振り翳して、叩きつける。

 着地の瞬間を狙い澄まして身体強化を使い、体を引き絞るように切先を照準し───────


「【芍薬】」


 ───────突く。

 繰り出された峰を踏み付けて、ギンカが跳んだ。

 この化け物め。

 空気を引き裂きながら振るわれた剛腕を跳ね上げる。

 太刀を肩に担ぎ、右腕に力を込めて。


「【轟呪】!」


 発達し、硬化し、黒い靄を纏った掌を()()()()()()叩きつける。

 一拍の後、爆音とともに地面が吹き飛んだ。

 基本的な呪詛の一つ、轟呪。

 武具に呪詛を込めることで、瞬間的に膂力を上昇させる技。

 消耗も激しいが、一撃の威力を上げるだけなら丁度良い。

 反動に耐え切れずに腕が拉げるが関係ない。

 土煙の中からギンカを引き摺り出そうとして──────────────


「【守手繭】」


 ──────倒れ伏すギンカの代わりに現れた、黒い腕の塊。

 交互に掴み合い、握り合うように絡み付いたそれらが解け───────────────視界が乱回転した。

 胸を走る鈍い痛み。

 天地がすり替わって体が宙を舞い。


「……………私の勝ち?」

「そうだな」


 仰向けに倒れ込む俺に跨ったギンカ。

 俺の心臓部に突き立てられた肉厚の赤刃。

 ………………まさか、あの状況から逆転されるとは思わなかった。

 差し伸べられた手を取り、立ち上がる。


「お二人さん!もうそろそろお昼ご飯にしますよ!!」


 大声で俺達を呼ぶリリアナ。

 天頂で忌々しく太陽。

 もうこんな時間か。

 飯を喰うため、部屋に帰った。



メンソール中毒の症状がガガガガ

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