呪いと修羅と帰郷と
Gルート………エマ………修羅エンド………うっ、頭が。
魔王城の大書庫。
不死者─────吸血鬼──────について書かれた本を片っ端から搔き集める。
不死者の成り立ちに主だった特徴、オネットさんが言っていた『発狂』とやらについて。
知っておかなければならないことが多すぎて心が折れそうだが、やるしかない。
何も知らずに地雷を踏み抜いて死亡とか、シャレにもならない。
両開きのページにびっしりと刻まれた、難解な文脈。
気が滅入る。
この中から自分が使えるものを抜き出して、組み合わせる地獄の作業。
持ってきたノートに書き写し始めた。
夕暮れの訓練場に倒れ伏す。
あちこち地面が抉れたり吹き飛んだり罅割れたりと、ズタボロの地面。
感覚を掴んで調子乗って実践したらコレだ。
余力もクソも残っちゃいない。
必死こいて覚えた各種魔眼に呪詛による強化。
そして………………白鯨式。
恐らく、昨日食べたアレのせいなんだろうが…………………
白鯨式LV7:泡界………消耗を対価に、自身を中心とした結界を展開、他の白鯨式の消耗を軽減し、術者の能力を昇華させる。白鯨式の基礎にして根幹。だからこそ扱いには注意が必要。
………………一気に強くなった気がする。
というか、こんな便利技の解放がLV7とか、白鯨様も意地が悪すぎる。
コレがあれば他の連中も楽に殺せたんだが………………………今更か。
「ねぇ、お兄ちゃん。リリアナちゃんがご飯作って……………………なにこれ?」
呼びに来たアヤメが訓練場の惨状を見て口を噤んだ。
仕方ないか。
投げ渡された輸血パックを一気に飲み干す。
頑張って起き上がり、ふらつく足で立つ。
「悪い、迷惑かけた」
「いや…………それは別にいいんだけどさ……………何があったの?」
「あぁ………ちょっと見ていてくれや」
脚を発達させて鉤爪を伸ばす。
背中が裂けて肉が膨れ上がる。
血管を流れる黒い粘体に朱が混じりそして───────────────
「【行呪】」
ドン、と音がして空間が爆ぜ、俺が壁にめり込んだ。
呪詛に分類される技の一つ、行呪。
呪いによって爆発的な加速を生む技。
………なのだが……………
「…………………何がしたかったの?」
「遠距離から攻撃されるより早く近づいて殴りたかった」
「実際はどうなったの?」
「クロックア〇プが速すぎて制御できない」
周りの物がほとんど見えない上に速すぎるから、ちょっとした段差や石ころで蹴っ躓いてこける。
よって穴凹が出来る。
めげずに加速して穴凹で躓いて穴凹が出来る。
止まらない負の連鎖。
「…………はぁ………いいからもう行くよ?ご飯冷めちゃったら嫌だし」
「わかってるよ」
血を振り払い、部屋に戻った。
夕食の後、魔王様に呼び出された。
理由は………………どうせ碌なもんじゃない。
妙に長く感じる廊下を渡り、執務室に入る。
いつもの笑みを貼り付けた魔王様。
「レン君、昨日ぶりだね。調子はどうだい?」
「遠距離攻撃手段ください」
「無理だね」
絶望だけが残った。
「一週間。一週間、休みを出そう」
希望が見えた。
「流石に連続労働が過ぎるしね。休みが終わったら、また働いてもらうけど」
「ありがとうございます…………………因みに、次の任務は?」
「獣国の辺境砦の奪還。下手人の正体は不明、規模も不明、ついでに目的も不明」
「……………今すぐ行くべきなんじゃ」
「向こうの方でも軍議とか軍議とか軍議とかしてるから、今の段階で君たちを送り込んでも無駄なんだよねぇ…………………」
気だるげに言う魔王様。
「つまり休んでいいんですね?」
「そういうこと……………………それとレン君。今回はリリアナちゃんを連れていくように」
非戦闘員を戦地に連れていけと言う魔王様。
「あの、リリアナは戦闘要員じゃないんですが………………」
「向こうのトップも、自分たちの同胞が居ると話しやすくなるだろうしね」
「…………………わかりました」
些か腑に落ちないが仕方ない。
了承だけして部屋に帰った。
「ねぇ、お兄ちゃん。なにやらかしたの?」
「リリアナの故郷に行くことになった」
「うっそマジで!ねぇリリアナちゃん!ご両親に挨拶ってどうしたらいいのかな?!」
「…………アヤメさん、もう死んでいます」
一瞬で部屋の空気が重くなった。
こういう時に何を言えばいいのかわからない。
「………………レン。どうにかしろ」
「無茶言うな………オネットさん、何とかしてください。年上の威厳を示し」
「僕も無理だね」
終わった。
いや、本当に。
修羅の如き圧を発するリリアナ。
膝の震えが止まらない。
「そうだ、レンさん。今回は私も一緒にいきますね?」
「…………本気か?」
「本気ですね。せっかく故郷に帰れるんですから」
真っ直ぐな目で俺を見据えるリリアナ。
本人が言うんだからソレでいいんだろう。
「おいゾンビ、出発は何日後になった?」
「一週間後だな」
「ならいい。色々と準備に専念できる」
「そうだな」
呪い関連の諸々を出来る限り身に着けておきたい。
特に行呪はコントロールして使わないと最悪自爆するからマズい。
白鯨式の熟練も含めてやることが多すぎるが、備えぐらいはしておきたい。
そんな事を考えて、明日からの計画を練った。
オンドゥル語を覚えたい。




