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『異世界狂騒録』~兄妹揃って異界に飛ばされたので好き勝手に生きる~  作者: 御星海星
幕間劇

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サヰドヱピソード:海戦決着

イベント回終わり!閉廷!解散!

 鹵獲してきたダツ数匹の鰓を突き刺し、海水で血を抜く。

 鱗を削いで頭を落として下準備完了。

 頭部の付け根から腹鰭までを切り開き、鉈で臓物を削ぎ落す。

 尾から背骨に沿って刃を入れ、三枚におろす。

 軽く塩を振った身に金串を通し、焚火の傍に設置しておく。

 全員に食わせるには少々量が足りないが、そこは俺が我慢するべきだろう。


「お兄ちゃん、ご飯出来た?」

「もうちょっと待ってくれ」


 いつの間にか近くにいたアヤメに返事を返し、切り身に追加で塩を振る。

 魚の上で弾ける塩の粒を凝視するアヤメ。

 何が楽しいのかわからないが、好きにさせておこう。


「レン、準備が遅い。もっと早く作って」

「無茶言うな」


 魚の皮が黒く焦げる寸前で回収。

 そのまま支給品の平皿に並べる。

 意外とまともに焼けたんじゃなかろうか。

 砂浜に寝っ転がって弩弓の点検を行うオネットさんに、何故か、本当に何故かチェーンソーの整備をするリリアナ。


「…………………いや待て。なんでリリアナがソレ(チェーンソー)の整備を」

「レンさん。少し黙ってください。気が散るので」

「……………………………なぁ、アヤメ。泣いていいか?」

「ダメなんじゃないかな?」

「キモイからやめろ」

「男の子が簡単に泣いたらいけないんだよ?」


 目の端から何か、しょっぱい水が零れ落ちた。





























 昨日一昨日と同じように、海岸線に篝火台を立てていく。

 水平線の彼方に沈みゆくは忌々しい太陽。

 どうせ明日会うがそれでもざまあみろ。

 背嚢には大量の輸血パック。

 渡された書類の龍脈云々の情報が正しければ、恐らく今夜が正念場。

 故に準備は入念に、抜かり無い様に、万全を期す………………


「ねぇ、ギンカちゃん!コレ終わったら一緒にお風呂入ろう?」

「ヤダ………リリアナと一緒に入ればいい」

「私ですか?!……………まぁ、いいですけど………………」


 万全を………


「出来たら僕も混ぜて欲しいな~?」

「いや、アンタぶっちぎりで年上だ」


 ズドンとバカでかい音がして、俺の頭が吹き飛んだ。

 とても良い、しかし目が笑っていない笑顔で、とっつきを構えるオネットさん。

 ………………………逆鱗に触れてしまったようだ。


「レン君?お祈りの時間は必要かな?」

「あのいやちょっと待って」

「来るよお兄ちゃん!!」


 切羽詰まった形相でアヤメが叫んだ直後、場に鈍緑色の極光が満ちた。

 大気がナニカに怯える様に鳴動し脈を打ち震え上がって────────────海岸線が爆裂した。

 尋常じゃない規模の水飛沫が降り注ぐ中、一瞬だけ垣間見えた無数のバケモノ。

 ……………………上等だ。腹を括って敵陣に飛び込んだ。





















 砂浜を疾走する俺の頭上に影が落ちた。

 高々と掲げられた巨大な蟹の鋏。

 勢いよく叩きつけられた10メートル近いソレの真下を潜り抜け、岩石のような甲殻の上を急ぎ、蟹そのものな胴体に飛び乗った。

 虚空から太刀を取り出し、喰剣を使い。


「【芍薬】」


 飛び出た両眼の中央に、全力で突き刺した。

 奇怪な叫び声を上げる蟹。

 刃を捻り、殻の内を掻き混ぜて。


「【牡丹】ッ!!」


 気合一閃、頸を刈り取る。

 崩れ落ちる蟹を足場に、跳び退ろうとして。


「ガァッ?!」


 背後から撃たれた。

 堪らず体勢を崩す俺の脇腹に噛みつく巨大鮫。

 B級映画に帰れ。

 遠くから聞こえてきた、どこかで聞き覚えのある「レンさんごめんなさい!!」という叫び声。

 ………なんだ。ただの誤射かよ。


「ガアアァァアァァァァァアッッ!!」


 雄たけびを上げて肉体を変貌させる。そのまま鮫を圧し折り、空歩で跳躍。

 真下に海蛇を発見。

 太刀の柄を噛み、身体強化を発動して───────────────


「ルォアアァァァ!」


 すれ違いざまに首を斬り裂く。

 悶える蛇の傷に腕を突き込み、臓腑を引き抜いて抹殺。

 右腕を肥大化させたうえで氷で覆い、群がる海産物を殴り殺す。

 肉を食い千切りにきた鮫を、伸ばした骨で突き刺す。

 砂浜めがけて高速で泳ぎ去る巨影。

 何時ぞやの龍亀よりデカいんじゃなかろうか。

 何処かで見覚えのあるソレを、全力で追いかけた。























 海中から躍り出た俺の視界を埋め尽くす、緋と金の閃光。

 宙を舞う業火に海面を迸る雷電。

 なんだこの天変地異。

 そしてこちらに飛んでくる………………蟹の死体。

 流石にアレに潰されたくはないので回避。

 海岸付近から伸びる、無数の触手。

 大木の幹ほどもの太さの、しかしながら馴染み親しんだそれは間違いなく……………………


「タコかよ」


 懐かしいな。

 本当に懐かしい。

 前に喰った明石産の蛸は旨かった。

 ………………ってそうじゃなくて。


「アヤメ、生きてるか?!」

「生きてる!」


 なら問題無いな。

 …………………(アレ)、どうやって喰おうか?

 刺身でガッツリ頂きたいところではあるが食中毒が怖い。

 となると釜茹か、炙るか、シンプルに焼き蛸にするか………悩むな。


「レン君?!見てないで手伝って欲しいんだけど?!」

「……………蛸飯も良いな」

「レンさん?いい加減怒りますよ?」


 底冷えするような、凍えた声音で告げられた処刑宣告。

 ジャキリ、と音がして。

 俺の後頭部に弩弓が突き付けられる。


「おいゾンビ!遊んでないで早く手伝っあぁ?!」


 引き攣った悲鳴が聞こえた。

 海中から伸びた人間の腕ほどの太さの触手が、ギンカに巻き付いていた。

 そのまま向こう側へ引き摺り込まれるギンカ。

 …………………現代日本において触手とエロはほとんど同一の意味合いを持つ。

 なんでも、そのルーツを辿れば江戸後期まで遡るのだとか。

 つまりそれは、日本人男性の思想的根本に()()()()()()が含まれているという事。

 だからこそ、俺が使う触手はエ〇ゲーに出てくるミミズモドキではなく、蛇のような見た目にしているのだが………………うん。

 まぁ、アレだ。

 強調された胸元といい、締め付けられた腰回りといい、結構エロいことになっている。

 かの葛飾北斎ですら何を血迷ったのか海女と蛸のコラボを描いているように、また或いは独自の神話体系を築いたあの人の最大の誤算のように、美少女×海産物の構図に対する耐性が高いどころか寧ろウェルカムな極東民族からすれば………………………タコ足に絡まれる少女というシチュエーションは只のご褒美でしかなく。

 眼福でないと言えば嘘になる。

 というかもっとやれ。


「こっの!バカ!!!」


 ゴキリ、といい音がして首が伸びた。

 錫杖を振り切った体勢のアヤメ。


「お兄ちゃん!ギンカちゃん!ピンチ!!急げ!!!」


 怒髪冠を衝くといった風貌のアヤメが指差した方を見る。

 ガボゴボと音を立てながら沈んでいくギンカ。

 ………………急いで海中に飛び込んだ。





















 海の中、気泡の後を追いかけて潜る。

 無数の触手に絡めとられたギンカの姿。

 意識は無し、生死は不明。

 つまりヤバい。

 右手の爪を伸ばしてタコ足を掻き切り、浮上する。

 2,3度、瞼を震わせたギンカが咳き込みながら目を開け───────────────


「──────遅すぎる、出直してこい」

「酷いな」


 苦笑しながら撤退しようとした瞬間、タコ足に捕らえられた。

 海の奥から更に伸びるタコ足。

 ………躊躇っている暇は無いか。


「ッ、レン!早く何とかしろ!!」

「わかった!」


 自分の足を圧し折って無理矢理脱出し、極太のタコ足に取り付く。

 骨を表面に押し出し尖らせ、刃状に変形させる。

 腕を伸ばして全力で振り回し叩きつけ、足を刈り取る。

 赤い血が滝の様に零れ落ちる、壮観な光景。

 というか蛸のくせに血は赤いんか。

 まぁいいや。

 行き掛けの駄賃にもう一本、タコ足を捥ぎ取ろうとして、衝撃波。

 轟音。

 気付いたら逆さづりにされていた。

 蠢くタコ足。

 アレにやられたのか?

 抱えていたギンカは何とか庇えたようだ。


「おい、ギンカ。生きてるか?」

「危うく殺されかけた」

「そうか…………ちゃんと着地しろよ?」

「え?」


 全身の筋肉を脈動させ、()()()()()()()()()

 呆然とした顔で落ちていくギンカ。

 タコ足に掴まれた方の足に爪を立て、引き千切る。

 刃を纏った腕を振るい、蛸本体を切り刻む。

 追加で足を切断。

 苦し紛れにタコ足が繰り出されるが、どうせ当たらない。

 このまま一気に削り節にしてやる。

 極光を纏った一撃を叩き込もうとして。



















──────────────────────────海が割れた。

 辺りに漂っていた光が急速に強まり、唸り声のような遠吠えのような異音が鳴り響く。

 ナニカから逃げるように藻掻く蛸。

 大気が逆巻き荒れ狂いそして。





 最初、ソレは尖島の様に見えた。

 津波と勘違いしそうな程に巨大な水飛沫が上がり、巨大すぎる鼻っ面が現れた。

 ソレと目が合った気がした。

 俺の身長を遥かに上回るような、血走った眼球。

 苔のこびりついた岩盤のような鱗。

 いつの間にか空には満月が昇っていた。

 朱く濡れた舌が伸び、気付いたら蛸が消えていた。

 バケモノが満足そうに喉を鳴らす。

 食べたんですね。

 バケモノの顎が大きく開かれ、猛烈な風が吹き─────────────嵐の後の様に、タコ足2本が残された。



















「なんか…………………ヤバかったな」


 いや本当に。

 語彙力が消滅した。というか理不尽すぎる。

 あのバケモノと殺りあって勝てる気が微塵もしない。

 砂浜に倒れ伏すギンカと、腰を抜かしたリリアナ。

 無理もない。

 まぁ、誰も死なずに済んだだけ儲けものか。

 我ながら頑張った方だと思う。

 自己満足を抱えて目を閉じ───────────────


「お兄ちゃん、もしかして赦されたと思ってる?」

「レンさん………お祈りは済みましたか?」

「変態ゾンビに死を」

「流石に今回のコレは有罪だよねぇ」


 ………………………………諦めて目を閉じた。




少々はっちゃけた。

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