櫻という麗離人(櫻)
紫と薄いピンクのような玉をもらって、櫻という名をもらうという怒涛の出来事があった後、どうやらあたしはさらわれてしまったらしい。
「こいつ、どうします?」
「離人だからなぁ。きれいだからきっと高く売れるぞ」
さっきからこのようなことをずっと言われているといやでも気が付くというものだ。
とっくに起きているが、状況が把握できるまではと寝たふりを続けていた。
どうしようかと思っているといきなり乗り物が止まって扉をあけられた。
「おらお前ら、出ろ」
お前らということは、ほかにもいるのだろうか。
結構あたりに気を配っていたつもりだったが、ずっと一人だと思っていてまったく気が付いていなかった。
「一まだ人寝てるぞ」
まだ声変わり前の男の子の声だ。
「お前が担いで出せ」
起きているのがばれるかもしれないとヒヤリとしたが、男の子は何も言わずにあたしを担いだ。
手からして明らかにあたしより小さいのに、どうしてそんなことができるのだろうか。
しばらくすると、乗ってきた馬車の音が遠ざかった。
「起きてるんだろ?もういないぞ」
流石にごまかせないと思って、おとなしく起き上がった。
男の子はやはりあたしよりも小さくて、
「担がせてしまって、すまない。重かっただろう」
「それぐらいなんてことない……あんた、麗離人か?」
麗離人とは、初めて聞く言葉だ。
「麗離人とはなんだ?」
聞き返すと信じられないと言われた。
「玉の姫のことだ。その目と爪の色は、麗離人だろう?」
目と爪の色?
爪をまじまじと見つめると、確かにうっすらとだが元の色より濃い。
ちょうどそう、あの玉と同じような色だ。
「……本当だ」
「気が付いてなかったのか。
玉を奪われないようにどうにか隠した方がいぜ」
玉はさして大きくなかったため、隠すのには苦労しなかった。
「玉の姫とは、あの玉の姫伝説の玉の姫か?」
「あんたの言っている玉の姫伝説が俺の知っているものと同じなら、そうだ。
人であったころの~ってやつだよ」
その部分はあたしが知っている伝説にもある。
なら、同じなのだろう。
「教えてくれてありがとう。ここがどこかわかるか?」
「おう。大体だがな」
すごい。
「なら、あたしたちはこれからどうなるんだ?」
「売られるよ。人買いにさらわれたんだから、当たり前だ」
理解していないのかという目で見られるが、そうんなことをいわれても困る。
人買いと聞いて、いいイメージは浮かばなかった。
「何とか抜け出せないか?」
「無理だろ。今は俺が声を抑えてるが、抜け出すとなったら無理だ」
無理か……
「声を抑えているとは?」
「俺の能力でだ。話してても声が聞こえないようにするんだよ」
密談に向いている能力だ。
今まさに密談をして活用しているが。
「あたしがなんとか隙を作るから、そのすきに抜け出すとかはどうだ」
「できるのか?」
……剣道は長年結構しっかりとやっていたが、正直絶対の自信はない。
「できないといいきればできないだろう。あたしはここから抜け出したいんだ」
しばらくにらみ合っていると、男の子は手を差し出してきた。
「俺は煌。よろしくな」
「あたしは櫻だ」
協力者はできた。ここからが大変だ。
「取引のために外に連れ出されると思う。その時が狙いだな。
だが、警戒されておそらく何らかの対策はされているぞ」
「そうだろうな。だが、おそらく平気だ」
あたしには玉がある。
きっと、この玉を使えば……
「わかった、協力してやるよ」
その夜は夜が明けるまで二人で話し合った。




