第一幕に関係する用語について解説する
用語について、まとめます。
おもに一幕に関係するものについて。
■セットアップ
物語の初期状態を説明するフェーズです。
主人公がどういう人で、どういう状況に置かれていて、周囲の人とどういう関係にあって……などなど。
物語が動き出す前の初期状態が、どういう状態にあったかを説明します。
筆者は、「地に足をつける」とか呼んでます。
たとえば、よくあるラノベやゲームのテンプレを使うと、
「俺は○○。××高校に通う、ごく普通の高校生。△△で□□な、騒がしくも平凡な、そんな日常が続くと思っていた。この時までは」
くらいまでがセットアップ。
「この時までは」で説明できれば、大体そこまでがセットアップ。
■インサイティング・インシデント
序盤で起こる、物語を動かす大きなツカミです。
大抵、セットアップのあと――つまり、物語の初期状態を説明しきった後に起こります。
※画像では、インサイト・インシデントになっちゃってるけど……。
「ハウルの動く城」でいうと、「おばあちゃんになる呪いをかけられてしまった!」がインサイティング・インシデントです。
ハウルを登場させたり、空中歩行させたり、細かいツカミを入れて視聴者を飽きさせないようにしていますが、インサイティング・インシデントはあくまで「おばあちゃんになる呪いをかけられてしまった!」です。
何故なら、インサイティング・インシデントはセントラルクエスチョンを明示するタイミングだからです。
これについては、後述のセントラルクエスチョンの項で説明します。
■インサイティング・インシデントの例
他のインサイティング・インシデントもいくつか例示します。
たとえば、ラブコメものとかだったら「ひょんなことからヒロインと同居することに!?」とか。
ハーレムものだったら「突然複数人から言い寄られて!?」とか。
異世界ものだったら「突然異世界に飛ばされて!?」……といいたいところなんですが。
なろうの場合、異世界は標準装備のテンプレだったりするので、これはどちらかというとセットアップかな。
異世界テンプレの場合のインサイティング・インシデントというと、たとえば「突然異世界に飛ばされて、チートでうはうはな俺……のはずだったのに、飛ばされた先は○○で!?」みたいなかんじでしょうか。
どこを物語全体のツカミに持ってくるのは、人それぞれなので、なんともなのですが。
インサイティング・インシデントは、二時間ストーリーの場合、最初の15分くらいまでに起こることが多いといわれています。
これは、つまり第一幕のちょうど真ん中くらいまでに、ということです。
インサイティング・インシデントは、物語のメインとなるツカミなので、早い段階で起きないと、視聴者が飽きてしまうんですね。
映画ならまだいいけれど、二時間ドラマだったら簡単にチャンネル変えられてしまうので、より切実です。
■セントラルクエスチョンとは
序盤で視聴者が思う「この話、どうなっちゃうの?」というハラハラのことです。
「ハウルの動く城」でいうと、「ソフィーにかかったおばあちゃんになる呪いは解けるの?」がセントラルクエスチョン。
この例からわかる通り、大抵は、インサイティング・インシデントとセットになっています。
■クライマックスからセントラルクエスチョンを逆算すると、わかりやすい時がある
この「ハラハラ」が作品を動かす原動力なので、このセントラルクエスチョンの白黒は、大抵クライマックスでつきます。
逆にいうと、クライマックスをどう演出するかから、セントラルクエスチョンは逆算できるということです。
プロットを練っている段階で、セントラルクエスチョンがイマイチふわっとしている場合は、このクライマックスからの逆算を意識すると、わかりやすくなったりします。
たとえば、ハーレムもので、クライマックスが「メインヒロインとくっつく」だったりするなら、セントラルクエスチョンは「果たしてメインヒロインとくっつけるのか!?」だったりするかもしれない。
いや、ハーレムものなんだけど、特にクライマックスで誰とくっつくとかなくて、イチャコラしながら何か事件を解決するんだよという場合は、「こんな状況で事件を解決できるのか!?」だったりするかもしれない。
自分がクライマックスとして何を書きたいかから逆算すると、「ああ、そうか、つまりこれを序盤のセントラルクエスチョンとして提示すればいいのか」みたいなのが意外に見えてきます。
同じように、ミッドポイントからセントラルクエスチョンを逆算するのも有用です。
ミッドポイントでは、仮オチがつき、そのオチはセントラルクエスチョンへの一時回答として機能するからです。
■まとめる
まとめると、第一幕というのは、おおよそ次のような進行をします。
(1) セットアップ(物語が動く前の初期状態を説明する)
(2) インサイティング・インシデント(物語を動かす大きなツカミを入れる)
⇒これによって、セントラルクエスチョンが提示される
⇒セントラルクエスチョンの白黒は、クライマックスでつく
⇒ミッドポイントでも、暫定的な白黒がつく
(3) インサイティング・インシデントがきっかけで物語が動き出す
(4) ターニングポイントを迎え、次幕へ。