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ラブ・レゾンデートル -幻想戦国恋物語-  作者: 由岐
現代編 1章 可愛い子供達
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12.悩んだ結果こうなりました

 お父さんとお母さんの奇襲──重治くん達がそう呼んでいた──からしばらくして、私はある重大な事に気が付いてしまった。


「しょ……食材が、ギリ足りない!」


 冷蔵庫を開けて私は愕然とした。

 何と、今日の夕食分の材料が微妙に足りなさそうなのだ。

 大袈裟なリアクションだと思われるかもしれないけど、基本は引きこもりニート生活をしている私にとって、食材の枯渇とはすなわち買い出しに直結する。

 それはつまり、元々通学以外でほとんど外出することのなかった私にはかなり億劫なことであり、更に最近出来た新たな問題にも繋がっていたりするんだよね。


「何ですと!? それは一大事! 今すぐ買い出しに参りましょう!」

「まあ、どうしてもって言うなら荷物持ちぐらいしてあげても良いけど?」

「お買い物に行くんですか? ぼくもご一緒したいです!」


 これこれ、これなんだよ。

 我が家に来た三人の少年達が、ものすごくお手伝いに積極的になってくれてるのは嬉しい。

 嬉しいんだけど、この時代の物に興味津々な彼らが事件や事故に巻き込まれないよう、常に目を光らせていなくちゃいけない。ヘタれた身体の私は精神的にも疲れちゃうんだよ。

 せめて一人か二人までならどうにかなるんだけど……皆揃ってお出掛けしたがるから、買い物に行く度に密かに悩んでいたりするんだ。

 だけど、年上組の重治くんと鎌之介くん達は私の苦悩を察しているらしい。


「おい竹中、姫様の身辺警護は私の仕事だ。お前はここで大人しく朝の情報番組でも観ながらでーた放送でクイズに答えて一人寂しく得点でも貯めているが良い」

「はぁ!? その台詞そっくりそのままお前に返してやるよ! お前なんかお料理こーなーでも観て新しい料理の幅増やしてりゃ良いんだよ!!」


 こうして二人が互いを蹴落とそうとするのも、随分見慣れた光景になってきた。

 私がいつも買い物から帰るとヘトヘトになってしまうのがこの子達の悩みでもあるようで、大人数での買い出しは負担だと判断した途端にこんな口喧嘩を始めてしまうようになったのだ。


「かまのすけさん、しげはるさんも喧嘩は良くないですよ!」

「喧嘩じゃないし! こいつが居るといちいち口うるさくてやかましいから、せめて外にでも出て静かな時間を楽しみたいだけだから!」


 それを聞いて、鎌之介くんは整った眉根を寄せて反論する。


「喧嘩ではない事には同意だが、口煩いとは心外にも程があるぞ竹中。私は姫様のお買い物を無駄に長引かせるお前の単独行動を注意しているに過ぎん。被害妄想もここまで来ると手の施しようが無いな」

「は!? アンタそれ真面目に言ってんの!?」

「佐吉殿も、此奴のことは相手になさらない方が宜しいかと。時間の無駄です」

「はぁー!! お前ホンットムカつくわ! お前なんかころっけ食いすぎて喉に詰まらせて窒息しやがれこのひょろひょろ長髪野郎!!」

「お前にも当てはまるだろう女顔ひょろひょろ長髪人間めが」

「がぁぁぁ!! 禁句言いやがったなこの野郎! 消し炭確定だかんなてめぇコラああん!?」

「け、喧嘩はだめなんですー!」


 ああ、佐吉くんが涙目で訴えてるのに効果ゼロ。私だったら最初に佐吉くんが止めに来てくれた時点で、そっと彼を抱き締めてごめんなさいするに違いないのに。

 やれやれ、遂にこの手を使う時が来てしまいましたか……

 私は小さく溜息を吐き、止まらない口喧嘩を繰り広げる二人にこう言った。


「今日は一人だけとお買い物に行きます!」


 そう宣言した途端、二人の口論はぴたりと止んだ。

 そして、まるで死刑宣告でもされたかのような絶望的な顔をする鎌之介くんと、眉間に皺を寄せ信じられないと目を見開く重治くん。


「ま、まさか瑠璃、ボクのことを……!」

「私をお選びして下さるのですよね……? ねえ?」


 小さな期待と、それを飲み込まんとする大きな不安をあらわにした瞳で私を見詰める二人。

 私はそっと一人の手を取った。

 今日の買い出しに私と共に行くのは──


「佐吉くんと行ってきまーす!」

「ぼ、ぼくとですか? 本当に良いんですか?」


 年上二人のショックの大きさなど微塵も知らない純真無垢な佐吉くんは、蕾が一気に花開いたような笑顔を浮かべた。

 あー、ホントに天使だわ佐吉くん。我が家に舞い降りた神の遣い、マイエンジェル佐吉くん……!

 対照的に、鎌之介くんと重治くんの瞳からは輝きが失われてしまう。

 絶望のあまり膝から崩れ落ちる重治くん。

 そしてまだ脳が理解しきてれいないのか、小さく口を開けてぽかんとしたままポロポロと涙を溢れさせる鎌之介くん。

 何なの? 君達どんだけお出掛けしたかったのよ?


「と、とにかく! このままだと今日の夕飯のおかずがお豆腐とちくわとお米とお味噌汁になっちゃいそうだから、二人にはお留守番をしていてもらいたいの」

「こんな……こんなことがありえるだなんて、このボクにすら想像つかなかっただなんて……!」


 最早何も口に出来ないでいる鎌之介くんは大丈夫なのかな。

 私だって本当なら誰も家に置いて行きたくなんてないんだけど、ベテラン主婦でもない私が現代初心者の少年をぞろぞろ連れて、毎回無事に帰ってこれる保証があるわけでもないのよ。

 だから、本当にごめん。

 ちょっと……いや、かなり不安な組み合わせだけど、二人でお留守番宜しくお願いします。



 

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